36 / 42
練習試合1
しおりを挟む
「あれが誘ってくれたファシルだ」
「まあ、アベンヌ侯爵家の方だったのですね」
「知っているのか?」
「話をしたことはありませんけど、お顔は存じておりますよ」
フランアールは知らない人にあまり近付かないようにしているが、異性には特に気を付けるように言われているために、話したことのない者も多い。
「そうか」
「お強いんですの?」
「ああ、そうだと思う」
「楽しみですわね」
ファシルは勝ち、身体強化を行っているせいか、やはり一本一本に力強さを感じた。才能や練習量もあるだろうが、やはり魔力量、使い方の違いもあるのだと思いながら見ていた。
フランアールはと言うと、声を上げることはするが、試合について何か言うことはなく、とにかく楽しく、試合から目を離さまいとしていた。
そして、次の試合になり、始めは今までと同じように打ち合っていたが、片方の騎士の剣が手から離れて、ルジエールたちが座っている観客席の方に飛んで来た。
「キャ―――ッ!」
「危ない」
ルジエールが風を起こそうと思った瞬間には、フランアールが飛び上がって、当たり前のように剣をキャッチしていた。
ミハラとリルハは自分たちが取ろうと、フランアールを止めようとしたが、格段に遅かった。
美しきフランアールが舞い上がったために、周りにざわめきが広がったが、興奮状態のフランアールは危なかったわねと、気にする様子もなかった。
剣は無事に回収されたが、ミハラとリルハは頭を抱えていた。
「フラン様ぁ、目立ってはなりません」
「そうですよ、また伝説を作ってしまいます」
「大袈裟よ」
「大袈裟ではありません、天使に間違われたらどうするのです」
「今日はどちらかと言うと悪魔じゃない?」
黒い服装に襟を掴んで見せたが、ミハラは首を振った。
「悪魔でも駄目です」
フランアールはミハラとリルハに叱られることになり、確かに試合もだが、フランアールのことを話しているような気配をルジエールも感じていた。
二人は冗談で言っているような顔ではなく、本気で困って叱っている。
「格好いい姿は見せてはなりません」
「そうね、どちらかと言うとそちらかしら」
「そうです」
リルハは天使だと例えるミハラとは違って、フランアールの格好良さが知られてしまうことを危惧していた。
「気を付けるわ」
「ああ……」
「うう……」
あまりに落ち込むミハラとリルハに、ルジエールも確かに目立ってはしまったとは思った。だが、いるだけで既に目立っているのではないかとも思っていた。
それよりも、フランアールの身体能力の高さは今の一瞬で明らかであった。
一般的な令嬢はまず放物線を描くかのように、キャッチすることはできない。ルジエールでも身体強化を使ったのかすら分からなかった。
「身体強化を使ったのか?」
ルジエールは防音の魔術を使って問い掛けた。
「少しですよ?」
「そうか……」
それから、剣が飛んで来るようなことはなく、練習試合は終わった。
フランアールはとても満足そうで、どんなパーティーよりも嬉しそうであった。
帰りの馬車でも、興奮は冷めやらぬ状態であった。
「他にもこのようなことはございませんの?」
「練習試合か?」
「ええ」
「魔術師もあるが……」
「まあ、見に行けますの?」
騎士に興味があったのかと思ったが、魔術師にも興味があるのかと驚いた。
魔術師ならルジエールの管轄であるために、見せることは容易である。
「そちらも興味があるのか?」
「はい、ございます」
「そうか、魔術師なら……今までは禁止にでもされていたのか?」
「禁止ということではありませんけど、あまり人の多いところは、最低限で、学園とパーティー以外は控えておりました」
「そうか。なら、次は魔術師の練習試合に来るといい」
「まあ、アベンヌ侯爵家の方だったのですね」
「知っているのか?」
「話をしたことはありませんけど、お顔は存じておりますよ」
フランアールは知らない人にあまり近付かないようにしているが、異性には特に気を付けるように言われているために、話したことのない者も多い。
「そうか」
「お強いんですの?」
「ああ、そうだと思う」
「楽しみですわね」
ファシルは勝ち、身体強化を行っているせいか、やはり一本一本に力強さを感じた。才能や練習量もあるだろうが、やはり魔力量、使い方の違いもあるのだと思いながら見ていた。
フランアールはと言うと、声を上げることはするが、試合について何か言うことはなく、とにかく楽しく、試合から目を離さまいとしていた。
そして、次の試合になり、始めは今までと同じように打ち合っていたが、片方の騎士の剣が手から離れて、ルジエールたちが座っている観客席の方に飛んで来た。
「キャ―――ッ!」
「危ない」
ルジエールが風を起こそうと思った瞬間には、フランアールが飛び上がって、当たり前のように剣をキャッチしていた。
ミハラとリルハは自分たちが取ろうと、フランアールを止めようとしたが、格段に遅かった。
美しきフランアールが舞い上がったために、周りにざわめきが広がったが、興奮状態のフランアールは危なかったわねと、気にする様子もなかった。
剣は無事に回収されたが、ミハラとリルハは頭を抱えていた。
「フラン様ぁ、目立ってはなりません」
「そうですよ、また伝説を作ってしまいます」
「大袈裟よ」
「大袈裟ではありません、天使に間違われたらどうするのです」
「今日はどちらかと言うと悪魔じゃない?」
黒い服装に襟を掴んで見せたが、ミハラは首を振った。
「悪魔でも駄目です」
フランアールはミハラとリルハに叱られることになり、確かに試合もだが、フランアールのことを話しているような気配をルジエールも感じていた。
二人は冗談で言っているような顔ではなく、本気で困って叱っている。
「格好いい姿は見せてはなりません」
「そうね、どちらかと言うとそちらかしら」
「そうです」
リルハは天使だと例えるミハラとは違って、フランアールの格好良さが知られてしまうことを危惧していた。
「気を付けるわ」
「ああ……」
「うう……」
あまりに落ち込むミハラとリルハに、ルジエールも確かに目立ってはしまったとは思った。だが、いるだけで既に目立っているのではないかとも思っていた。
それよりも、フランアールの身体能力の高さは今の一瞬で明らかであった。
一般的な令嬢はまず放物線を描くかのように、キャッチすることはできない。ルジエールでも身体強化を使ったのかすら分からなかった。
「身体強化を使ったのか?」
ルジエールは防音の魔術を使って問い掛けた。
「少しですよ?」
「そうか……」
それから、剣が飛んで来るようなことはなく、練習試合は終わった。
フランアールはとても満足そうで、どんなパーティーよりも嬉しそうであった。
帰りの馬車でも、興奮は冷めやらぬ状態であった。
「他にもこのようなことはございませんの?」
「練習試合か?」
「ええ」
「魔術師もあるが……」
「まあ、見に行けますの?」
騎士に興味があったのかと思ったが、魔術師にも興味があるのかと驚いた。
魔術師ならルジエールの管轄であるために、見せることは容易である。
「そちらも興味があるのか?」
「はい、ございます」
「そうか、魔術師なら……今までは禁止にでもされていたのか?」
「禁止ということではありませんけど、あまり人の多いところは、最低限で、学園とパーティー以外は控えておりました」
「そうか。なら、次は魔術師の練習試合に来るといい」
1,094
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【完結】あなたの愛は今どこにありますか
野村にれ
恋愛
頭では理由を付けて分かった振りをしても、理屈ではない。
分かりたくないことは、受け入れられない。
どうしても、叶わないことはある。
それならば、私はどうするべきか。どう生きて行くべきか。
(ひどく捻くれた話になっております)
私を追い出したければどうぞご自由に
睡蓮
恋愛
伯爵としての立場を有しているグルームは、自身の婚約者として同じく貴族令嬢であるメレーナの事を迎え入れた。しかし、グルームはその関係を築いていながらソフィアという女性に夢中になってしまい、メレーナに適当な理由を突き付けてその婚約を破棄してしまう。自分は貴族の中でも高い地位を持っているため、誰も自分に逆らうことはできない。これで自分の計画通りになったと言うグルームであったが、メレーナの後ろには貴族会の統括であるカサルがおり、二人は実の親子のような深い絆で結ばれているという事に気づかなかった。本気を出したカサルの前にグルームは一方的に立場を失っていくこととなり、婚約破棄を後悔した時にはすべてが手遅れなのだった…。
溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。
ふまさ
恋愛
いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。
「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」
「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」
ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。
──対して。
傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。
妹なんだから助けて? お断りします
たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。
[完結]裏切りの果てに……
青空一夏
恋愛
王都に本邸を構える大商会、アルマード男爵家の一人娘リリアは、父の勧めで王立近衛騎士団から引き抜かれた青年カイルと婚約する。
彼は公爵家の分家筋の出身で、政争で没落したものの、誇り高く優秀な騎士だった。
穏やかで誠実な彼に惹かれていくリリア。
だが、学園の同級生レオンのささやいた一言が、彼女の心を揺らす。
「カイルは優しい人なんだろ? 君が望めば、何でもしてくれるはずさ。
でも、それは――仕事だからだよ。結婚も仕事のうちさ。
だって、雇い主の命令に逆らえないでしょ?
君に好意がなくても、義務でそうするんだ」
その言葉が頭から離れないリリアは、カイルの同僚たちに聞き込み、彼に病気の家族がいると知った。「治療費のために自分と結婚するの?」 そう思い込んだリリアに、父母がそろって事故死するという不幸が襲う。
レオンはリリアを惑わし、孤立させ、莫大な持参金を持って自分の元へ嫁ぐように仕向けるのだった。
だが、待っていたのは愛ではなく、孤独と裏切り。
日差しの差さない部屋に閉じ込められ、心身を衰弱させていくリリア。
「……カイル、助けて……」
そう呟いたとき。動き出したのは、かつて彼女を守ると誓った男――カイル・グランベルだった。そしてリリアも自らここを抜けだし、レオンを懲らしめてやろうと決意するようになり……
今、失われた愛と誇りを取り戻す物語が始まる。
最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。
佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。
幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。
一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。
ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。
彼女の離縁とその波紋
豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる