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オズラール公爵邸
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「シレラーダ様、わざわざ、ごめんなさいね」
「い、いえ、光栄でございます」
ローズマリーはヨルレアンによく似合っている、ダークブラウンで纏められた素敵な応接室に、緊張でカチカチになりながらも、粗相のないように背筋を伸ばした。
「そんなに硬くならないで、座って頂戴。カレン、お茶を。待って、シレラーダ様、お時間は大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
緊張で、喉が引っ付いているような気がしており、喉を潤せるのであれば有難いくらいであった。
「お茶を用意して頂戴」
「はい、姫様」
カレンはすぐさまメイドにティーセットを持って来させて、キビキビとお茶の用意を始めた。
「お茶くらい飲んでいって頂戴ね」
「はい、ありがとうございます」
その間にヨルレアンは、慣れた様子で運んで来た箱を、こちらにと部屋に運ばせていた。頼んだのはエルドールで、運んでいるのは王家の使用人で、重要な物なのだろうと感じていた。
カレンはローズマリーにお茶を出し、それはピンク色で少し甘い香りのするお茶で、ローズマリーはしばらく見ていたい気持ちもあったが、喉を潤すことにした。
『ありがとうございました』『こちらこそ、よろしくお願いいたします』という声が廊下から聞こえ、終わったのだろうと思った。
そして、ヨルレアンが戻って来て、ローズマリーは思わず背筋を伸ばした。
「お茶はお口にあったかしら?」
「はい、とても美味しいです」
「そう、少し甘いのだけど、私は糖分が必要だから好んでいるの」
ローズマリーは何のお茶だろうかとじっと見つめ、絶対に買って貰おうと、強く思った。
「珍しいものではないのよ、ピーチアップルティーよ」
「も、申し訳ありません」
「いいえ、気に入ってくれたなら良かったわ」
ヨルレアンはそうだわという顔をして、再びカレンを呼んだ。
「あのパイナップルのケーキまだあったかしら?」
「はい、ございます。お持ちしますか?」
「ええ、シレラーダ様のお土産にして頂戴」
「かしこまりました」
カレンは再び、キビキビと出て行ってしまった。
「いえ、お土産なんて」
「いいのよ、たいしたものではないのだけど、ルエルフ王国で流行っているそうなの。是非、食べていただきたいの。パイナップルのチーズケーキなのだけど、苦手かしら?」
「いえ、食べたことはありませんが、好きだと思います」
ローズマリーは、自分で何を言っているのだろうかと思いながらも、ヨルレアンの瞳に自分が映っていることに興奮していた。
「では是非、貰ってください」
「はい…では、遠慮なくいただきます」
「ええ」
その後、包装されたパイナップルのチーズケーキが持って来られて、ローズマリーはヨルレアンから手渡された。
「わざわざ、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ美味しいお茶をありがとうございました」
ヨルレアンに見送られ、ローズマリーは揺られる馬車の中で、パイナップルのチーズケーキを大事に抱えていた。
シレラーダ伯爵邸に付いても、自分でしっかりと抱えて、邸に入った。
「ローズマリー」
「お兄様、帰ってらしたの?」
「ほんのさっきだよ?で、何を抱えているんだ?」
グリズバトンは、ローズマリーが何やら大事そうに抱えている箱が気になった。
「オズラール公爵令嬢様にいただいたの。食べたいけど、食べたくないと、葛藤しているの」
「食べ物なら、食べた方がいいのではないか?」
「でも、手渡していただいたの」
「そうか…じゃあ、記念に包装紙を取っておくか?」
少々、過剰過ぎるとも思うが、オズラール公爵令嬢に何か貰えることは、二度とないかもしれないことも分かる。ローズマリーは、この思い出を大事に取っておきたいのだろうと察した。
「それがいいわね!でも、私、あまり器用じゃないから」
「父上に頼むか?」
「そうね、お父様が一番器用だものね」
折角、綺麗に持って帰った来たのだからと、シレラーダ伯爵の元へと急いだ。
「い、いえ、光栄でございます」
ローズマリーはヨルレアンによく似合っている、ダークブラウンで纏められた素敵な応接室に、緊張でカチカチになりながらも、粗相のないように背筋を伸ばした。
「そんなに硬くならないで、座って頂戴。カレン、お茶を。待って、シレラーダ様、お時間は大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
緊張で、喉が引っ付いているような気がしており、喉を潤せるのであれば有難いくらいであった。
「お茶を用意して頂戴」
「はい、姫様」
カレンはすぐさまメイドにティーセットを持って来させて、キビキビとお茶の用意を始めた。
「お茶くらい飲んでいって頂戴ね」
「はい、ありがとうございます」
その間にヨルレアンは、慣れた様子で運んで来た箱を、こちらにと部屋に運ばせていた。頼んだのはエルドールで、運んでいるのは王家の使用人で、重要な物なのだろうと感じていた。
カレンはローズマリーにお茶を出し、それはピンク色で少し甘い香りのするお茶で、ローズマリーはしばらく見ていたい気持ちもあったが、喉を潤すことにした。
『ありがとうございました』『こちらこそ、よろしくお願いいたします』という声が廊下から聞こえ、終わったのだろうと思った。
そして、ヨルレアンが戻って来て、ローズマリーは思わず背筋を伸ばした。
「お茶はお口にあったかしら?」
「はい、とても美味しいです」
「そう、少し甘いのだけど、私は糖分が必要だから好んでいるの」
ローズマリーは何のお茶だろうかとじっと見つめ、絶対に買って貰おうと、強く思った。
「珍しいものではないのよ、ピーチアップルティーよ」
「も、申し訳ありません」
「いいえ、気に入ってくれたなら良かったわ」
ヨルレアンはそうだわという顔をして、再びカレンを呼んだ。
「あのパイナップルのケーキまだあったかしら?」
「はい、ございます。お持ちしますか?」
「ええ、シレラーダ様のお土産にして頂戴」
「かしこまりました」
カレンは再び、キビキビと出て行ってしまった。
「いえ、お土産なんて」
「いいのよ、たいしたものではないのだけど、ルエルフ王国で流行っているそうなの。是非、食べていただきたいの。パイナップルのチーズケーキなのだけど、苦手かしら?」
「いえ、食べたことはありませんが、好きだと思います」
ローズマリーは、自分で何を言っているのだろうかと思いながらも、ヨルレアンの瞳に自分が映っていることに興奮していた。
「では是非、貰ってください」
「はい…では、遠慮なくいただきます」
「ええ」
その後、包装されたパイナップルのチーズケーキが持って来られて、ローズマリーはヨルレアンから手渡された。
「わざわざ、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ美味しいお茶をありがとうございました」
ヨルレアンに見送られ、ローズマリーは揺られる馬車の中で、パイナップルのチーズケーキを大事に抱えていた。
シレラーダ伯爵邸に付いても、自分でしっかりと抱えて、邸に入った。
「ローズマリー」
「お兄様、帰ってらしたの?」
「ほんのさっきだよ?で、何を抱えているんだ?」
グリズバトンは、ローズマリーが何やら大事そうに抱えている箱が気になった。
「オズラール公爵令嬢様にいただいたの。食べたいけど、食べたくないと、葛藤しているの」
「食べ物なら、食べた方がいいのではないか?」
「でも、手渡していただいたの」
「そうか…じゃあ、記念に包装紙を取っておくか?」
少々、過剰過ぎるとも思うが、オズラール公爵令嬢に何か貰えることは、二度とないかもしれないことも分かる。ローズマリーは、この思い出を大事に取っておきたいのだろうと察した。
「それがいいわね!でも、私、あまり器用じゃないから」
「父上に頼むか?」
「そうね、お父様が一番器用だものね」
折角、綺麗に持って帰った来たのだからと、シレラーダ伯爵の元へと急いだ。
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