こんな異世界望んでません!

アオネコさん

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第2章 世界の異変が大変編

馬車での移動は快適ではない

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 俺達討伐隊は昼と夜だけ少し休憩をして、それ以外の時間はずっと移動らしい。
 え、これ、ほとんど馬車の中で過ごすってこと?
 ……お尻耐えられるかな……痛覚軽減って効くよね?
 ちなみに、もしもの時対処出来るように五人ずつ交代で寝るらしい
 俺は最初に寝ることが出来たので、しっかりと睡眠をとる。
 おやすみなさい。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


「……知らない床だ」

皆さんおはようございます。
 討伐依頼に向けての出発してから初めての朝を迎えました。
 昨日移動した時間を含めるとあと二日もかからない感じだろうな。

 ……俺は体を幌に預けて下を向いて寝ていたと思うんだけど、起きた時にカイルさんに体を預けていたっていうのは一体どういうことだ?

「起きたかい?おはようユウト君」

 カイルさんが俺が起きたことに気付いて声をかけてくれた。
 ……きっと俺の体調に気を使って体を預けさせてくれたんだな、うん、そうに違いない。

「お、おはよう……ございます」

 そっとカイルさんから離れると寂しそうな顔をカイルさんがする……が、無視だ無視。
 この人の過保護は少し行き過ぎてるんだから、このくらいが丁度いいんだ。

 俺が起きた時には既に他の人も起きていて、今度は他の五人が寝る番だ。
 もちろんカイルさんも寝るみたいで……え?膝を貸して欲しい?そんなん知らん!1人で寝なさい!

 寂しそうに寝る準備をするカイルさんを無視して、垂れている幌を開けて外を見る。
 すぐさま入ってきた光に少し目を細めるが、すぐに慣れていき周りが見えるようになった。

 リョマが引く馬車は、ずっと続く土の道を進んでいて、右を向くと森が広がっている。
 逆を向くと草原がずっと先まで続いていた。

 前の方を見ると、何台も連なる馬車、その屋根のさらに向こうに山が見える。
 なんかこういう広大な景色と馬車を見るとヨーロッパに来た感じがする。
 ヨーロッパには魔物なんていないけどね。

 顔を馬車の中に戻すとカイルさん達が幌にもたれ掛かり寝ていた。
 この光景見てると、なんか元の世界の電車にいた、サラリーマンの人達が疲れて寝てる光景を思い出すわ。
 着てる服は限りなくファンタジーだけど。

 ファイさんも寝ているらしく、時々頭の上の耳がピクッと動くのがなんとも可愛らしい。
 これが女の子ならもっと可愛いのかも……いないがな!

 なんて考えながら俺は少し座っている位置を移動しようとした。
 すると、ある部分に痛みが走った。
 う、痛い……。

 寝ている間もずっと座っていたせいか、尻に違和感がある。鈍い痛みみたいなのが。
 電車ならこんな痛くならないのに!この世界不便!
 クッションを!俺にクッションを!


 残念ながらクッションは無いので、再生さんと痛覚軽減さんになんとかしてもらおうと思いつつ、皆はよく痛くならないな、と周りを見る。
 馬車にいる冒険者達はみんな慣れているらしく、まったく気にせずに話をしていた。
 やっぱり慣れなの?
 出来れば慣れるよりも痛覚無効とか欲しいなとかなんとか……。

 というか回復魔法あるんだからそれ使えば……ってこれってダメージになるの?
 怪我じゃないし……こういう時に限って使えない!ちくしょう!


 というか暇だ。
 尻の痛みを我慢する以外に何もする事無いな。
 ああ、そういえばちょっと前から疑問に思ってた事あるんだよな。
 それは俺のスキルの習得速度についてだ。

 正直なところ、明らかに早すぎではないか?
 隠密だって、隠れたいと思っただけで獲得したし、再生とか痛覚軽減なら冒険者なら大体持っていても不思議じゃないのに、カイルさんとか持ってなかったし。

 スキル獲得が早くなる原因は二つ考えられる。
 まず一つは、俺が異世界から来てることによって経験値補正が働いている可能性。
 そしてもう一つは何らかのスキル、あるいは称号などによる経験値補正が働いている可能性。
 他にもありそうだけど、俺が考えられるのはこの二つだ。

 ただ、俺が持つスキルや称号を見る限りそんな補正は無いし、今の所可能性が1番高いのは異世界転移の補正によるものって可能性。
 もしそうなら俺は他の人よりもスキルを獲得しやすいということで……これ、チートじゃね?

 という訳で、実験してみようかな。
 うーむ、なにか欲しいスキルは……。
 といっても、多分攻撃系のスキルとか魔法系のスキルは簡単に獲得出来ないと思う。
 なんせ今の所持ってる魔法系は回復魔法だけだし、しかも称号で手に入ったものだし。
 攻撃系のスキルに関してはゼロだし。
 か、悲しい……。

 俺が攻撃系のスキルを持ってないのは置いといて。
 スキルって勝手なイメージだけど、熟練度とかが関係するものなんじゃないかなって思ってる。
 攻撃系のスキルは、特定の攻撃を繰り返しする、とかじゃないと中々獲得出来ないんじゃない?

 魔法系も術式だけならともかく、古代なんちゃら語みたいに、使うために色んな言語が必要なら知識が無い人はまず使えないし、回復魔法は称号と同時に獲得したし自力での習得は難しいと思う。

 耐性系や再生系も攻撃を受け続けないと多分獲得出来ないと思う。
 なら、今の状況で何が獲得出来るかというと、隠密とか補助系のスキルということになる。

 補助系ね……。
 異世界で定番の補助系スキルは演算系とか魔力操作系とかそういうものしかないと思うけど……時間ならあるし色々やってみるか!

 俺はまず体の中に意識を集中させた。
 すると体の中に魔力があるのをぼんやりと感じる。
 これを魔力操作で体全体に行き渡るようにしてみる。
 これをするとなんか強化系とか獲得出来るかもしれないしね!
 そうすればこの尻のダメージも減らせるかも。

 あ、それなら防御系のスキルほしいな……ってあれ?目的が尻の保護になってるような……気のせいか。

 とりあえず魔力操作に、それと同時に演算を頭の中でしてみる。
 素数でも数えてみるか、えーと1……は素数じゃなくて……2……3……5……7……9……じゃなくて11……あれ?えーと……。
 うん!やめよう!出来ないことはするもんじゃないよ!ハハハ!

 というか補助系スキルといえば、鑑定さんを忘れてはならないけど鑑定さんって進化とかするんかね? 
 鑑定しまくったら進化とかするんかね?
 ……決して話を逸らした訳ではないぞ。

 俺は鑑定さんを、あるかないかわからない進化をさせるべく周囲のものを鑑定し始めた。

・・・

 結果鑑定さんは進化しませんでした。
 というか鑑定するものが土とか木ばっかりで他に鑑定するものがない!
 他に何かないかね……リョマ?幌馬車?床?それしかない!

 俺が馬車から顔を出して鑑定出来るものを探していると前の馬車が速度を落としたのがわかった。
 ん?なにかあったの?魔物が出た?

 前の馬車が完全に止まり……というか近過ぎて前の馬車が一台しか見えないんですけど。
 もっと前の馬車達に何か起きててもこっちはわからないんですけど。

 俺達の馬車も止まると前の馬車から冒険者達が降りてきた。
 それを見ていると俺の後ろでモゾモゾと動く気配がして、振り向くとカイルさんたちが起き出してきた。

「タイミングがいいな。ちょうどこれから昼飯だぞ!」

 カールのその言葉で、みんなが少しずつ馬車から降りていく。
 あー昼食の時間だったのね。
 もうそんなに時間が経っていたのか。

 俺もゆっくりと席を立つ。
 ……ああ!尻が解放された…!
 でもまだ違和感がある……これがあと二日ほど続くのか。
 これ、湖に着く頃には尻が壊れてるんじゃ……いやいや!考えないようにしよう。

 今回の昼食のメニューは、ブラウの干し肉と薄くて温かいスープ、草原の風にのせて、です!
 ……つまり昨日の夕食と同じ!!

 ……まぁ、こういう時の食事って、大体予想はついてたけどさ。
 でもスキルとか魔法がある世界だよ?
 もう少し豪華でも……あ、無理ですか……そうですか。
 リョマはそこらの草食ってるけどそれ美味しい?

 ちょっと他の味も求めて特殊空間に保存してる木の実を食べようかなと思ったけど、集団行動してる時はみんな同じ食べ物を食べることが大事とか聞いたことあるし、ここは仕方ない諦めよう。

 そして昼食を食べ終わりみんなが再び馬車に乗り込んだその時。
 俺の魔力察知に反応があった。
 その魔力の流れは俺達の進行方向から流れてきているようでこの間の池で感じたものよりも濃い気がした

 動き出す馬車の中で俺は考える。
 この間のスライムやゴブリンの異常発生や、その上位種の発生はこの魔力のせいだと思う。
 なら今回も同じように……いや、それ以上に危ないかもしれない。

 もしそうだとしたら無事に湖に行くこと自体が危うくなるんじゃないか?
 完全に原因とするにはまだ証拠は少ないがカイルさん達には伝えておこう。

 痛む尻をさすりながら、俺はこの先の戦いに備えるのだった。



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