【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

文字の大きさ
105 / 131

本当の能力

しおりを挟む
「解読して、覚えていたんです」

 ダズベルトは訝しげな顔で、アリナをじっと見つめ、慌てて弁解した。

「おそらく、あなたは意味を覚えるのではなく、形のような感覚で、覚えているのではありませんか?」
「…え?」
「どれも分かっていないとは言えない、微妙な違い。でも試験となれば、間違いだとされる答えでした」
「確かにそうだな。これが試験であれば、正解とはいかないだろう」

 ダズベルトも納得し、王族席も、観覧席も皆が、頷いていた。

「本当なんです!信じてください!」
「信じることは、解読をしてから言える言葉でしょう。あと、あなたの試験の結果を見せていただきました」
「っな、どうして」
「あなたが勘違いをしているのではないかと、疑問を持ったからです」
「勘違いなんてしていません!解読の勉強をしていたので、試験勉強が出来なくて、難しかっただけです」

 アリナは点数が悪いことを責められるのだと思い、先に保険を張った。

「ルエール語をビリズ語、パレート語にすることは難しいのではありませんか?スペルミスが異常に多かったのです」
「それは、そうかもしれません」

 ではこちらをと言って、ヨルレアンはビリズ語の文―――――を、書いた。

「訳してみてください」
「…あの」

 王家もビリズ語は出来ると聞いており、試験の結果から、やはり嘘だったのかという空気が流れた。

「分かりませんか?」
「いえ、あの、筆記体が…」
「ああ、なるほど」

 筆記体が読めないことで、ヨルレアンはさらに納得した。

 続いて、パレート語を今度は筆記体ではなく、活字体で文―――――を、書いた。

「では、そちらを声に出して読んでください」
「…あ、あっ、ベアイ…」

 そのまま、アリナは黙ってしまった。

「やっぱり出来ないのですね、そうではないかと思っていました。発音は覚える対象外のようです」
「たまたま、分からなかっただけです」

 ヨルレアンはではと言って、今度はビリズ語の活字体で、文章―――――、―――――を、書いた。

「こちらを訳してみてください」
「ご覧ください…えっと、分かるんですけど、咄嗟に出て来なくて。えっと…分かるんです!本当です」

 ご覧くださいは、すぐに訳せたが、続きが思い出せなかった。

「ビリズ語は、母国で習われていると聞いています」
「はい、先生に聞いて貰えば分かります」
「事実なら、あなたにはキャパシティー、収容能力の限界と言うものがあるのでしょう。だから、パレート語や解読を覚えることで、ビリズ語は忘れてしまったのではありませんか?」
「…えっ」

 アリナはそんなことを考えたこともなかったが、そうなのかと思い始めた。

 確かにビリズ語の試験は出来なかった。習っていない、難しかっただけだと思っていたが、忘れてしまったのだとしたら、悔しいが納得が出来た。

「覚え続ける努力をするべきでしたね。以上のことから、やはり解読には向いてもいないことは明らかでございます」
「そ、そんなことはありません」
「あなたは翻訳すら、正確な答えがままならない。覚えているという点ではなく、柔軟性がないのです」
「決めつけないでください!」
「では、最後のビリズ語の訳を、どなたか分かる方いらっしゃいますか?」

 勢いよく手を上げたのは、エルドールとメイランであった。

「では、メイラン王女殿下、お願いします」
「はい!」

 メイランはエルドールを勝ち誇ったような顔で見て、エルドールは悔しそうにしている。

「ご覧ください。足の裏とぞうあざらしが喧嘩をしています」
「正解です」
「え?」
「あり得ない文を書いてみたのです。ビリズ語が分かる方は、疑問を持つ部分ですが、あなたはそれも感じなかったでしょう?」
「それは分からなくて」
「では、覚えることが得意だけど、答えがある物しか分からないと、お認めになってはいかがですか?」

 ヨルレアンは淑女らしい微笑みを、アリナに向けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本日もお読みいただきありがとうございます。

本日は1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時にも1話、投稿します。

どうぞよろしくお願いいたします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

何も決めなかった王国は、静かに席を失う』

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。 だが―― 彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。 ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。 婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。 制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく―― けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。 一方、帝国は違った。 完璧ではなくとも、期限内に返事をする。 責任を分け、判断を止めない。 その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。 王国は滅びない。 だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。 ――そして迎える、最後の選択。 これは、 剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。 何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。 そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。 だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。

処理中です...