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未練
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「アルバート様」
「これは、王太子殿下。ごきげんよう、いかがされましたか」
アルバート・ブラックア公爵令息。アウラージュの幼なじみである。シュアリーの初恋の人でもあるが、全く相手にされなかった。
「お姉様の居場所をご存知ではありませんか」
「それは、アウラージュ殿下が王宮からいなくなったと言っているようなものですが、よろしいのですか」
「っあ、でもアルバート様ならご存知なのではありませんか」
「居場所は知りません」
「本当ですか、アルバート様が知らないはずはないと思うのですが」
そんなはずはない、アルバートがアウラージュが王位継承権を放棄したというのに、落ち着き払っているのはおかしい。
「本当に知らないのです。ただ、無事だということだけは知っております。これでお許し願えますか」
「そうですか、ありがとうございます。もし会ったら、シュアリーが話がしたいと言っていると伝えて貰えませんか」
「承知しました、もし会うことがあれば伝えます」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
シュアリーはすっかり近々会えると思っていたが、待っても待っても、アウラージュからもアルバートからも連絡はない。
「アルバート様、お姉様に伝えていただけましたか」
「いいえ、会っておりませんので、伝えようがないのです」
「それはそうですが、話がしたいのです」
「私も会っていないものですから、別の方に頼んだ方がいいかもしれませんね。王太子殿下のお力になれず、申し訳ございません」
アルバートは見せ付けるように、シュアリーに向かって頭を下げ、シュアリーも渋々納得するしかなかった。
それでもシュアリーはアウラージュを見付けることを諦められず、いつもならシュアリーのために動いてくれる陛下もルカスも難しいとなれば、頼る相手がいない。使用人はいるが、アウラージュが出て行って距離が出来た者もおり、そもそもがシュアリーが願った陛下の指示で動く者たちである。
「シュアリー様、王太子教育の進み具合はいかがですか」
「えっ、ええ、順調だと思うわ」
最近、ルカスが聞いて来るのは王太子教育のことばかりになった。前は楽しい話や、お互いの愚痴を聞いたりしていたのに、今では愚痴も聞いてくれそうにない。
「ブラックア様とは何を話されていたのですか」
「えっ、見ていたの?」
「はい、お邪魔してはいけないと思いまして」
「アルバート様なら、お姉様のことをご存知かと思ったの。でも居場所は知らないと言われてしまって」
「知っていても言わないように、言われているのかもしれませんね」
「そんな…怒っているのよね、きっと」
「いずれお会いする時に、もう一度謝罪しましょう。しっかり学んで、アウラージュ殿下に見せて驚かせましょう」
正直これ以上、勉強漬けの日々は嫌だ。前ならば今日は具合が悪いと言えば、スケジュールを調整してくれていたのに、今は一切ない。この間、頭が痛いと言えば、医師を呼ばれて、付きっ切りで監視されることになってしまった。
「でも、お父様がお姉様の婚約者を考えているそうなの」
「そうなのですか」
「ええ、お姉様にも幸せになって欲しいでしょう。ルカス様、どなたか、いい候補を知らない?」
「それこそ、ブラックア様は」
「アルバート様は駄目よ!嫡男でしょう」
シュアリーは急に大きな声を出し、嫡男であることもだが、初恋の相手だからも含まれている。
「なぜですか?嫁がれるので、問題ないのでは」
「だから、やっぱりお姉様に…王太子になって貰った方がいいと思うの」
「それは…」
「ルカス様の言ったことも分かっているの。でも、お姉様の努力を踏み躙ったような気持ちになって苦しいの」
「シュアリー様…」
「ですが、既に王位継承権を放棄されているのですよ。私はシュアリー殿下に王太子の自覚を持っていただきたいのです」
「私は苦しいのっ!」
「ですが」
「どうして分かってくれないの!みんな、最近優しくない」
思い通りに行かなくなったシュアリーの可愛い我儘から、ただの我儘に変わりつつあることに気付くべきだっただろう。
「これは、王太子殿下。ごきげんよう、いかがされましたか」
アルバート・ブラックア公爵令息。アウラージュの幼なじみである。シュアリーの初恋の人でもあるが、全く相手にされなかった。
「お姉様の居場所をご存知ではありませんか」
「それは、アウラージュ殿下が王宮からいなくなったと言っているようなものですが、よろしいのですか」
「っあ、でもアルバート様ならご存知なのではありませんか」
「居場所は知りません」
「本当ですか、アルバート様が知らないはずはないと思うのですが」
そんなはずはない、アルバートがアウラージュが王位継承権を放棄したというのに、落ち着き払っているのはおかしい。
「本当に知らないのです。ただ、無事だということだけは知っております。これでお許し願えますか」
「そうですか、ありがとうございます。もし会ったら、シュアリーが話がしたいと言っていると伝えて貰えませんか」
「承知しました、もし会うことがあれば伝えます」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
シュアリーはすっかり近々会えると思っていたが、待っても待っても、アウラージュからもアルバートからも連絡はない。
「アルバート様、お姉様に伝えていただけましたか」
「いいえ、会っておりませんので、伝えようがないのです」
「それはそうですが、話がしたいのです」
「私も会っていないものですから、別の方に頼んだ方がいいかもしれませんね。王太子殿下のお力になれず、申し訳ございません」
アルバートは見せ付けるように、シュアリーに向かって頭を下げ、シュアリーも渋々納得するしかなかった。
それでもシュアリーはアウラージュを見付けることを諦められず、いつもならシュアリーのために動いてくれる陛下もルカスも難しいとなれば、頼る相手がいない。使用人はいるが、アウラージュが出て行って距離が出来た者もおり、そもそもがシュアリーが願った陛下の指示で動く者たちである。
「シュアリー様、王太子教育の進み具合はいかがですか」
「えっ、ええ、順調だと思うわ」
最近、ルカスが聞いて来るのは王太子教育のことばかりになった。前は楽しい話や、お互いの愚痴を聞いたりしていたのに、今では愚痴も聞いてくれそうにない。
「ブラックア様とは何を話されていたのですか」
「えっ、見ていたの?」
「はい、お邪魔してはいけないと思いまして」
「アルバート様なら、お姉様のことをご存知かと思ったの。でも居場所は知らないと言われてしまって」
「知っていても言わないように、言われているのかもしれませんね」
「そんな…怒っているのよね、きっと」
「いずれお会いする時に、もう一度謝罪しましょう。しっかり学んで、アウラージュ殿下に見せて驚かせましょう」
正直これ以上、勉強漬けの日々は嫌だ。前ならば今日は具合が悪いと言えば、スケジュールを調整してくれていたのに、今は一切ない。この間、頭が痛いと言えば、医師を呼ばれて、付きっ切りで監視されることになってしまった。
「でも、お父様がお姉様の婚約者を考えているそうなの」
「そうなのですか」
「ええ、お姉様にも幸せになって欲しいでしょう。ルカス様、どなたか、いい候補を知らない?」
「それこそ、ブラックア様は」
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「なぜですか?嫁がれるので、問題ないのでは」
「だから、やっぱりお姉様に…王太子になって貰った方がいいと思うの」
「それは…」
「ルカス様の言ったことも分かっているの。でも、お姉様の努力を踏み躙ったような気持ちになって苦しいの」
「シュアリー様…」
「ですが、既に王位継承権を放棄されているのですよ。私はシュアリー殿下に王太子の自覚を持っていただきたいのです」
「私は苦しいのっ!」
「ですが」
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