落ちこぼれβの恋の諦め方

めろめろす

文字の大きさ
19 / 56
第一部

第19話

しおりを挟む
「あのぉ。」

「いいですから早く乗ってください。」

 三目君が無理やり車に乗せようとしてきて困ってしまう。しかも車は三目君のものではなく、桝田君のもののようだ。国産車ではあるが、かなり値段が張る高級車だ。桝田君も「そうですよ、早く乗ってください」と言って急かしてくる。しかし、二人で遊びに来ていた所にお邪魔するわけにもいかない。自分で帰るからと主張してみたものの、三目君からため息をつかれてしまった。

「もう瀬尾さんは帰ってますよ?山口さん、車もないのにここからどうやって家まで戻るつもりなんですか?」

 痛いところをつかれて言葉に窮してしまう。確かに駐車場を見渡してみても、瀬尾君の車は見当たらない。

「山口さんが見つかるまで帰らないって言ってたのを僕がうまく誘導して帰らせたんだから誉めてくださいね。」

「それは助かったけど…。」

 そう思ったのなら乗ってくださいと詰め寄られたので、これはもう言うことを聞くしかないと思い車に乗り込んだ。三目君は助手席に乗るのかと思ったら、自分の隣に座った。それを確認すると、桝田君が車を発進させる。

「あー、お腹減りましたねぇ!何か食べて帰りましょう。」

 三目君が運転席の方に身体をのり出して、桝田君と相談している。さすがにそこまでお邪魔するのは申し訳なさすぎると断ってみたものの、やはり無視されてしまった。

「明日まで休みなんですから、今日は夜更かししても大丈夫ですよね?それとも明日は何か用事があるんですか?」

 ここでスラスラと嘘がつけるようであれば問題ないんだろうが、あいにくそこまで器用ではない。案の定口ごもってしまい、結局中華のお店に連れていかれてしまった。どうやら桝田君の行きつけらしく、顔見知りらしい店員さんに個室へと案内された。少し格式の高そうなお店で、財布に入ってるお金で足りるかどうかハラハラする。しかし、そんな気持ちも運ばれてきた料理を見て吹っ飛んでしまった。大皿にたっぷりと盛られたエビチリや麻婆豆腐、油淋鶏に棒々鶏など、お腹が減っている自分には魅力的すぎるメニューだ。味も最高で、無言でかきこんでいると「山口さん!」と三目君が大きな声を出してきた。

「んぐっ!み、三目君どうかした?」

「どうかしたじゃないですよ!なんでそんなに食事に一生懸命になってるんですか!食事は二の次なんですからね!」

 ぷりぷりと怒っている三目君は大変に可愛らしいが、そんなことをいえばまた怒られてしまうのでここは賢く黙っておいた。

「二の次って、もしかして合コンのこと?」

 嫌な予感を感じながら恐る恐る言うと、三目君は大きく頷いた。

「その通りですよ!山口さんは僕らと一緒に合コンにいくんです!そしてお似合いの相手を見つけましょう!!」

 三目君が以前見たホームページのようなことをいっている。でも合コンなんて行くつもりはない。今まで一度もそんな場にはいったこともないし、何よりこんなおじさんが行ったら盛り下がるに決まっている。

「俺なんかが行ったって迷惑かけるだけだよ。」

「そんなことないです!山口さんは綺麗で優しくて、最高の人です!山口さんは自分のことを過小評価しすぎなんですよ!!!」

 三目君は桝田君が盛ってくれたチャーハンをモリモリと食べながら熱弁してくる。そんなことあるわけないと半笑いで聞いていたが、なんと桝田君も「その通りです」と話にのってきてしまった。

「俺はさっき会ったばっかりですけど、山口さんはすごくお綺麗です。今まで恋人がいなかったなんて信じられません。」

 桝田君がにっこりと微笑んでくれる。若い子にそんな風に言ってもらえるとお世辞でもうれしい。ありがとうと返すと桝田君はほんのり頬を赤く染めた。

「ほら!また無意識にそういうことしますよね!無自覚なんですよ、山口さんは!そこが恐ろしいんですよ!」

 三目君にまた怒られてしまった。


「とにかく人はちゃんとこっちで集めますから。山口さんは来てくれるだけでいいんです。」

 食事も終わり、デザートに入ったけれども三目君の熱弁はまだ続いていた。どうやら、自分が合コンに行くのは決定事項らしく、あとは誰が来るかの問題のようだ。

「いいですか?この合コンでは山口さんは気を遣ったりは一切しなくていいです。ご自分の好きなようにやってください。話したくなければずっと無言でもいいですし、ご飯だけ食べたければそれでもいいです。ただ、合コンの場に来てくれればいいですから!」

 可愛い部下にそこまで言われると、さすがに断るのは可哀そうになる。ただ座っているだけでいいのであればという条件付きでしぶしぶ頷いた。三目君はやったー!と声をあげた後、すぐに桝田君に向き直った。

「お相手側は僕が手配するから、誠也はお店の予約をお願い。」

「分かった。」

 どうやら三目君がお相手を探してくれるらしい。三目君ならどんな人でも呼び放題だとは思うが、どんな人たちが相手になるのか気になる。

「三目君、相手ってどんな人たちを予定してるの?」

「それは当日まで秘密です。ただ、極上の人たちを連れてくるのは間違いないのでご心配なく!αもΩもβも選りどりみどりですよ!!」

 にっこりと笑って親指を立てる三目君は頼もしい。瀬尾君のことを考えると心が痛むが、彼のことは忘れて新しく好きな人を探すのも良いことかもしれない。せっかく三目君がセッティングしてくれたんだから楽しもう。



(そう思ってたのに…。)


 三目君と約束して1週間後。ほんとにこんなところでやるの?というほどの高級ホテルに引っ張られてきた自分は、おそらくVIPしか入れないであろう豪華すぎる個室に通された。こちら側の面子は自分と三目君と桝田君。
 確かに三目君は極上の男を用意するといっていたし、間違いなく向こう側には三人とも極上の男が座っている。しかし、そのうちの一人がまったく想定していない人物だ。


「今日はよろしくお願いしますね!」

 にっこりと笑って挨拶をする三目君に会釈した後、無表情で自分をじっと見つめてくるのはあろうことか、瀬尾君だったのだ。


しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

孤独なライオンは運命を見つける

朝顔
BL
9/1番外編追加しました。 自分はアルファであると信じて生きてきたのに、発情したことがキッカケで、オメガだったと発覚してしまった。 アルファだと思っていた時も、孤独で苦しかったのに、オメガになったことで俺の人生はより厳しいものになった。 そんな時、俺は運命と呼べる相手と出会うことになる。 ※※※※※ 高校生×高校生で、オメガバースの設定をお借りしています。 設定はよくあるものだと思いますが、おかしなところがあったら、すみません。 オメガバースについて詳しい説明などは省略しています。 シリアスあり、ラブコメもあり、淡くて青い恋愛がメインのお話です。 ※重複投稿 全十話完結済み

【完結】変態αのフェロモン観測記録

加賀ユカリ
BL
欠陥Ωが使用済みマスクを落としたら、変態αにフェロモン値を実況されるようになった話 大学生の天橋瑞樹(あまはし みずき)は、帰り道でうっかり使用済みマスクを落としてしまう。拾ったのは、モデルのようなスタイルと整った顔立ちを持つ青年──神代慧(かみしろ けい)。だが、彼はただのαではなかった。 「このマスクは僕の宝物です」そう言って笑う慧は、瑞樹のマスクを返さないどころか、初対面で「君は僕の運命の番だ」と宣言してくる。 だが瑞樹は、自分が“欠陥Ω”──フェロモン値が極端に低い存在であることを知っていた。 そして、計測器と共に瑞樹のフェロモン数値を実況する“変態α”との、奇妙で騒がしい日々が始まった。 そんなある日。 瑞樹に人生で初めてのヒートが訪れる── 攻め:神代慧(かみしろ けい)。α。瑞樹のマスクを返さないヤバい男。 受け:天橋瑞樹(あまはし みずき)。欠陥Ω。 ・オメガバースの独自設定があります ・性描写のある話には※を付けています ・最終話まで執筆済みです。(全35話) ・19時更新 ・ムーンライトノベルズにも掲載しています ※過去作『番になれなくても』の主人公(天橋和樹)の兄の話です。本作品は『番になれなくても』の本編より前の時間軸になります。それぞれの話は独立しているので、読んでいなくても大丈夫です 【完結】番になれなくても https://www.alphapolis.co.jp/novel/166551580/588945232

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

ちゃんちゃら

三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…? 夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。 ビター色の強いオメガバースラブロマンス。

起きたらオメガバースの世界になっていました

さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。 しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。

俺は完璧な君の唯一の欠点

一寸光陰
BL
進藤海斗は完璧だ。端正な顔立ち、優秀な頭脳、抜群の運動神経。皆から好かれ、敬わられている彼は性格も真っ直ぐだ。 そんな彼にも、唯一の欠点がある。 それは、平凡な俺に依存している事。 平凡な受けがスパダリ攻めに囲われて逃げられなくなっちゃうお話です。

手に入らないモノと満たされる愛

小池 月
BL
 櫻井斗真は喘息持ちの高校二年生。健康でスポーツが得意な弟と両親の四人家族。不健康な斗真は徐々に家族の中に自分の居場所がなくなっていく。  ある日、登校中に喘息発作で倒れる斗真。そんな斗真を高校三年の小掠隆介が助ける。隆介は小児科医院の息子。喘息発作の治療が必要な斗真は隆介の家で静養することとなる。斗真は隆介の優しさを素直に受け入れられず、自分と比べて惨めな思いに陥っていく。そんな斗真の気持ちを全て受け止めて寄り添う隆介と、徐々に距離を縮める斗真。  斗真に安心できる場所が出来たかと思われた頃、斗真が襲われる事件が起きて……。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

処理中です...