【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

文字の大きさ
106 / 131

本当の思惑

しおりを挟む
「そ、それは…」
「私の説明が納得のいく、あなたの能力の答えなのです」
「っ」
「ああ、ヨルレアン王女の説明が一番、納得が出来る」

 今日はダズベルトはヨルレアンを、第一王女として扱うことになっていた。

 ダズベルトは解読について説明するのかと思っていたが、ここにいる者は大半は分からない者であるために、説明するのにも時間も掛かり、理解が得られないと判断したのだろうと思った。

 だが、翻訳の点であれば、王家にも観覧席の者も分かる者も多いだろう。

 関係者席のラリオも、外交大臣も、グルダイヤ侯爵も、不味い状況なのは分かっていたが、ヨルレアンとサリージュの登場に、口を挟むことも出来なかった。

 サリージュは素晴らしい姉でございましょうという顔をしているが、ふざけた展開になれば一瞬にして豹変するだろう。

「記憶が出来るという点では、評価は出来ると思いますよ。前世でとても徳を積んだのかもしれませんね」
「なら、これから」
「ええ、ルスデン王国でもお励みください」

 ヨルレアンは当たり前のことを言ったのだが、アリナは酷くショックを受けたような表情を浮かべた。

「そんなはず…そんなこと…」
「一つ聞きたいのですが、あなたは解読をしているという実感があったのですか?」
「ありました」

 何を持ってかと聞きたいところだが、記憶することが解読だと思っているアリナに、聞いてもおそらく答えられないだろうと、ヨルレアンは判断した。

「本来なら解読というのは、地道な作業で、このような場で披露するようなものではないのです」
「っな、じゃあ」
「ですが、あなたはこの場で古代語の解読が出来ることを見せると認め、出来なかった。国王陛下に嘘は申しませんでしょう?」
「っっっ」

 さすがにアリナも覚えており、言っていないとは言えなかった。

「じゃあ、王子様との結婚はどうなるの!」

 アリナは観覧席を背にしていたので、すっかり目の前のヨルレアンと王家にしか目に入っていなかった。ゆえに、甲高い嘆くような声を上げた。

「そのような予定があるのか?」

 ダズベルトは婚約者はいないと聞いていたことから、内々で何か決まっていたのかと、不思議に思い問い掛けた。

「えっ、だって!王太子妃様と、王子妃様に言われたんです」
「何を?」
「どちらかの王子様と結婚するのよと」
「それは国に帰って、王家と話し合いなさい」

 ルスデン王国も年は違うが、来ているラリオとミソオがおり、娶るつもりだったのか、だがこの様子で娶って貰えるのかと考えていた。

「違います!コーランド王国の王子様たちです!」
「なに?」

 王太子妃様も王子妃様もまだいない、コーランド王国のことではないとは思っていたが、我が国の名前が出て、ダズベルトは低い声が出た。

「言われたんです!」
「ハッソ嬢!何を言っている」

 外交大臣が、慌てて止めに入ったが、既に遅い。

「王太子妃と王子妃に、我が国の王子と結婚するのだと言われたのだな?」
「そうです!解読を認められて、結婚するのだと」
「王子たちに婚約者がいるのにも関わらずということだな」

 ローレルは表情を変えないが、エルドールは眉間に皺を寄せており、メイランは拳を握り締めていた。そして、オーバンは既に持っていた扇子を破壊し、侍女が回収して、新しい扇子が渡されていた。

 サリージュは、侍女に一言一句メモを取るように指示した。

「だからです!婚約で結婚していないから、私と結婚したいと」
「アリナ嬢!黙りなさい!」

 ラリオ王太子殿下も叫んだが、アリナの耳には届いていなかった。

「君と王子のどちらも結婚するなどということは、絶対にない」
「え?だって、私そのつもりで」
「そのつもりでいたのか?」

 エルドールに近付くこともなかったと聞いており、そんなことを考えていたのかと、顔を顰めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。 そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。 だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。

天然と言えば何でも許されると思っていませんか

今川幸乃
恋愛
ソフィアの婚約者、アルバートはクラスの天然女子セラフィナのことばかり気にしている。 アルバートはいつも転んだセラフィナを助けたり宿題を忘れたら見せてあげたりとセラフィナのために行動していた。 ソフィアがそれとなくやめて欲しいと言っても、「困っているクラスメイトを助けるのは当然だ」と言って聞かず、挙句「そんなことを言うなんてがっかりだ」などと言い出す。 あまり言い過ぎると自分が悪女のようになってしまうと思ったソフィアはずっともやもやを抱えていたが、同じくクラスメイトのマクシミリアンという男子が相談に乗ってくれる。 そんな時、ソフィアはたまたまセラフィナの天然が擬態であることを発見してしまい、マクシミリアンとともにそれを指摘するが……

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで

ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです! 読んでくださって、本当にありがとうございました😊 前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。 婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。 一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが…… ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。 ★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。 ★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。 2万字程度。なろう様にも投稿しています。 オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン) レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友) ティオラ (ヒロインの従姉妹) メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人) マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者) ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

良いものは全部ヒトのもの

猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。 ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。 翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。 一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。 『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』 憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。 自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。

処理中です...