落ちこぼれβの恋の諦め方

めろめろす

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第一部

第31話

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 懇願してくる瀬尾君の頭を撫でながら考える。まさか彼にそんな事情があるとは知らなかった。同情の余地は少しあるかもしれないが、だからといって彼に傷つけられた事実は消えないし、彼の発言の真意も聞けていない。

「君の気持ちは分かったよ…。でもそれを聞いたからってはいそうですかと君のつがいにはなれない。それに、俺がΩになるって話もまだ理解ができない。」

 彼を刺激しないようにゆっくりと話す。瀬尾君は涙を貯めた瞳でこちらをまっすぐに見てきた。

「それも説明させてください。…俺はαの中でも特別なんです。αの中には、さらに濃いαの血を持つ者もいます。俺の父の一族がそうでした。稀に、αさえも支配できるような力を持つ人間が生まれることがあります。…それが俺です。」

「瀬尾君が…?」

「そうです。αの上位種と言われていますが、人数が少ないために研究もあまり進んでいません。なにより上位種は誰の言うことも聞かないので、研究にも協力しません。世界に10人いるかいないかのレベルなんです。」

「そんな、すごい人たちなんだね…。強い力って?」

 尋ねると瀬尾君は顔を寄せてくる。至近距離で見つめられるのが恥ずかしくて目をそらそうとするも「ダメ」と瀬尾君に両手で顔を固定された。

『俺を見て。』

 瀬尾君の瞳が黄金色に輝き始めた。

 彼の言葉が、なぜだかいつもと違うように感じられる。まるで脳に直接語りかけられているような感覚。声を聞くだけで屈服させられるような威圧感。そして身体の内側から溢れ出しそうになる震えるような快感。


「あっ……んんっ、…ひぃ!」

「俺はα、β、Ωを問わず屈服させることができます。そして、相手を強制的に発情させることもできる。声だけでイカせることだって簡単なんですよ、…幸尚。」

「やっ!だめぇ…、な、なにこれぇ…!」

 頭に媚薬を直接流し込まれているような快感。今にもイってしまいそうになり、慌てて自分の陰茎をギュウッと握り込む。しかし、そのせいでさらに身体に快感が走って情けない悲鳴を上げてしまった。


「そして、俺の力の最大の特徴は…。」

「あっ!ひぃあ!!…なっなに!?だめぇ!そこ、触っちゃやだぁ!」

「一人だけ、たった一人だけバースを強制的に変えられるんですよ。」

 彼の大きな手が自分の下腹部に当てられたかと思えば、小刻みに振動を与えられた。するとそこから暴力的な程の気持ち良さが溢れだし身体を支配した。まるで、そこにある子宮を揺さぶられているようだ。

「会社であなたを初めて見た時からずっとあなたのことだけ考えてきた。βだって聞いても俺にはこの力があるから関係ない。でも、バースを変えるのには時間がかかるんです。俺のフェロモンをあなたの身体に少しずつ定着させていって、身体の組織を作り替える。人によりますが、最低でも2、3年かかるんですよ。」

「あぁん…ひぃ……んっ!んっ!そこっ、だめ、せお…く…ん!」 

「あぁ、可愛い。幸尚さんの感じてる顔見てるだけで俺、イッちゃいそう。」

「や、やだぁ!み、みるなぁ!」

『ダメだ、見せろ幸尚。』

「ひぃぃん!」

口から溢れる涎も拭えない。そんな自分を見られているのが恥ずかしくて、うつむこうとするも、またもやあの不思議な声に命令されて行動を制限されてしまった。

「あともう少しだったのに。あともう少しであなたの子宮が完成して完璧なΩになるところだったんですよ。でもそれと同時にあなたのフェロモンに他のやつらが気付くようになってきた。あなたに露骨にアプローチをかけるような奴まで現れ始めた。だからあなたを一旦遠ざけようとしたんです。営業部なんてαの巣窟ですから。いつあなたが襲われるか分かったもんじゃなかった。」

「あっ、…あっ、あひぃ…。じゃ、じゃあ、営業部から…追い出す…ために、あんな…ことを?」

「えぇ、そうです。他の部署に回されるはずだったのに、あなたは会社からいなくなってしまった。絶望しましたよ。完全なΩになっていなかったせいで、あなたのフェロモンが弱く、匂いで追うことはできなかった。それに、会社も絶対にあなたがどこに行ったか教えてくれませんでした。」

「や、やだ、だめぁ!その匂いだめっ!」

 瀬尾君の身体から濃いフェロモンが溢れ出す。ただでさえ発情していた身体はさらに高められ追い詰められた状態になった。

「…分かってた。あなたがΩになることに同意することなんてないって。βでも誇りをもって仕事をしていて、誰よりも努力するあなたを、俺は近くで見ていたから。そんなあなただからもっともっと好きになった。…でもβなあなたじゃ不安なんだ。恨まれたっていい。あなたを、俺は…。」

「せ…お、くん…?」


 瀬尾君の顔が近づいてきた。



「なに僕抜きで盛り上がってんのさ。」

「うぐっ!」

 瀬尾君の整った顔面に、ベシャと誰かの手が押し当てられる。痛かったのか瀬尾君の動きが止まると同時に後ろから抱き締められた。

「あっ、ひいっ!」

 「ん?なに可愛い声出してるんですか、山口さん?」

 発情状態の自分に姿を見た三目君は最初は驚いていたようだが、ニヤリと笑った。


「へぇー、2人で気持ちいいことしてたんだ?…俺抜きでやろうなんて…許さないよ?」

「えっ?あ、嘘!やだぁ!!」

「三目…お前…。」

 三目君の身体から濃厚な発情フェロモンが溢れ出す。三目君の頬は色っぽく赤く染まり、息も荒くなった。しかし、その瞳は雄のままだ。

 「好きな人がこーんな状態なのに、優しく抱き締めるなんて出来るわけないっしょ?瀬尾、山口さんはお前のもんじゃない。…でも、一緒に気持ちよくさせるのは許してやるよ。」


「やっ!やだぁ、なんで、!!」


「俺を忘れてたお仕置きですよ。」


 三目君が魔王のように見えた。

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