【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】一報

「王太子殿下!」

 デリア侯爵家の騎士によって、王宮に一報が届けられることになった。

 門番に身分を証明して、緊急だと皇帝陛下か王妃陛下を呼んで貰おうと考えていたが、丁度、エレサーレが歩いているのが見えた。

「私はデリア侯爵家の騎士でございます!侯爵様より、緊急にお伝えしたいことがございます」
「何かあったのか?」

 エレサーレはデリア侯爵という名前に、嫌な予感がして、慌てて駆け寄った。

 近くに人はいなかったが、抑えた声で説明をした。

「竜帝国から来られたイオリクという名の方が、ホテルまでテイラー嬢に会いに来られ、転ばせて、大怪我を負い、デリア侯爵家に運ばれたと皇帝陛下、王妃陛下にお伝えいただけませんか」

 騎士はテイラーのことは、デリア侯爵家が恩のある方だと聞いてはいたが、ルーベンスと竜帝国には行っておらず、アイルーンが亡くなってから勤めるようになった若い青年であった。

 若いから一番早く伝えられるだろうと、抜擢されたのである。

 ゆえに、話の流れから、怪我をさせた男が竜帝国のイオリクということは分かったが、詳細は分からなかったために、ありのままを伝えた。

「っな、誠か?」

 エレサーレは、なぜそんなことになったのかと絶句しそうになった。

「はい」
「テイラー嬢の様子は?」
「頭から血を流されておりました…多く、多くです」

 焦っていたために、言葉は滅茶苦茶であったが、その言葉はエレサーレに深刻さを伝えるには十分だった。

「っな…すぐに伝える!テイラー嬢は、デリア侯爵邸に向かったのだな?」
「はい、侯爵様が運ばれております」
「分かった!一緒に来て貰えるか」
「はい!」

 エレサーレは騎士と共に、急いでシュアリアのところへ向かった。

「母上!緊急です」
「入りなさい」

 入室すると、シュアリアが既に立ち上がっていた。

「イオリク殿がテイラー嬢に会いに行き、大怪我をさせたようです」
「何ですって…」
「彼はデリア侯爵家の騎士だそうです!デリア侯爵に頼まれて、王宮まで伝えに来てくれました」
「失礼しました!名乗っておりませんでした!デリア侯爵家の騎士、デイザー・カルジと申します」

 デイザーはシュアリアに深く頭を下げ、本来なら最上級の挨拶をすべきだが、それどこではない。

「いえ、緊急事態ですから構いません。それよりも、事実なのですね?」
「はい、私はイオリクという方を存じ上げなかったのですが、侯爵様もテイラー嬢もイオリクという方だと認めてらっしゃいました」
「そうですか…」

 いくらイオリクが竜帝国の公爵家の者でも、ミリオン王国では知る者は少ない。

「テイラー嬢は、多くの血を流していたようです…」
「っ、そんな…」

 シュアリアは息を呑み、最悪の事態になったことを認めるしかなかった。

「もう一つ、お伝えしなければならないことがあります」
「何ですか?」
「ギリシス国王陛下も関与していると、テイラー嬢が申しておりました」
「っ…」
「父上が…」

 シュアリアとエレサーレは聞きたくもなかった言葉に、思わず天を仰ぎたくなったが、そんなことをしている暇はなかった。

「現在、侯爵家の騎士がコンスホールホテルで、イオリクという方を監視しております」

 イオリクを王宮へ一緒に連れて来ることも考えたが、竜帝国か王家に現場を見て貰った方がいいだろうと判断し、監視することに留めた。

「すぐに皇帝陛下に話をします」
「はい!」
「カルジ、ありがとうございました。イオリク殿に関しては、こちらですぐに対応します。デリア侯爵に、王家からも医師を派遣するとお伝えいただけますか」
「承知いたしました、よろしくお願いいたします」

 デイザーはデリア侯爵邸に、急ぎ戻った。

 シュアリアは自身の担当医師に今すぐデリア侯爵に行くように伝え、騎士たちも呼んで、連絡係をするように付いて行かせた。

 そして、意を決してエレサーレとディオエルへ話をするために向かった。

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