【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】ミリオン王国8

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 シュアリアとエレサーレは、今のディオエルならという思いもなくはなかったが、テイラーのことを考えれば、このまま終わりにするのが一番の彼女の望みであり、アイルーンへの罪を償うことにもなるだろうと思っていた。

 ルーベンスは何も言わなかったが、ディオエルがギリシスを否定しなければ、自分が矢面に立つつもりであった。

「ですが、本当にこのまま妃にしないのですか?番なのですよ?」
「くどい…」

 呆れたように言われて、計画が明らかに難しいと分かったギリシスは、もう一度会えば違うのではないかと、作戦を変えることにした。

「ではせめて、もう一度、会って話だけでもした方がいいのではありませんか」
「いや、彼女はもう二度と会いたくはないはずだ。そうだろう?デリア侯爵」
「テイラー嬢は、アイルーン・デリアへ罰は受け止めました。私は平民であり、皇帝陛下にお会いするような立場ではございませんとのことでした」
「そうか」

 アイルーン・デリアの人生を奪われたテイラーが、どうか思うような人生を送れることを願うだけだと思えば、胸は痛むが、どこか穏やかな気持ちになれた。

「ですが、遺恨を残したままというのはよくありません。話し合った上で、結論を出すべきだと思います」

 またも頷いているのは、イオリクだけであった。

「デリア侯爵、そう思わないか?」
「誰も彼女に無理強いをしたり、元の家族や本人に圧力を掛けたりすることはないのですね?そういうことでしたら、彼女に聞いてみても構いません。ですが、決めるのはあくまでテイラーです」

 ルーベンスもディオエルとテイラーが会い、ハッキリさせることはお互いに悪いことではないと思ってはおり、テイラーの意志が通らないということがなければ、間に入ってもいいと思っていた。

「も、勿論だ!」
「皇帝陛下もいかがですか?もう一度だけお会いになりますか?」
「無理強いする気はない」

 ディオエルは力弱く、ゆっくりと首を振った。

「では本人に意志を聞いてみることにします。皇帝陛下はいつまでミリオン王国に滞在予定でしょうか」
「明後日には戻るつもりだったが…」

 最後に会えるのであれば、会いたいとは思っていた。だが、話をするのではなく、働いている姿でもいいので、一目だけ見ることは許されるだろうかと考えていた。

「では、時間が取れるか。そして、会う気があるか聞いてみます」
「嫌だと言えば、すぐに引いてくれ。説得する必要はない」
「承知いたしました」

 その日は解散になり、ディオエルたちは王宮の客室に泊まることになり、部屋に案内され、ミリオン王国側の人間だけが部屋に残ることになった。

「デリア侯爵!陛下はああ、言っていたが、ちゃんとあの娘を説得するのだぞ!」
「陛下!いい加減にしてください!あの娘って、テイラー嬢とも呼ばずに」
「元はアイルーンで、今は平民で、どう呼んでいいか分からないからだ!」
「テイラー嬢と呼べばいいのです」
「だが、令嬢でもないのに」

 嫁がせる気は満々の癖に、平民であることから令嬢の敬称を使うことは、腑に落ちなかったギリシスはどこか馬鹿にしていることが滲み出ていた。

「そんなことはどうでもいいのです!」

 確かに貴族の令嬢に付ける敬称ではあるが、シュアリアはアイルーンの記憶のあるテイラーを、さん付けで呼ぶことは憚れたために、嬢を付けていた。

 もしも、テイラーが嫌がるようであれば、変えればいい。むしろ、あの娘などというギリシスに腹を立てていた。

「あの娘などという方が失礼です!そういうところが、皇帝陛下にも見透かされているのですよ?皇帝陛下の大事な番だと言いながらも、どこか馬鹿にして、自分の言いなりになるような言い方をして!」
「私は国王だぞ!」
「ならば、尊敬されるようにお振る舞いください!」
「そうです」
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