愛されて、愛されて、愛されて

野村にれ

文字の大きさ
20 / 42

新婚生活

しおりを挟む
 ビードルトラン公爵家の使用人は全員ではないが、接することが多い者はルジエールが結婚したがっていないことから、契約結婚であることは知っている。

 それでも、結婚というものに触れることが目的でも、ジスラットとマーガレットが喜んでいることを、しっかり受け止めている。

 しかも、美しいフランアールが嫁いで来ることに、浮足立っていた。

「天使ではありませんの?」
「いや、女神の方がいいのではないか?」
「見惚れてポーッとしてしまいます」
「幼い頃から有名だったからな」
「侍女やメイドの方は動揺されておらず、さすがでしたわね」

 メイドはフランアールの生活を整えるために付き添っただけで、ヴァッサム公爵家に戻る。だが、侍女のミハラとリルハ姉妹は変わらず、付き添う。

 顔は合わせていたが、しっかり話をしておこうと思い、改めて挨拶をした。

 フラアールは猫と共に両親と部屋について、不便はないかと話をしている。

「ルジエールだ」
「ミハラでございます」
「リルハでございます」

 20代だろう二人は、ブラウンのまっすぐな髪の毛を結んでいるのがミハラ、ブラウンの少し癖のある髪の毛を結んでいるがリルハ。

 大きな瞳で幼い顔立ちで、背丈も同じ二人はよく似ており、フランアールのせいで霞みがちだが、可愛らしい姉妹である。

 リソート男爵家の令嬢だったが、縁を切っていることはヴァッサム公爵から聞いている。

「双子なのか?」
「いいえ、私が姉で、リルハが妹で、一歳差です」
「そうか、ずっと気になっていた」

 ルジエールは正直、二人が付いている時を見て、初めて二人いたことに気付き、ずっと一人だと思っていた。

「よく言われます」
「何かこちらで生活する上で、何か希望があれば言って欲しい」
「「承知いたしました」」
「今は特にないか?」
「今のところはございません。私どもはフラン様が嫌な思いをしなければ何でもいいのです」
「それは善処する、何かあれば私でも、このエバンファストでも、私の両親でも、執事でもメイド長でもいい」

 エバンファストも控えており、頭を下げた。

「承知いたしました、ヴァッサム公爵家には自由に帰っていいというのは、お間違えありませんか?」
「ああ、問題ない。どこへ行ったかだけ、執事に伝えてくれればいい」
「それは安心いたしました。お顔を出さないと、皆様、寂しがって押し掛けてくると思いますので」
「そ、そうか」

 フランアールが愛されていることは、ルジエールの目にも明らかであったために、そんなことはないだろうとは言えずに、好きに戻ったらいい、むしろ戻ってもらわないとならない。

「王家からもお茶会に誘われると思いますので、そちらも参加させていただきます」
「ああ、土産や何か必要なら申し付けてくれ」
「土産……」

 ミハラは土産という言葉を久し振りに聞いた気がして、考え始めた。

「持って行かないのか?」
「はい、フラン様の笑顔が最高のお土産だと、ああ、そうでした」
「何だ?」
「前にお持ちになったら、奪い合いになったからでした」

 フランアールが持って行ったのは、お気に入りのキャンディーだったのだが、皆で分ければいいのだが、奪い合いになった。それからは、何も持って来なくていいと、誕生日だけということになった。

「奪い合い……そうか、まあ必要なら好きにしてもらっていい」
「承知いたしました」

 許可も得ている上に、家族が禁断症状になってはならないために、フランアールは実家にもよく顔を出した。

「んふー」

 フランアールの笑顔に、リートルとルキュアの頬がクイっと上がった。

「可愛いわね」
「可愛いがすぎるぞ」

 ヴァッサム公爵家では、いつもの光景である。給仕を行っているメイドも、激しく頷いている。

 フランアールがシュークリームを食べて、美味しかった顔だけでこれである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】あなたの愛は今どこにありますか

野村にれ
恋愛
頭では理由を付けて分かった振りをしても、理屈ではない。 分かりたくないことは、受け入れられない。 どうしても、叶わないことはある。 それならば、私はどうするべきか。どう生きて行くべきか。 (ひどく捻くれた話になっております)

私を追い出したければどうぞご自由に

睡蓮
恋愛
伯爵としての立場を有しているグルームは、自身の婚約者として同じく貴族令嬢であるメレーナの事を迎え入れた。しかし、グルームはその関係を築いていながらソフィアという女性に夢中になってしまい、メレーナに適当な理由を突き付けてその婚約を破棄してしまう。自分は貴族の中でも高い地位を持っているため、誰も自分に逆らうことはできない。これで自分の計画通りになったと言うグルームであったが、メレーナの後ろには貴族会の統括であるカサルがおり、二人は実の親子のような深い絆で結ばれているという事に気づかなかった。本気を出したカサルの前にグルームは一方的に立場を失っていくこととなり、婚約破棄を後悔した時にはすべてが手遅れなのだった…。

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ
恋愛
 いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。 「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」 「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」  ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。  ──対して。  傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。

妹なんだから助けて? お断りします

たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。

[完結]裏切りの果てに……

青空一夏
恋愛
王都に本邸を構える大商会、アルマード男爵家の一人娘リリアは、父の勧めで王立近衛騎士団から引き抜かれた青年カイルと婚約する。 彼は公爵家の分家筋の出身で、政争で没落したものの、誇り高く優秀な騎士だった。 穏やかで誠実な彼に惹かれていくリリア。 だが、学園の同級生レオンのささやいた一言が、彼女の心を揺らす。 「カイルは優しい人なんだろ? 君が望めば、何でもしてくれるはずさ。 でも、それは――仕事だからだよ。結婚も仕事のうちさ。 だって、雇い主の命令に逆らえないでしょ? 君に好意がなくても、義務でそうするんだ」 その言葉が頭から離れないリリアは、カイルの同僚たちに聞き込み、彼に病気の家族がいると知った。「治療費のために自分と結婚するの?」 そう思い込んだリリアに、父母がそろって事故死するという不幸が襲う。 レオンはリリアを惑わし、孤立させ、莫大な持参金を持って自分の元へ嫁ぐように仕向けるのだった。 だが、待っていたのは愛ではなく、孤独と裏切り。 日差しの差さない部屋に閉じ込められ、心身を衰弱させていくリリア。 「……カイル、助けて……」 そう呟いたとき。動き出したのは、かつて彼女を守ると誓った男――カイル・グランベルだった。そしてリリアも自らここを抜けだし、レオンを懲らしめてやろうと決意するようになり…… 今、失われた愛と誇りを取り戻す物語が始まる。

最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。 幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。 一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。 ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。

彼女の離縁とその波紋

豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

処理中です...