107 / 131
必死な聖女
しおりを挟む
「はい…だって、そう言われたから…王太子妃様と王子妃様が嘘なんてつくはずないではありませんか」
「申し訳ございません!与り知らぬことですが、代わりに謝罪いたします」
ラリオは立ち上がって、深く頭を下げた。大臣も後ろで頭を下げている。
グルダイヤ侯爵は、解読など出来なかったことにショックを受け、その後のアリナの言葉に、まるで舞台を見ているかのように、茫然としていた。
「知らぬと申すのか?」
「知りません!私はそんなことは考えてもおりません!」
王家としてはアリナは役に立つならばと思ってはいたが、まさか妻と弟の妻がそんなことを言っていたとは思いもしなかった。
解読も出来るということであったが、まさか意味も分からず、記憶して答えていただけなどと、考えてもいなかった。
どうして誰も気付かなかったのか、ルスデン王国には古代語の学者などいないからであった。だが、茫然としているグルダイヤ侯爵も、分からなかったのだろう。
「そんな!でも、そう言われたのです!じゃあ、国王陛下、お願いです!私、役に立ちます!」
「やめなさい!アリナ嬢っ!」
ダズベルトに向かって、必死に訴え掛けるアリナにラリオが怒鳴り付けた。
「王子たちと結婚したいということか?」
「はい、そうです!」
「他国の婚約に立ち入るとは何がしたいんだ?君はコーランド王国と、ルエルフ王国を戦うとでも言うのか?」
「え…ルエルフ王国は」
「第二王子の婚約者は、そこにいるヨルレアンだ。オズラール公爵令嬢でもあるが、ルエルフ王国の第一王女でもある」
「…え」
目の前に立つヨルレアンに視線を移したが、無表情である。
「でも、第二王子の婚約者は病弱だと聞きました」
クリスティーナが、言っていたことである。
「忙しいので、学園を通っていないだけですわ」
「でも…私は役に立てます!解読だって、これからもっと学べば、出来るようになるはずです」
「それはどうでしょうか」
答えたのは、デュランズであった。
「確かに君は覚えることは、得意だと言っていいのかもしれない」
「そうです!」
「だが、外国語ですら正確ではない。話すことは出来ない。翻訳を仕事にするにしても、私は君に任せたくはない」
「…え」
「そして、古代語の解読というのは、先ほども言ったように答えがない。ゆえに書いた者の人となりを考えたり、時代背景を考えたり、裏付けを取らなくてはならない。上辺だけの知識では出来ないのだよ」
意味も理解せず、大雑把に記憶して、出来ると言っていたような者には出来ないと言っているのである。
「でも、学んでいけば」
「そうだね、だが君は筆記体ですら読めなかった。古代語は人が書いた者、しかも色んな者が書き、癖だってある。型にはめられた文字だけではないのだよ?だから、今の君の力では絶対に出来ないことは断言出来る」
筆記体すら読めないのは、論外である。
「そんな…でも、これから頑張りますから」
余りの必死な様子に、ダズベルトはある疑問が浮かんだ。
「王太子妃と王子妃に脅されでもしたのか?」
「あなたの居場所はここにはないと言われて、だから、だから…」
ルスデン王国は一夫一妻制であることから、王太子妃も王子妃も自分が離縁されるのではないかと、吹き込んだのかもしれないが、完全に裏目に出ている。
「事実がどうなのか分かりませんけど、もし彼女の言うことが事実でも、王太子妃も王子妃も言っていないというのではないかしら?」
皆はアリナのただならぬ様子に気に留めていたが、ヨルレアンは危険性を考えていた。ここで男爵令嬢がそんなことを言う危うさを、アリナは分かっていないと感じた。
「その通りだな」
「きちんと調べます!」
「そうした方がいい。もう解読はいいな?」
「はい!」
ラリオは出来なかった時点で終わって欲しかったと、心から思っていた。
「申し訳ございません!与り知らぬことですが、代わりに謝罪いたします」
ラリオは立ち上がって、深く頭を下げた。大臣も後ろで頭を下げている。
グルダイヤ侯爵は、解読など出来なかったことにショックを受け、その後のアリナの言葉に、まるで舞台を見ているかのように、茫然としていた。
「知らぬと申すのか?」
「知りません!私はそんなことは考えてもおりません!」
王家としてはアリナは役に立つならばと思ってはいたが、まさか妻と弟の妻がそんなことを言っていたとは思いもしなかった。
解読も出来るということであったが、まさか意味も分からず、記憶して答えていただけなどと、考えてもいなかった。
どうして誰も気付かなかったのか、ルスデン王国には古代語の学者などいないからであった。だが、茫然としているグルダイヤ侯爵も、分からなかったのだろう。
「そんな!でも、そう言われたのです!じゃあ、国王陛下、お願いです!私、役に立ちます!」
「やめなさい!アリナ嬢っ!」
ダズベルトに向かって、必死に訴え掛けるアリナにラリオが怒鳴り付けた。
「王子たちと結婚したいということか?」
「はい、そうです!」
「他国の婚約に立ち入るとは何がしたいんだ?君はコーランド王国と、ルエルフ王国を戦うとでも言うのか?」
「え…ルエルフ王国は」
「第二王子の婚約者は、そこにいるヨルレアンだ。オズラール公爵令嬢でもあるが、ルエルフ王国の第一王女でもある」
「…え」
目の前に立つヨルレアンに視線を移したが、無表情である。
「でも、第二王子の婚約者は病弱だと聞きました」
クリスティーナが、言っていたことである。
「忙しいので、学園を通っていないだけですわ」
「でも…私は役に立てます!解読だって、これからもっと学べば、出来るようになるはずです」
「それはどうでしょうか」
答えたのは、デュランズであった。
「確かに君は覚えることは、得意だと言っていいのかもしれない」
「そうです!」
「だが、外国語ですら正確ではない。話すことは出来ない。翻訳を仕事にするにしても、私は君に任せたくはない」
「…え」
「そして、古代語の解読というのは、先ほども言ったように答えがない。ゆえに書いた者の人となりを考えたり、時代背景を考えたり、裏付けを取らなくてはならない。上辺だけの知識では出来ないのだよ」
意味も理解せず、大雑把に記憶して、出来ると言っていたような者には出来ないと言っているのである。
「でも、学んでいけば」
「そうだね、だが君は筆記体ですら読めなかった。古代語は人が書いた者、しかも色んな者が書き、癖だってある。型にはめられた文字だけではないのだよ?だから、今の君の力では絶対に出来ないことは断言出来る」
筆記体すら読めないのは、論外である。
「そんな…でも、これから頑張りますから」
余りの必死な様子に、ダズベルトはある疑問が浮かんだ。
「王太子妃と王子妃に脅されでもしたのか?」
「あなたの居場所はここにはないと言われて、だから、だから…」
ルスデン王国は一夫一妻制であることから、王太子妃も王子妃も自分が離縁されるのではないかと、吹き込んだのかもしれないが、完全に裏目に出ている。
「事実がどうなのか分かりませんけど、もし彼女の言うことが事実でも、王太子妃も王子妃も言っていないというのではないかしら?」
皆はアリナのただならぬ様子に気に留めていたが、ヨルレアンは危険性を考えていた。ここで男爵令嬢がそんなことを言う危うさを、アリナは分かっていないと感じた。
「その通りだな」
「きちんと調べます!」
「そうした方がいい。もう解読はいいな?」
「はい!」
ラリオは出来なかった時点で終わって欲しかったと、心から思っていた。
4,375
あなたにおすすめの小説
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
何も決めなかった王国は、静かに席を失う』
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。
だが――
彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。
ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。
婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。
制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく――
けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。
一方、帝国は違った。
完璧ではなくとも、期限内に返事をする。
責任を分け、判断を止めない。
その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。
王国は滅びない。
だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。
――そして迎える、最後の選択。
これは、
剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。
何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる