落ちこぼれβの恋の諦め方

めろめろす

文字の大きさ
50 / 56
第二部

第14話

しおりを挟む
 腰に重い蹴りを喰らった男は悲鳴をあげてその場に崩れ落ちる。その前に瀬尾君が小鳥遊君を抱き止めて避難させてくれた。しかし小鳥遊くんのフェロモンを浴びて呼吸が荒くなっており、苦しんでいるのが分かる。

「おら!くそ、このアホ!無能!変態!ボケー!」

「ぎゃ!ちょ、やめ!君、な、何をしてるのか分かって!ひぎゃあ!」

 男の腰を何度も蹴りながら電話を取り出して、押し慣れた番号にかける。彼は1回目のコールですぐに出てくれた。

『もしもし?どうしたんですか、幸尚さん?』

「小鳥遊君がヒートを起こしてる。今からいう場所にすぐ来れるか?あとαとΩの抑制剤をそれぞれ買ってきてくれるか?」

『っ!大丈夫です。瀬尾もいますよね?すぐに行きますのでなんとか耐えるようにあの馬鹿に言っといてください。』

 三目君の電話を切った後、すぐにまた別の人へと電話をかける。

「誰に電話をしてる!お前みたいな平凡なβがαであるこの俺にぃ!!ひぎぃ!」

「うるさい!黙っとけ!」

「ぎゃあー!」

 四つん這いになっていた男を足で蹴って仰向けに返し、股間の真下に勢いよく足を振り下ろしてやった。股間を潰される恐怖からか、男は固まってしまっている。そして今度の相手は3コール目で出てくれた。

『もしもし?久しぶりだなぁ。どうかしたのか?』

「リチャード。君のところの会社の男がうちの大事な大事な社員を襲ったんだ。いやぁ、とんでもない社員を雇っているんだね、君。」

『なんだと!お前、私の会社と取引のあるところで働いているのか!どうして先に言わない!っと、まずはその問題を解決しよう。その男の名前は?』

「おい、名前!」

 そういえばこのクズ男の名前も知らなかった。

「だ、誰が!」

「ちっ!山本さんの次の担当者だよ。名前も言えない無能みたいだね。」

「なんだと!!」

「うるさい。リチャードの声が聞こえないだろ。」

「ひぃ!」

 また股関スレスレに足を下ろしてやるとキュッと内股になって大人しくなった。

『…今確認させている。事実だとすれば本当にすまない。』

「事実だよ。あと山本さん、閑職に飛ばされたって本当?」

『何を言ってるんだ。彼は優秀だから海外支社に転勤になったんだ。帰ってきたら部長だぞ?』

「嘘つきやがったならお前!」

「ひぃ!!」

 大きな声で怒鳴りつけると、身を縮めて震えている。なんて情けない奴だ。

『…確認した。そいつの名前は野々村だ。私が海外にいる間に好き勝手やっていたみたいだ。本当にすまなかった。今から部下をそちらに向かわせる。』

「よろしくお願いします。」

『謝罪は改めてさせてもう。幸尚の会社の社員にも謝っておいてくれるかな?』

「海外のお土産楽しみにしておきますよ。」

『もちろんだ。…全く営業として働いているなら私の会社に来れば良かったんだ!後日ちゃんと説明してもらうぞ!ではまた。』

 短く挨拶して電話を切る。野々村は状況が分かっていないのか呆けた顔でこちらを見ていた。

「全部嘘だったみたいだな。優秀な社長が海外にいる間に無能な役員と結託したか?残念だったな。お前よりも俺の方があんたんところの社長とは長いんだよ。」

「ひいっ!」

 そういうと同時に店の入り口の扉が開き、スーツ姿の男たちが数名入ってくる。

「お久しぶりです、山口さん。お話したいのは山々ですが、今日はこのアホを回収しなくてはいけないので。また社長と会社にお伺いします。」

 店にやってきたのは社長の秘書である松戸さん。シルバーフレームの眼鏡が似合う超有能秘書であり、リチャードの幼馴染だ。

「こちらこそ素早い対応ありがとうございます。またゆっくりお話ししましょう。」

 松戸さんと野々村を見送って店の中を振り返る。そこにはヒートで苦しむ小鳥遊君と、そのフェロモンに苦しむ瀬尾君と四宮部長がいる。アルファの2人は自分の腕を噛んで、何とか小鳥遊君を犯そうとする衝動を抑えていた。店の中にいる人たちも小鳥遊くんのフェロモンに当てられて息を荒くしている。

「っ!山口さん!」

 素晴らしいタイミングで三目君が店に飛び込んでくる。

「よし!四宮部長、小鳥遊君は俺に任せてください。部長たちにはこの店の対応をお任せしていいですか?」

「っ、わかった。」

 部長に三目君に買ってきてもらった抑制剤を渡して、瀬尾君と小鳥遊君に歩み寄る。

「ぐぅっ、ゆ、幸尚さ、ん、こないで!」

「瀬尾君…。」

 瀬尾君はぐったりとしている小鳥遊君の体を抱え込んでフーフーと荒い息を吐いている。αとしての本能が彼にΩを守らせているのだ。

「おれは…ぐぅ、ゆき、なおさんが、すきなのに、くそ、こんな!」

 今にも小鳥遊君のうなじを噛みたそうに口を開け閉めしている。

 そんな瀬尾君の顔を無理やり上げさせる。




「君は俺のもんだろ。俺だけ見とけ。」

「んうっ!!!」

 その唇に噛みついてやった。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

孤独なライオンは運命を見つける

朝顔
BL
9/1番外編追加しました。 自分はアルファであると信じて生きてきたのに、発情したことがキッカケで、オメガだったと発覚してしまった。 アルファだと思っていた時も、孤独で苦しかったのに、オメガになったことで俺の人生はより厳しいものになった。 そんな時、俺は運命と呼べる相手と出会うことになる。 ※※※※※ 高校生×高校生で、オメガバースの設定をお借りしています。 設定はよくあるものだと思いますが、おかしなところがあったら、すみません。 オメガバースについて詳しい説明などは省略しています。 シリアスあり、ラブコメもあり、淡くて青い恋愛がメインのお話です。 ※重複投稿 全十話完結済み

【完結】変態αのフェロモン観測記録

加賀ユカリ
BL
欠陥Ωが使用済みマスクを落としたら、変態αにフェロモン値を実況されるようになった話 大学生の天橋瑞樹(あまはし みずき)は、帰り道でうっかり使用済みマスクを落としてしまう。拾ったのは、モデルのようなスタイルと整った顔立ちを持つ青年──神代慧(かみしろ けい)。だが、彼はただのαではなかった。 「このマスクは僕の宝物です」そう言って笑う慧は、瑞樹のマスクを返さないどころか、初対面で「君は僕の運命の番だ」と宣言してくる。 だが瑞樹は、自分が“欠陥Ω”──フェロモン値が極端に低い存在であることを知っていた。 そして、計測器と共に瑞樹のフェロモン数値を実況する“変態α”との、奇妙で騒がしい日々が始まった。 そんなある日。 瑞樹に人生で初めてのヒートが訪れる── 攻め:神代慧(かみしろ けい)。α。瑞樹のマスクを返さないヤバい男。 受け:天橋瑞樹(あまはし みずき)。欠陥Ω。 ・オメガバースの独自設定があります ・性描写のある話には※を付けています ・最終話まで執筆済みです。(全35話) ・19時更新 ・ムーンライトノベルズにも掲載しています ※過去作『番になれなくても』の主人公(天橋和樹)の兄の話です。本作品は『番になれなくても』の本編より前の時間軸になります。それぞれの話は独立しているので、読んでいなくても大丈夫です 【完結】番になれなくても https://www.alphapolis.co.jp/novel/166551580/588945232

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

ちゃんちゃら

三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…? 夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。 ビター色の強いオメガバースラブロマンス。

起きたらオメガバースの世界になっていました

さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。 しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。

俺は完璧な君の唯一の欠点

一寸光陰
BL
進藤海斗は完璧だ。端正な顔立ち、優秀な頭脳、抜群の運動神経。皆から好かれ、敬わられている彼は性格も真っ直ぐだ。 そんな彼にも、唯一の欠点がある。 それは、平凡な俺に依存している事。 平凡な受けがスパダリ攻めに囲われて逃げられなくなっちゃうお話です。

手に入らないモノと満たされる愛

小池 月
BL
 櫻井斗真は喘息持ちの高校二年生。健康でスポーツが得意な弟と両親の四人家族。不健康な斗真は徐々に家族の中に自分の居場所がなくなっていく。  ある日、登校中に喘息発作で倒れる斗真。そんな斗真を高校三年の小掠隆介が助ける。隆介は小児科医院の息子。喘息発作の治療が必要な斗真は隆介の家で静養することとなる。斗真は隆介の優しさを素直に受け入れられず、自分と比べて惨めな思いに陥っていく。そんな斗真の気持ちを全て受け止めて寄り添う隆介と、徐々に距離を縮める斗真。  斗真に安心できる場所が出来たかと思われた頃、斗真が襲われる事件が起きて……。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

処理中です...