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【テイラー】余波(マーク5)
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レーズは男爵令嬢で、自暴自棄になっていたら、何をするか分からないところはあるが、侯爵家であれば、どうとでもなっただろう。
皇帝陛下も結婚している相手だったら、引き下がってくれたのではないか。
ナビナもアイルーンとマークが結婚していたら、幸せになっていたなどとまでは思っていない。
それでも、アイルーンは被害者で加害者などと思わなくて良かったのではないか。
「守ってくれると思って当然よね、私もそう思って、送り出したの。皇帝陛下にもご事情があったのかもしれないけど、そうはならなかった…」
マークは下を向き、唇を噛み締めていた。
ナビナはディオエル皇帝陛下を非難する立場にないことは、分かっていたからこそ、口にはできなかった。だが、悔しかった。
どうして守れなかったのか、気付かなかったのかと、罵りたかった。
「でも、そのすべてをきっと、テイラーが明かしてくれたのでしょう」
彼女がアイルーンでなくても、あっても、友人として感謝をしたい。
「自分の間違いを、記憶でアイルーンは正した。託したのかもしれないわね」
「……私が言うことではありませんが、彼女らしいと思います」
「私もそう思うわ、変に責任感のあるところがあったものね」
「はい」
今日、初めて少し微笑んだマークに、ナビナはアイルーンの隣にいた時のような表情に、懐かしさが込み上げた。
誰に言っても仕方ないことだが、二人は婚約を解消しても、お互いのことを考えていた。それがナビナには嬉しくもあり、苦しくもあった。
「私はアイルーンの生きている未来が見たかった。一緒にお茶をして、どうでもいい話をして、文句を言ったり、悲しんだり、したかった。あなたに言っても困るだろうけど、私はそう思っていることは覚えておいて欲しいわ」
「はい、分かりました……」
口にはしなかったが、きっとマークにならば、あなたと結婚して、今でも生きて笑っているアイルーンが見たかったという気持ちが伝わっただろうと信じたい。
「あなたは、もう少し体重を増やした方が良いわ」
「はい」
「私たちは生きているのだから、ちゃんと生きなくちゃ」
「はい」
そう言って、マークは夫妻に時間を取ってもらって、ありがとうございましたと帰って行った。
マークが見えなくなると、黙って話を聞いていた夫が問い掛けた。
「疑っていたのか?」
「いいえ、あれから本当に話していなかったんだもの。話していたら、もっと前に気付けたかもしれないわ。上手くいっていないのも、奥様だけのせいではなかったのかもしれないわね」
「気持ちを残していることに気付かれていたと……?」
「そこまでは分からないけど、亡くなったり、殺害されたことが分かって、複雑なところもあったと思うけどね」
話を聞いただけのレーズだが、執着するのも、分かってしまったのかもしれない。
しかも、亡くなったとなれば、これからもその時のまま、心に住み続けることになる。敵わないから、嫌がられても、自分にできることはなかったのかもしれない。
「少しはマークへの印象は軟化したかな?」
「悔しいけどね」
「悔しいか……」
「私たちは誰かを恨むことで、悲しみを押し付けていたのかもしれないわ。それほどに、受け止められなかった……」
「受け止められなかったのは、皆そうだろう。マークも逃げて、向き合うのに時間が掛かったのだろう」
マークに何ができたわけではないし、悪手だったとも思わないが、これまで沈黙を貫いていた。
「そうね」
「婚約を解消すると決めたのは、マークであって、アイルーンではない。マークが何を思っていても、事実は変わらないのだから」
婚約を解消した時点では、いくらでも方法はあっただろう。
だが、その中で選択をしたのはマークであり、ファドット伯爵家である。
皇帝陛下も結婚している相手だったら、引き下がってくれたのではないか。
ナビナもアイルーンとマークが結婚していたら、幸せになっていたなどとまでは思っていない。
それでも、アイルーンは被害者で加害者などと思わなくて良かったのではないか。
「守ってくれると思って当然よね、私もそう思って、送り出したの。皇帝陛下にもご事情があったのかもしれないけど、そうはならなかった…」
マークは下を向き、唇を噛み締めていた。
ナビナはディオエル皇帝陛下を非難する立場にないことは、分かっていたからこそ、口にはできなかった。だが、悔しかった。
どうして守れなかったのか、気付かなかったのかと、罵りたかった。
「でも、そのすべてをきっと、テイラーが明かしてくれたのでしょう」
彼女がアイルーンでなくても、あっても、友人として感謝をしたい。
「自分の間違いを、記憶でアイルーンは正した。託したのかもしれないわね」
「……私が言うことではありませんが、彼女らしいと思います」
「私もそう思うわ、変に責任感のあるところがあったものね」
「はい」
今日、初めて少し微笑んだマークに、ナビナはアイルーンの隣にいた時のような表情に、懐かしさが込み上げた。
誰に言っても仕方ないことだが、二人は婚約を解消しても、お互いのことを考えていた。それがナビナには嬉しくもあり、苦しくもあった。
「私はアイルーンの生きている未来が見たかった。一緒にお茶をして、どうでもいい話をして、文句を言ったり、悲しんだり、したかった。あなたに言っても困るだろうけど、私はそう思っていることは覚えておいて欲しいわ」
「はい、分かりました……」
口にはしなかったが、きっとマークにならば、あなたと結婚して、今でも生きて笑っているアイルーンが見たかったという気持ちが伝わっただろうと信じたい。
「あなたは、もう少し体重を増やした方が良いわ」
「はい」
「私たちは生きているのだから、ちゃんと生きなくちゃ」
「はい」
そう言って、マークは夫妻に時間を取ってもらって、ありがとうございましたと帰って行った。
マークが見えなくなると、黙って話を聞いていた夫が問い掛けた。
「疑っていたのか?」
「いいえ、あれから本当に話していなかったんだもの。話していたら、もっと前に気付けたかもしれないわ。上手くいっていないのも、奥様だけのせいではなかったのかもしれないわね」
「気持ちを残していることに気付かれていたと……?」
「そこまでは分からないけど、亡くなったり、殺害されたことが分かって、複雑なところもあったと思うけどね」
話を聞いただけのレーズだが、執着するのも、分かってしまったのかもしれない。
しかも、亡くなったとなれば、これからもその時のまま、心に住み続けることになる。敵わないから、嫌がられても、自分にできることはなかったのかもしれない。
「少しはマークへの印象は軟化したかな?」
「悔しいけどね」
「悔しいか……」
「私たちは誰かを恨むことで、悲しみを押し付けていたのかもしれないわ。それほどに、受け止められなかった……」
「受け止められなかったのは、皆そうだろう。マークも逃げて、向き合うのに時間が掛かったのだろう」
マークに何ができたわけではないし、悪手だったとも思わないが、これまで沈黙を貫いていた。
「そうね」
「婚約を解消すると決めたのは、マークであって、アイルーンではない。マークが何を思っていても、事実は変わらないのだから」
婚約を解消した時点では、いくらでも方法はあっただろう。
だが、その中で選択をしたのはマークであり、ファドット伯爵家である。
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