【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
142 / 344

【テイラー】因縁の対決4

しおりを挟む
 あまり大きな声を出せば、外に漏れているかもしれない。だが、何を言われるか分からないので、ホテルの皆には出て来るまで、関わらないように伝えてあるので、飛び込んでくるようなことはないだろう。

 テイラーは番ということで、敬愛するディオエル経繋がってしまうために害されることがなくとも、スタッフは竜帝国の公爵家に盾突くことは危険でしかない。

「私は真摯に話しているだけです。ここへは一人でいらしたのですか?許可は得ているのですか?」
「当然だろう!」
「そうですか、では皇帝陛下もあなたの言動を許しているのですね?」
「当然だ」

 事実だとしても、テイラーを説得するためならば、イオリクではなく、ライシードを寄こすべきだろう。

「では、もう一度、あなたの言ったことを事実かどうか、皇帝陛下を交えて話をしましょう。王妃陛下に連絡をいたします」

 そう言うと、イオリクは口元を少し歪めた。

「待て!まずは妃になるとお前が言うという、確約をしろ!」
「話をすると言っているのに、どうして確約をするのです?」

 やはり頭が良くないと思いながら、テイラーが立ち上がって、出て行こうとすると、イオリクが腕を引っ張ろうとしたが、テイラーが咄嗟に避けた。

 苛立ったイオリクは、テイラーに足を引っ掛け、転ばせた。だが、勢いがあったために、テイラーは床を滑って、壁に頭を打ち付けることになった。

 —ゴッ—

「うっ!」

 鈍い音と呻き声が発されたが、イオリクは頭に血が上っており、不味いとも思わなかった。

「馬鹿が!お前が抵抗するのが悪い!」
「…」

 テイラーは片手で頭を押さえたまま、何も言わなかった。

「大袈裟な振りをするな」
「…」
「立て!」

 だが、次の瞬間、テイラーの頭から血が流れており、イオリクもギョッとした。

「血が…早く立て!」

 なぜか立ち上がらせようと必死になっており、側に寄り、腕を取ろうとすると、テイラーは自身の流れ出た血をすくい、イオリクの右目玉に擦り付けた。

「な!おい!何をするんだ!」
「これで、私が…死ねば、あなたはどんな待遇になるのでしょうね」
「ふざけやがって!」

 そこへようやくデリア侯爵が、ホテル側にテイラーがどこで話をしているか聞いて、慌てて駆け込んで来た。

「テイラー嬢!」

 テイラーは横たわったまま、擦り付けたために血だらけになっており、イオリクが目に入った血を拭いながら、罵倒している瞬間であった。

「血が…どういう状況だ…テイラー嬢、大丈夫か…」

 ルーベンスがテイラーを抱えようとしても、まだ血は流れていた。

「イオリク様に、足を引っ掛けられて、転ばされて、こうなりました…」
「何だと!」
「その娘が抵抗するから!」
「私に何か、あれば、あの方は殺人犯です…ギリシス国王陛下も、関与しています」
「っな」
「エイク子爵に手紙を出すと」
「分かった、もう話さなくていい。馬車を回せ、邸に連れて行く。侍医を呼びに行き、一人は王宮に連絡してくれ!」
「「「「は!」」」」

 連れて来ていた騎士たちに指示を出していると、ルーベンスが抱えていたテイラーは息はしているが、瞼は閉じていた。

「テイラー嬢、大丈夫だ。すぐに運ぶ」

 ホテルの従業員も駆け付けると、血を流すテイラーに目を見開いた。

「何があったのです」
「テイラー、テイラー、大丈夫なの?」
「デリア侯爵家に連れて行き、医者に診せます。タオルか何か貰えませんか」
「すぐに用意します」

 持って来てもらったタオルで頭を押さえ、ルーベンスは大事にテイラーを抱え、スタッフもよろしくお願いしますと頭を下げた。

 揺れないように、しっかり支え、テイラーはデリア侯爵邸に運ばれていった。

 イオリクは残った騎士に睨まれながら、焦りは感じていた。

「私のせいではない!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本日もお読みいただきありがとうございます。

本日は1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時に、もう1話投稿します。

どうぞよろしくお願いいたします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。 彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。 自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。 「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」 異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。 異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。

間違えられた番様は、消えました。

夕立悠理
恋愛
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※ 竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。 運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。 「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」 ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。 ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。 「エルマ、私の愛しい番」 けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。 いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。 名前を失くしたロイゼは、消えることにした。

結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?

ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十年目。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。 ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

処理中です...