【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】発表3

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「お前たちの息子は、私の番が亡くなったことを知らない」
「っ、さようでございますか」
「私が口止めをしている。亡くなったからと、悲しむ振りをされては困るからな」

 自白剤では次をなどと言っており、亡くなったと知っても反省するかは分からないが、悲しむ振りを見たくもない。

「申し訳ございません」
「謝っても、もう番は帰ってこない」
「……はい、理解しております」

 何を言っても、どうにもならないことはハイスとキューラも分かっていた。だが、まずは謝罪に向かわなくてはと、裏口からこっそりと出て、オイワード公爵家だと分からない馬車でやって来たのである。

「それで、息子のしたことをお前たちはどう思ったんだ?」
「とんでもないことをしたと思っております」
「私もでございます」

 ハイスとキューラがイオリクと同じとまでは思っていないが、イオリクの思考を許容していたのは間違いない。

「オイワード公爵家は、番には否定的だよな?」
「……否定的とはいうことではなく、我々は伴侶に思っていないだけでございます」
「だがな、それが息子を助長させた」
「はい……」

 ハイスもイオリクがディオエルに番、アイルーン様が見付かった際に、文句を言っていたことを聞いていた。今回も同様だったのだろう。

「私もそのような状況を作っていた。だがな、テイラー嬢の関しては息子の考えを何度も否定した。それでも、伝わらなかった」
「はい、申し訳ございません。被害者のご家族にも謝罪と、せめて賠償をさせてはいただけないでしょうか」

 自分たちに何ができるかとハイスとキューラは話し合ったが、まずはディオエルへの謝罪と、被害者への謝罪と賠償をするべきだと考えた。

 だが、相手のことは名前しか分からない上に、平民とはいえ、元貴族ということから勝手に動いて、さらに悪い立場になってはならないと考えていた。

「おそらく被害者本人も、家族も望まないだろうな」

 テイラーは死後のやり取りを嫌っていた。エイク子爵夫妻は、あまり知らないが、受け取る資格がないというのではないか。

 デリア侯爵に関しては、アイルーンの際に受け取ったことを責められており、絶対に受け取らないだろう。

「息子も謝罪も賠償も必要ないと言うのではないか?」
「っ」
「そんなはずはありません、あの子も反省するはずです」
「亡くなったからか?」
「っ、それは……」

 キューラは図星だったが、恐ろしくて、そうですとは言えなかった。

「正直、被害者には良いことではないために、番であることは発表するか迷っていた。オイワード公爵家はその方が良かっただろうな」
「そのようなことは……」
「だがな、もし私の番ではない女性の平民を息子が殺したとなったら、お前はたちは悪いと思ったか?」
「それは」

 ハイスは確かに、それだったらという思いも過った。

 だが、ディオエルの番であることが覆るわけではない。息子が番を殺したことは事実なのである。

「思わなかっただろう?気にも留めなかったのではないか?だがな、被害者はそれでいいとしたんだ」
「なぜですか?」
「お前たちとは違うが、番だからというだけで、特別視されたくない。平民であるテイラーという一人の人として、裁いて欲しかったからだろう」

 ハイスもキューラも、言葉がなかった。

 立場は大きく違うが、番ではなく一人の人としてということは、理解できる。

「だが、私の番と発表すれば、アイルーンもテイラーも私の番と言うのが前に付くようになる。下手したら、名前も覚えられず、聞いても忘れられて、番という名前になるのではないか。私はそれを危惧したのだ」
「私は忘れません……」
「私もでございます」

 ライシードもディオエルから初めて聞く話で驚いたが、実際そうだと感じた。
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