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狂った家族
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ベルアンジュはマリクワン侯爵家で、勉強中に真っ白い顔をして急に倒れた。
ルイフォードにも知らせが届き、慌てて自邸に急ぎ、きっと大したことはないはずだと、言い聞かせながら帰路を急いだ。
邸に戻り、執事から血の気の引いた顔で、まだ目を覚まさないこと、侍医を呼んで見せたが、貧血だとは思うがということだった。話を聞こうと両親を呼んだが、全く心当たりがないと言っているそうだ。
ベルアンジュの眠っている部屋に着くと、中からベルアンジュの両親だろうと思われる、心ない会話が聞こえて来た。
「倒れるなんて…」
「健康だけが取り柄の癖に、面倒を掛けさせられたものだ」
「どうせ寝不足でしょう」
「キャリーヌが嫁ぐのだから、ベルアンジュには役に立ってもらわないと、そのくらいしか価値がないのに」
「全くだ」
ルイフォードはキャリーヌに婚約者が出来たとも聞いていないが、決まりそうなのだろうか?あのような娘が?余程、何か理由があるのだろうか。
「何を言っている?」
急にドアを開けると、トアリ伯爵夫妻は慌てたように、ペコペコし始めた。
「この度は、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。おそらく寝不足か何かでしょう。全く情けない娘で」
「病気ではないのだな?」
「当たり前ではありませんか、この子は健康だけが取り柄なのですから」
「貴家の侍医も同じ意見か?」
「侍医?」
「トアリ伯爵家には侍医がいないのか?」
「いえいえ、勿論おります。ええ、おそらくそう言うと思います」
侍医はキャリーヌが最優先で、ベルアンジュを診て貰った記憶すらなかった。
「おそらくとはどういう意味だ?当主ともあろう者が、家族の健康管理すらしていないのか?」
「いえ、そうのようなことは…どうだ?ベルアンジュについて何か言っていたか?」
「え?ベルアンジュのことを?」
トアリ伯爵は夫人に話を振ったが、夫人も同じような困惑の表情を浮かべているだけである。
「もう結構だ、覚えていないのか知らないが、まともにベルアンジュを診せていないのだろう?後はこちらで看るから、帰ってくれ」
「いえ、そのようなご迷惑を掛けるわけには」
「結構だ」
「大袈裟ですよ、少し体調が悪かっただけでしょう」
「何か病気だったらどうする?トアリ伯爵夫妻は病気の子には優しいのだろう?躾のなっていない娘を病気だからと、甘やかしていると有名だものな」
「キャリーヌは!」
「誰のことか分かっているではないか」
誰のことを示しているのかは、理解しているのだなとルイフォードは思った。
「ですが、ルイフォード様もベルアンジュよりキャリーヌの方がいいと言われていたではありませんか」
「誰がそんなことを言った?答えろ!」
怒りの表情で見つめられたトアリ伯爵は、思わず後ずさりした。
「キャリーヌでございます」
「はあ?会ったこともないのに?」
「え?」
会ったことがないはずはない、キャリーヌからルイフォードの話を何度も聞いている。きっと不貞だと思われたくなくて、嘘を付いているのだろうと思った。
「ですが、キャリーヌは美しいと有名ですから」
「どこがだ?病弱売りのくせに、身持ちが悪そうな令嬢だと有名の間違いではないか?」
「そんな訳ないでしょう!」
夫人が目を吊り上げて、反論した。
「いいえ、高位貴族では有名ですよ?急に倒れる振りをして胸部を押し付けてくると、何人かは引き寄せることに成功したようですが、まともな親なら調べれば評判の悪い娘だと分かる。今まで縁談の申し込みがありましたか?」
ルイフォードも挨拶すらしたことはないが、噂で聞いている。
「それは…病気のことがありますから」
ルイフォードにも知らせが届き、慌てて自邸に急ぎ、きっと大したことはないはずだと、言い聞かせながら帰路を急いだ。
邸に戻り、執事から血の気の引いた顔で、まだ目を覚まさないこと、侍医を呼んで見せたが、貧血だとは思うがということだった。話を聞こうと両親を呼んだが、全く心当たりがないと言っているそうだ。
ベルアンジュの眠っている部屋に着くと、中からベルアンジュの両親だろうと思われる、心ない会話が聞こえて来た。
「倒れるなんて…」
「健康だけが取り柄の癖に、面倒を掛けさせられたものだ」
「どうせ寝不足でしょう」
「キャリーヌが嫁ぐのだから、ベルアンジュには役に立ってもらわないと、そのくらいしか価値がないのに」
「全くだ」
ルイフォードはキャリーヌに婚約者が出来たとも聞いていないが、決まりそうなのだろうか?あのような娘が?余程、何か理由があるのだろうか。
「何を言っている?」
急にドアを開けると、トアリ伯爵夫妻は慌てたように、ペコペコし始めた。
「この度は、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。おそらく寝不足か何かでしょう。全く情けない娘で」
「病気ではないのだな?」
「当たり前ではありませんか、この子は健康だけが取り柄なのですから」
「貴家の侍医も同じ意見か?」
「侍医?」
「トアリ伯爵家には侍医がいないのか?」
「いえいえ、勿論おります。ええ、おそらくそう言うと思います」
侍医はキャリーヌが最優先で、ベルアンジュを診て貰った記憶すらなかった。
「おそらくとはどういう意味だ?当主ともあろう者が、家族の健康管理すらしていないのか?」
「いえ、そうのようなことは…どうだ?ベルアンジュについて何か言っていたか?」
「え?ベルアンジュのことを?」
トアリ伯爵は夫人に話を振ったが、夫人も同じような困惑の表情を浮かべているだけである。
「もう結構だ、覚えていないのか知らないが、まともにベルアンジュを診せていないのだろう?後はこちらで看るから、帰ってくれ」
「いえ、そのようなご迷惑を掛けるわけには」
「結構だ」
「大袈裟ですよ、少し体調が悪かっただけでしょう」
「何か病気だったらどうする?トアリ伯爵夫妻は病気の子には優しいのだろう?躾のなっていない娘を病気だからと、甘やかしていると有名だものな」
「キャリーヌは!」
「誰のことか分かっているではないか」
誰のことを示しているのかは、理解しているのだなとルイフォードは思った。
「ですが、ルイフォード様もベルアンジュよりキャリーヌの方がいいと言われていたではありませんか」
「誰がそんなことを言った?答えろ!」
怒りの表情で見つめられたトアリ伯爵は、思わず後ずさりした。
「キャリーヌでございます」
「はあ?会ったこともないのに?」
「え?」
会ったことがないはずはない、キャリーヌからルイフォードの話を何度も聞いている。きっと不貞だと思われたくなくて、嘘を付いているのだろうと思った。
「ですが、キャリーヌは美しいと有名ですから」
「どこがだ?病弱売りのくせに、身持ちが悪そうな令嬢だと有名の間違いではないか?」
「そんな訳ないでしょう!」
夫人が目を吊り上げて、反論した。
「いいえ、高位貴族では有名ですよ?急に倒れる振りをして胸部を押し付けてくると、何人かは引き寄せることに成功したようですが、まともな親なら調べれば評判の悪い娘だと分かる。今まで縁談の申し込みがありましたか?」
ルイフォードも挨拶すらしたことはないが、噂で聞いている。
「それは…病気のことがありますから」
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