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【テイラー】涙
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ディオエルは体に大きな穴が開き、風が吹き続け、体がどんどん冷えて行くような気持ちになっていた。
「王太子殿下。今、受け取る予定のなかった手紙を取りに行かせています。戻り次第、王妃陛下にお渡しいただけますか」
誰もディオエルに声を掛けることはできず、ルーベンスはエレサーレを捉えて口を開いた。
「は、はい、分かりました」
テイラーの荷物は騎士たちがデリア侯爵邸に持って来ており、悲しみの中、彼女の思いの書かれた手紙を読まなくてはならないと、寮に手紙を取りに行かせていた。
誰もが読まないままでいたかった手紙だった。
だが、もう意見を言うことのできないテイラーの言葉を聞くには、手紙を読むしかない。アイルーンを蔑ろにしたような形になったルーベンスは、テイラーの気持ちを蔑ろにすることは、絶対にしてはならないと決めていたからである。
エレサーレも涙をこらえながら、テイラーを見つめることしかできなかったが、シュアリアに思いを届けなくてはならないと気を引き締めた。
「あれから、一度も目覚めなかったのですよね……」
エレサーレはシュアリアの連絡係からの情報で、そう聞いていた。
テイラーが頭を打ってから、皆が眠れぬ夜を明かし、連絡係の足音、慌てる足音が聞こえる度にビクリとする日々であった。それでも、このような瞬間が永遠に来なければいいと思ってのことだった。
「はい、目覚めることはありませんでした」
「そうですか」
「ですが、目を開くことはありませんでしたが、先程、最期にあの子の隣にと……お父様、お願いと言いながら……」
そう言いながら、ルーベンスの目からは涙がぽろぽろと零れ落ち続けていた。
ルーベンスもベルサートもナナリーも、最期じゃない、助かる、生きるんだと声を掛けたが、叶わなかった。皆は、半狂乱になるほどに叫び続けた。
子どもたちも滞在中だったので、慌てて駆け付け、祖父と両親が泣き叫ぶ様子に挨拶する機会を失ったことを悟った。
目覚めて元気になったら、話をしましょうと、テイラーに声を掛けていた。叔母の記憶を持ちながら、自分たちと年の近いテイラーにどんな話をするか考えていた。
悪いことは考えないようにした。絶対に助かる。
デリア侯爵家は、そう信じていた。
「あの時、目覚めて話ができたことが奇跡なのでしょう……でも、そんなものは奇跡ではありません。理屈ではないのです」
「そうですね……」
エレサーレも、泣き腫らした真っ赤になった、テイラーと同じレッドブラウンの瞳で、そう話すルーベンスに同意することしかできなかった。
しかも、ルーベンスの感覚では、また娘を亡くしたような気持ちもあるだろうと、考えてしまうと、もう言葉がなかった。
会話が途絶えると、悲しみしかない部屋には鼻を啜る音と、泣く声しか聞こえない。
誰もが認めたくない気持ちと、テイラーのそばから離れたくない気持ちが、ただただこの部屋から出られないでいた。
絶望の中、皆がもう目覚めることのないテイラーを見つめていた。
エレサーレには、どこかやり遂げたような顔をしているようにも見えていた。だが、そんなことは望んでいない。皆が、君の幸せを望んでいたと、伝えたかった。
そして、しばらくすると、メイドがテイラーの手紙を持って、戻って来た。
騎士も付けてはいたが、女性の部屋に入るのは、女性の方がいいだろうと、メイドを行かせていた。
「お待たせしました」
「あったか?」
「はい、申された場所に三通ございました」
「三通?」
聞いていたのは二通だった。もう一通は、エイク子爵だろうかと考えていた。
メイドがこちらですと差し出した手紙は、シュアリア王妃陛下、デリア侯爵、そしてディオエル皇帝陛下と書かれていた。
「王太子殿下。今、受け取る予定のなかった手紙を取りに行かせています。戻り次第、王妃陛下にお渡しいただけますか」
誰もディオエルに声を掛けることはできず、ルーベンスはエレサーレを捉えて口を開いた。
「は、はい、分かりました」
テイラーの荷物は騎士たちがデリア侯爵邸に持って来ており、悲しみの中、彼女の思いの書かれた手紙を読まなくてはならないと、寮に手紙を取りに行かせていた。
誰もが読まないままでいたかった手紙だった。
だが、もう意見を言うことのできないテイラーの言葉を聞くには、手紙を読むしかない。アイルーンを蔑ろにしたような形になったルーベンスは、テイラーの気持ちを蔑ろにすることは、絶対にしてはならないと決めていたからである。
エレサーレも涙をこらえながら、テイラーを見つめることしかできなかったが、シュアリアに思いを届けなくてはならないと気を引き締めた。
「あれから、一度も目覚めなかったのですよね……」
エレサーレはシュアリアの連絡係からの情報で、そう聞いていた。
テイラーが頭を打ってから、皆が眠れぬ夜を明かし、連絡係の足音、慌てる足音が聞こえる度にビクリとする日々であった。それでも、このような瞬間が永遠に来なければいいと思ってのことだった。
「はい、目覚めることはありませんでした」
「そうですか」
「ですが、目を開くことはありませんでしたが、先程、最期にあの子の隣にと……お父様、お願いと言いながら……」
そう言いながら、ルーベンスの目からは涙がぽろぽろと零れ落ち続けていた。
ルーベンスもベルサートもナナリーも、最期じゃない、助かる、生きるんだと声を掛けたが、叶わなかった。皆は、半狂乱になるほどに叫び続けた。
子どもたちも滞在中だったので、慌てて駆け付け、祖父と両親が泣き叫ぶ様子に挨拶する機会を失ったことを悟った。
目覚めて元気になったら、話をしましょうと、テイラーに声を掛けていた。叔母の記憶を持ちながら、自分たちと年の近いテイラーにどんな話をするか考えていた。
悪いことは考えないようにした。絶対に助かる。
デリア侯爵家は、そう信じていた。
「あの時、目覚めて話ができたことが奇跡なのでしょう……でも、そんなものは奇跡ではありません。理屈ではないのです」
「そうですね……」
エレサーレも、泣き腫らした真っ赤になった、テイラーと同じレッドブラウンの瞳で、そう話すルーベンスに同意することしかできなかった。
しかも、ルーベンスの感覚では、また娘を亡くしたような気持ちもあるだろうと、考えてしまうと、もう言葉がなかった。
会話が途絶えると、悲しみしかない部屋には鼻を啜る音と、泣く声しか聞こえない。
誰もが認めたくない気持ちと、テイラーのそばから離れたくない気持ちが、ただただこの部屋から出られないでいた。
絶望の中、皆がもう目覚めることのないテイラーを見つめていた。
エレサーレには、どこかやり遂げたような顔をしているようにも見えていた。だが、そんなことは望んでいない。皆が、君の幸せを望んでいたと、伝えたかった。
そして、しばらくすると、メイドがテイラーの手紙を持って、戻って来た。
騎士も付けてはいたが、女性の部屋に入るのは、女性の方がいいだろうと、メイドを行かせていた。
「お待たせしました」
「あったか?」
「はい、申された場所に三通ございました」
「三通?」
聞いていたのは二通だった。もう一通は、エイク子爵だろうかと考えていた。
メイドがこちらですと差し出した手紙は、シュアリア王妃陛下、デリア侯爵、そしてディオエル皇帝陛下と書かれていた。
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