【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】皇帝宮3

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「ディオエルのために、怒鳴らずにいたが、お前、頭がおかしいのではないか!私が妻以外をそばに置くと思っているのか!」
「っ」
「恥を知れ!二度と私の前に姿を現すな!気分が悪い!」

 これで、クーナの良い相手との再婚も望めなくなっただろう。

 カッジル伯爵は、アンデュースはまだ皇帝ではないが、声を掛けられていないために、黙ったまま立ち尽くしていた。

 アンデュースはその後は茫然としたクーナを無視して、ライシードに確認をして去って行った。

 カッジル伯爵は頭だけを深く下げたまま、アンデュースが去ると、クーナの首を掴んで、頭を下げさせた。

「申し訳ございません、こんな者を妃にさせたことが間違いでした」
「そのようですね、本当に残念です」
「っな、そんなこと……」
「あなたの言動はディオエル様を馬鹿にしている行為です。しかも、これから皇帝になられるキュレシール公爵様を怒らせて、未来は絶望的ですね」
「う、そ……」
「愚か者の末路というものですね」
「その通りだと思います」

 ライシードも隠すことなく蔑んだ目を向けていたが、それ以上にカッジル伯爵は静かに怒りを抱えていた。

「こちらにいても迷惑を掛けるだけですから、家に連れ帰ってもよろしいですか?荷物などは妻に取りに来させます」
「ええ、構いません」
「っえ、そんな」

 父の言葉に驚いたクーナは、声を上げたが、ライシードもカッジル伯爵も相手にするのも無駄だと無視した。

 他の妃はまだ皇帝宮を出ていないのは、ディオエルを悼んでのことで、もはや悼む気持ちもないクーナには必要のないことだろう。

「要らないと言われているのに、キュレシール公爵様にすり寄る真似をして、悼む気持ちもない。こちらにいる方が失礼だ!」
「嫌よ、そんなの」
「いい加減にしろ!お前の存在が不愉快であることが分からないのか!」

 そのまま、クーナはカッジル伯爵に引きずられて、皇帝宮を後にした。

 後日、荷物の確認に来たカッジル伯爵夫人は伯爵と同じで、謝罪から始まり、妃たちとも顔を合わせることになり、そちらにもクーナが迷惑を掛けたのではないかと、謝りっぱなしであった。

 そして、ライシードにも深く頭を下げた。

「本当に情けない娘で、申し訳ありませんでした」
「ええ、思った以上でした」
「申し訳ございません、他にも何かあったのでしょうか」
「想像妊娠の回数からおかしいとは思っておりました」
「そうだったのですか……?」

 クーナは皇帝宮に入って、家族には伝えるようなことはしなかった。

 ゆえに夫人は様子などをわざわざ聞かないと知ることはできず、何かあったらこちらに連絡して欲しいと言ってあった。

 想像妊娠も聞いてはいたが、一度だけだと思い込んでいた。

「妃は子どもをと望まれておりますから、これまでもないことではないのですが、クーナ妃は多かったものですから」
「嘘を、付いていたのでしょうか?」

 何度もあったということは、嘘を付いていたのではないかと咄嗟に思った。

「それは分かりませんが……」
「重ね重ね申し訳ありません。私たちが管理いたします。私たちがいなくなったら、どこか修道院に任せようと思っています」
「そうですか」

 そして、書類に保護者としてサインもしたが、受け取るお金は半分で、アンデュースへの慰謝料にして欲しいと申し出た。

「ですが」
「本当は受け取らないとしたいくらいですが、それでは困ると思いますので、どうかそうしてはいただけませんでしょうか」

 夫と嫡男である息子夫婦とも話して、そのように申し出ることを決めていた。

「分かりました、キュレシール公爵様に渡しましょう」
「ありがとうございます」

 受取金を変更し、半分をアンデュースに慰謝料として渡すことになった。

 そして、ハウニー妃、エオナ妃、モルカ妃も皇帝宮を出る日になった。皆、ディオエルの墓に挨拶をして、皇帝宮や働く者たちに感謝をして出て行った。
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