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キャベツ帽子~ヨーロッパ版おばあちゃんの知恵~
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「ごきげんよう!グレイス様」
エマの二度目の来訪は、初来院から一ヶ月も待つことはなかった。診療所を訪れた彼女の表情は晴れ晴れとしており、実家での生活が上手くいっていることを物語っていた。
「あら、エマ、今日はどうなさったの?」
「娘がまた熱を出しましてね。お礼も兼ねて診察していただこうと参りました。勿論、お代はお支払いします」
エマがそう言うと、彼女の後ろからずいッと赤ちゃんを抱えた女性が現れた。おそらく乳母かなにかなのだろう。改めて彼女の背後を確認すると、さらに使用人らしき青年も立っている。赤毛が特徴的なイケメン……どこかで見たこともあるようなないような。
「もう午前の受付は終っているから、二階に行っていいよ」
再会を喜び合う私達の声に、診察室からキースさんが顔をのぞかせる。時計を見れば確かに一時を過ぎており、私がいなくてもキースさんが番号札を呼べば問題なく診察はできる。遠慮なく二階でエマ達を出迎えさえてもらうことにした。
「お熱はあるのかしら……」
改めて乳母の腕の中にいる赤ちゃんを見てみると、少し顔が赤くグッタリとしているが、緊急を要するほど体調が悪いというわけではなさそうだ。そんな赤ちゃんは最初に診療所を訪れた時とは打って変わり、レースがふんだんに使われた服に身を包んでいた。
「はい、昨夜からなかなか下がらなくて。タオルを濡らして冷やしてはいるんですけど」
乳母らしき人物がエマの代わりにそう答える。おそらく看病も彼女が主体となって行っているのだろう。「夜泣きに悩まされている」と愚痴を漏らしていたエマは、今は睡眠不足とは無縁の肌つやをしている。
「それでしたら、これがオススメですわ」
私は急いで台所から一枚の大きなキャベツの葉を持ってきた。
「これを飲ますんですか?」
エマは恐る恐るといった表情でキャベツを見る。
「いえいえ、これを頭にかぶせておくんですの。解熱効果があるって昔から言われていますわ」
「初耳ですが……」
乳母は少し怪訝そうな顔をするものの、雇い主の娘の友人である私の言葉に渋々ながら従ってくれた。
「医学的には特に証明されていることではないんですけどね、ひんやりとして気持ちいいんですよ」
そう言って私が赤ちゃんの頬をなでると、心なしかキャベツの葉をかぶった赤ちゃんは穏やかな表情になったような気もする。
「ふふ。気持ちよさそう」
エマの表情は穏やかな母親そのものだ。
「ご両親とは和解なされたの?」
「えぇ……先生に診ていただいた後、その足で実家に帰りました。両親は本当に心配していたみたいで、温かく迎えてくれましたわ」
おそらく最初は怒り心頭でも、時間が経つにつれ心配する気持ちが大半を占めるに至ったのだろう。そして今は孫娘を目に入れても痛くない程溺愛しているに違いない。
「グレイス様にお会いしなければ、私達親子はどうなっていたことか……。本当にありがとうございます。そうそう、ディラン、あれをこっちへお願い」
エマの指示に従い、ディランは文庫本程度の箱をテーブルの上へ置いた。
「父からです。本当につまらないものですが、よかったらお使いになってください」
中身は何か分からなかったが、私は笑顔で受け取る。
「ご丁寧にありがとうございます。こんなことしていただかなくてもよかったのに。あ、そうそう。よろしければこれをお持ちになって」
私は再び台所に戻り、小瓶に分けた梅肉エキスを彼女の前に差し出した。
「これは?」
「梅の果肉で作った栄養食品ですの。一日にティースプーン三分の一杯程度を目安に食べていただければ健康にいいんですのよ」
「そのまま食べるんですか?」
「ちょっと酸っぱいから、お茶に混ぜたりするといいかもしれませんわ。疲れている時、二日酔い、腹痛、食欲がない時にもお勧めでしてよ」
とりあえず体調不良の時にはおばあちゃんが何時も梅干しか梅肉エキスを食べさせられていた記憶がある。
「あと頭痛や腰痛、肩こりなどに、梅肉エキスを少量の水で溶いて、ガーゼに塗り付けて患部に貼って湿布をすると痛みが治りますわ」
「そんな効果もあるんですか?!」
私の説明に驚きの声を上げたのはエマではなく、ディランだった。
「梅には鎮静作用や血行促進作用があるっていわれていますので……」
「失礼。ちょっと拝見してもよろしいでしょうか」
そう言うとディランは私達のテーブルまで近づき、小瓶を持ち上げマジマジと見つめる。近くで見るとそのまつ毛の長さには驚かされる……って……あれ……このイケメン、『どきプリ2』のキャラクタじゃない?
「もしかして元第三王子のディラン様?!」
私の質問にその場にいた全員が凍り付いたのは言うまでもない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【参考文献】
和味:梅肉エキスの疑問集 (最終閲覧日:2019年5月9日)
https://minabe.net/ume/ekis_kounou.html#kounou
【注意】
今回紹介した『キャベツ帽子』はあくまでも民間療法です。
ヨーロッパで古くから伝わる『おばあちゃんの知恵』です。経験に基づいた知識であるため体質に合わない場合があります。体調に異変を感じた場合は、直ぐに使用を中止してください。
登場人物が一定の効果を感じていると表現しておりますが、個人の感想です。必ずしも効果を保証するものではありません。
【御礼】
多数のお気に入り登録頂きありがとうございます。お陰様でHOTランキング10位にランクインできました。
エマの二度目の来訪は、初来院から一ヶ月も待つことはなかった。診療所を訪れた彼女の表情は晴れ晴れとしており、実家での生活が上手くいっていることを物語っていた。
「あら、エマ、今日はどうなさったの?」
「娘がまた熱を出しましてね。お礼も兼ねて診察していただこうと参りました。勿論、お代はお支払いします」
エマがそう言うと、彼女の後ろからずいッと赤ちゃんを抱えた女性が現れた。おそらく乳母かなにかなのだろう。改めて彼女の背後を確認すると、さらに使用人らしき青年も立っている。赤毛が特徴的なイケメン……どこかで見たこともあるようなないような。
「もう午前の受付は終っているから、二階に行っていいよ」
再会を喜び合う私達の声に、診察室からキースさんが顔をのぞかせる。時計を見れば確かに一時を過ぎており、私がいなくてもキースさんが番号札を呼べば問題なく診察はできる。遠慮なく二階でエマ達を出迎えさえてもらうことにした。
「お熱はあるのかしら……」
改めて乳母の腕の中にいる赤ちゃんを見てみると、少し顔が赤くグッタリとしているが、緊急を要するほど体調が悪いというわけではなさそうだ。そんな赤ちゃんは最初に診療所を訪れた時とは打って変わり、レースがふんだんに使われた服に身を包んでいた。
「はい、昨夜からなかなか下がらなくて。タオルを濡らして冷やしてはいるんですけど」
乳母らしき人物がエマの代わりにそう答える。おそらく看病も彼女が主体となって行っているのだろう。「夜泣きに悩まされている」と愚痴を漏らしていたエマは、今は睡眠不足とは無縁の肌つやをしている。
「それでしたら、これがオススメですわ」
私は急いで台所から一枚の大きなキャベツの葉を持ってきた。
「これを飲ますんですか?」
エマは恐る恐るといった表情でキャベツを見る。
「いえいえ、これを頭にかぶせておくんですの。解熱効果があるって昔から言われていますわ」
「初耳ですが……」
乳母は少し怪訝そうな顔をするものの、雇い主の娘の友人である私の言葉に渋々ながら従ってくれた。
「医学的には特に証明されていることではないんですけどね、ひんやりとして気持ちいいんですよ」
そう言って私が赤ちゃんの頬をなでると、心なしかキャベツの葉をかぶった赤ちゃんは穏やかな表情になったような気もする。
「ふふ。気持ちよさそう」
エマの表情は穏やかな母親そのものだ。
「ご両親とは和解なされたの?」
「えぇ……先生に診ていただいた後、その足で実家に帰りました。両親は本当に心配していたみたいで、温かく迎えてくれましたわ」
おそらく最初は怒り心頭でも、時間が経つにつれ心配する気持ちが大半を占めるに至ったのだろう。そして今は孫娘を目に入れても痛くない程溺愛しているに違いない。
「グレイス様にお会いしなければ、私達親子はどうなっていたことか……。本当にありがとうございます。そうそう、ディラン、あれをこっちへお願い」
エマの指示に従い、ディランは文庫本程度の箱をテーブルの上へ置いた。
「父からです。本当につまらないものですが、よかったらお使いになってください」
中身は何か分からなかったが、私は笑顔で受け取る。
「ご丁寧にありがとうございます。こんなことしていただかなくてもよかったのに。あ、そうそう。よろしければこれをお持ちになって」
私は再び台所に戻り、小瓶に分けた梅肉エキスを彼女の前に差し出した。
「これは?」
「梅の果肉で作った栄養食品ですの。一日にティースプーン三分の一杯程度を目安に食べていただければ健康にいいんですのよ」
「そのまま食べるんですか?」
「ちょっと酸っぱいから、お茶に混ぜたりするといいかもしれませんわ。疲れている時、二日酔い、腹痛、食欲がない時にもお勧めでしてよ」
とりあえず体調不良の時にはおばあちゃんが何時も梅干しか梅肉エキスを食べさせられていた記憶がある。
「あと頭痛や腰痛、肩こりなどに、梅肉エキスを少量の水で溶いて、ガーゼに塗り付けて患部に貼って湿布をすると痛みが治りますわ」
「そんな効果もあるんですか?!」
私の説明に驚きの声を上げたのはエマではなく、ディランだった。
「梅には鎮静作用や血行促進作用があるっていわれていますので……」
「失礼。ちょっと拝見してもよろしいでしょうか」
そう言うとディランは私達のテーブルまで近づき、小瓶を持ち上げマジマジと見つめる。近くで見るとそのまつ毛の長さには驚かされる……って……あれ……このイケメン、『どきプリ2』のキャラクタじゃない?
「もしかして元第三王子のディラン様?!」
私の質問にその場にいた全員が凍り付いたのは言うまでもない。
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【参考文献】
和味:梅肉エキスの疑問集 (最終閲覧日:2019年5月9日)
https://minabe.net/ume/ekis_kounou.html#kounou
【注意】
今回紹介した『キャベツ帽子』はあくまでも民間療法です。
ヨーロッパで古くから伝わる『おばあちゃんの知恵』です。経験に基づいた知識であるため体質に合わない場合があります。体調に異変を感じた場合は、直ぐに使用を中止してください。
登場人物が一定の効果を感じていると表現しておりますが、個人の感想です。必ずしも効果を保証するものではありません。
【御礼】
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