【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

文字の大きさ
27 / 131

誰?

しおりを挟む
「そうだったわ、学園にも画集のような物がありませんか?色々見ているのだけど、まだ見ていないものがないかと思っているのです」
「あるかと思います、持って来させましょう」

 監督をしていた教師に、持って来るように頼み、待つことになった。

「ありがとうございます、借りても良いですか?」
「勿論でございます、是非とも役立ててください」
「はい、ありがとうございます。今日は無理を言って、申し訳ありませんでした」
「いいえ、正直、私は今でも免除でいいと思っています」
「それはいけません」

 ヨルレアンは、免除までの特別待遇は好まなかった。だが休んでみて学園に通う理由がないことも実感していた。どうしたものかと思っている際に、提案された試験だけは受けるというのは、納得が出来る折衷案であった。

「オズラール公爵令嬢は、そうおっしゃることも分かっております」

 学園長はずっと飛び級で卒業してしまえばいいと思っているが、ヨルレアンは余程の事情がない限り、きちんと通っていた。

 今回も敢えて、通う必要はないが、定期試験だけは受けて欲しいということをオズラール公爵に伝えて、受けに来て貰ったのである。

 10教科を1日で終えてしまうことを見て分かるように、教えることなどない。学園で何らかの交流があればいいが、彼女は解読を抱えており、それもままならない。

「今は解読を進めたいところなので、何もなければ試験の際に伺います」
「ええ、それで構いません。またこちらからも、お知らせしますので」
「ご配慮ありがとうございます」
「いいえ、勿体ない言葉でございます」

 ヨルレアンは持って来てもらった画集から、手元にない画集を2冊借りて、帰ることになった。

「オズラール公爵令嬢っ!」

 その声は好意的とは思えない呼び掛けであった。

 今日は生徒ではあるが、登校したとも言えない状況であるために、侍女兼護衛と従者兼護衛が同行しており、怪訝な顔をした3人が振り返った。

「誰?」
「……え」

 自分が呼び掛けて置いて、驚いていたのは、出て来るのを何度も待っていたオマリー・トドックであった。

 さすがに10教科のテストを受け、目の疲れを感じていたヨルレアンは間があって、ようやくトドック男爵令嬢だと気付いた。

「何か用事かしら?」
「学園にいらっしゃらないので、心配しておりました」
「なぜ?」
「え?」
「どうして話したこともない、あなたに心配されるの?」

 ヨルレアンとオマリーは、この前のエルドールの理不尽な会話の際は、言葉を交わしておらず、初めての会話である。オマリーに心配される理由が、ヨルレアンには全く分からなかった。

「クラスメイトですから」
「そう…」

 オマリーは当たり前じゃないかという口振りで答えたが、ヨルレアンは分からないままだったが、話をするつもりはなかった。

「で、もういいかしら?引き留めるような要件でもあるの?」
「っ、い、いえ。心配していたことを伝えたかったので…」
「そう。では、失礼しますわね」

 ヨルレアンたちは歩き出し、オマリーは立ち尽くすことになった。

 そんなことは知らないエルドールとカイロスは、試験が終わったことを教師から聞き、出入り口で待ち構えていた。

「ヨルレアン嬢、お疲れ様だったね」
「ええ、疲れましたわ」
「そうか、一言、声を掛けたかっただけなんだ」
「それはありがとうございます」
「何か力になれることがあったら言ってくれ」
「力…そうですか?」
「ああ!何かあるかい?」

 ヨルレアンは従者に紙とペンを借りて、そこへオールエドリレット、もしくはオールドリゥドレットと書いた。

「この名前で何か資料があれば教えてください」
「ああ、分かった。調べてみよう」
「よろしくお願いいたします」

 まだ正しいかも分からないために、公に調べる段階ではないが、使える者は使おうと思い、エルドールに頼むことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

何も決めなかった王国は、静かに席を失う』

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。 だが―― 彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。 ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。 婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。 制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく―― けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。 一方、帝国は違った。 完璧ではなくとも、期限内に返事をする。 責任を分け、判断を止めない。 その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。 王国は滅びない。 だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。 ――そして迎える、最後の選択。 これは、 剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。 何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。 そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。 だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。

処理中です...