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神の祝福が降る場所でスラム街の大聖女は破壊する
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「初めて参りましたけど、本当に広いんですのね」
私は神官学校の規模の大きさに驚いた。エントランスだけで大きな体育館一つ分はあるだろう。
「私達が通っていました学園は、一部の貴族を集めた学校でしたからね。全国から生徒を集める神官学校の方が大規模になるのは当然ですわ」
「ジゼル様も学園を卒業されていましたの?」
神官の上位職である『聖女』として働かれているので、てっきり神官学校の卒業生だと思っていた。
「学生の時は王族でしたからね」
寂しそうに微笑む彼女の横顔を見て、失言だったことに気付かされる。ジゼル様が学園を卒業する直前に現国王が即位された。そのため通常ならば卒業後、直ぐに結婚されるはずだったが婚約は破棄され、修道女として身分を隠して働くことになってしまったのだ。
「あれが試験会場ですわ」
ジゼル様が指示した先には長蛇の列に並んでいる学生達の姿が見えた。
「最初の六年間は私達が通っていた学園と同様、一般教養を学びます。後半六年間は魔法の勉強が始まるのですが、大きく分けて神官になれる『神学部』と医者になれる『医学部』に分かれるんですの」
確かに医療魔法だけでなく、一般の神官としての勉強をしなければいけないのは大変だ。
「ただ医者になるためには魔力量が一定量必要になりますの」
キースさんを見ていても分かるが、回復魔法を使用すると大量の魔力を消費する。人によって魔力量は異なり、中には全く魔力を有しない人間も存在する。
「入学試験の時にも魔力量の測定は行いますけど、改めて試験として測定します。それがこの試験でしてよ」
そう言われて改めて生徒が並ぶ長蛇の列を見てみると、先頭の生徒は水晶のような球体の物体に手をのせて難しい顔をしている。
「ここだけの話、キースはギリギリで医学部に進級できましたの」
懐かしそうにジゼル様はクスクスと笑う。
「キース様が?」
「そう。本当にギリギリでしたの。学校側は神官になるように勧められたんですけど、『治したい子がいる』って言い張って――」
何気ない言葉だが、その言葉がザワリと私の心を逆なでる。彼の人生を振り返ると、直ぐに『心に決めた人』の影がちらつく。こんなに幼い時から彼の心を占めていたのか……と愕然とさせられる。
「そこで叔父様が『成長期だから伸びしろはある』ってご推薦なさって、ようやく学校側も了承されましてね。でも、叔父様の仰ることは正解でしたわ。その後、順調に成長されて今は立派なお医者様ですもの」
私もこの長蛇の列に並ぶのかな――と思っていたが、ジゼル様はその列を横目にさらに建物の奥へと進む。
「試験は受けなくていいのでしょうか」
「あら、あの行列に並ばれるおつもりでしたの?私は嫌ですわ」
ジゼル様は呆れたように私を見つめる。
「教師と水晶があれば簡単に判定できるんですもの。別室を用意させましたわ」
貴族らしいやり方だ。ここ数ヶ月、スラム街に住んでいただけで、すっかり感覚は前世の貧乏女子大生に戻っていたことに気付かされる。
「ジゼル様、ゴドウィン公爵令嬢、本日はお忙しい中、足を運んでくださりありがとうございます」
別室受験会場として案内された部屋には明らかに『教師』と言うには威厳があふれている初老の老人が待っていた。
「私、校長のウェイアムと申します」
校長は仰々しく膝をついて挨拶をする。公爵令嬢時代は王族以外の人間には、こうして膝をついて挨拶されていたことを思い出す。
「はじめまして。グレイスと申します。本日はご無理を申し上げ申し訳ございません」
「いえいえ、ゴドウィン公爵のお嬢様が医術に興味を持って下さったのですから、当然のことでございます。ささ早速ですが、お試しくださいませ」
校長は私を水晶の前へと案内する。
「水晶に手を当てながら、回復魔法の基本である手消毒の魔法を唱えてくださいませ」
そう言って渡された呪文が書かれた紙を手に取り、ゆっくりと唱えてみる。手消毒だけならば、魔法を使えば誰でも唱えられるのか……と思っていると、突然目の前の水晶が光り
パリーンッ!
という音と共に粉々に飛び散った。
「も、申し訳ございません!!!!」
私が謝罪する前に校長は再び膝をついて私に平身低頭謝罪をする。
「先ほど、魔力が特別多い生徒がおりまして……。その者が使った水晶を持ってきてしまったようでございます」
生徒の手から出た魔力は大きすぎると時に水晶を割ってしまうことがあるという。その衝撃がたまった状態で、私が魔法を使ったため割れてしまったのだろう。生徒一人一人の衝撃は大した量でなくても数十年も同じ物を使い続けると、時々このような現象が起こるのだとか。
「ただグレイス様が魔力をお持ちなのは判明いたしましたので、ぜひご入学下さいませ。お待ちしております」
「グレイス様、よかったですわね」
ジゼル様は合格するのが当たり前というように、微笑んだ。おそらく寄付金などを目当てに私が入学することは最初から決まっていたのだろう。確かに神官学校に入学したと聞けば、父のことだ総合病院の一つや二つ建ててしまうに違いない。
――――
「バカ者!!!! なぜ新品の水晶を用意しなかったのじゃ!!」
グレイスとジゼルの姿が見えなくなると校長は近くにいた若い神官を怒鳴り散らした。
「これでは寄付金目当てというのが、あからさまではないか!!」
「いえ、新しいものを用意したのですが……」
校長の怒りに慣れているのか、神官は怒りで顔を真っ赤にしている彼を無視して資料を確認する。
「やっぱり!305番の水晶ですよ。これ、さっき出したばっかりなんです」
「そんなわけあるか!! 他の生徒よりもずば抜けて魔力が多かったあの生徒ですら、ヒビしか入れられなかったではないか」
「そうなんですよ。ヒビが入ったら割れるのも時間の問題なので、捨てたんです。もう百年も使っていますしね。それが35番の水晶です」
「何かの記録ミスじゃろ!! あぁ~~、恥をかいたわ。片づけておくように!!」
校長は投げ捨てるように、そう言うと部屋から大股で出て行く。それを見送りながら若い神官は聞こえないようにため息をついた。最近、何を言っても耳をかさなくなったな――と小さく落胆していた。
「でも新品の水晶を粉々にするだけの魔力なんて、『大聖女』でもなきゃ持ち合わせてないか……」
神官は不思議な現象に首を傾げながら、部屋中に飛び散った水晶の欠片を掃除することにした。
私は神官学校の規模の大きさに驚いた。エントランスだけで大きな体育館一つ分はあるだろう。
「私達が通っていました学園は、一部の貴族を集めた学校でしたからね。全国から生徒を集める神官学校の方が大規模になるのは当然ですわ」
「ジゼル様も学園を卒業されていましたの?」
神官の上位職である『聖女』として働かれているので、てっきり神官学校の卒業生だと思っていた。
「学生の時は王族でしたからね」
寂しそうに微笑む彼女の横顔を見て、失言だったことに気付かされる。ジゼル様が学園を卒業する直前に現国王が即位された。そのため通常ならば卒業後、直ぐに結婚されるはずだったが婚約は破棄され、修道女として身分を隠して働くことになってしまったのだ。
「あれが試験会場ですわ」
ジゼル様が指示した先には長蛇の列に並んでいる学生達の姿が見えた。
「最初の六年間は私達が通っていた学園と同様、一般教養を学びます。後半六年間は魔法の勉強が始まるのですが、大きく分けて神官になれる『神学部』と医者になれる『医学部』に分かれるんですの」
確かに医療魔法だけでなく、一般の神官としての勉強をしなければいけないのは大変だ。
「ただ医者になるためには魔力量が一定量必要になりますの」
キースさんを見ていても分かるが、回復魔法を使用すると大量の魔力を消費する。人によって魔力量は異なり、中には全く魔力を有しない人間も存在する。
「入学試験の時にも魔力量の測定は行いますけど、改めて試験として測定します。それがこの試験でしてよ」
そう言われて改めて生徒が並ぶ長蛇の列を見てみると、先頭の生徒は水晶のような球体の物体に手をのせて難しい顔をしている。
「ここだけの話、キースはギリギリで医学部に進級できましたの」
懐かしそうにジゼル様はクスクスと笑う。
「キース様が?」
「そう。本当にギリギリでしたの。学校側は神官になるように勧められたんですけど、『治したい子がいる』って言い張って――」
何気ない言葉だが、その言葉がザワリと私の心を逆なでる。彼の人生を振り返ると、直ぐに『心に決めた人』の影がちらつく。こんなに幼い時から彼の心を占めていたのか……と愕然とさせられる。
「そこで叔父様が『成長期だから伸びしろはある』ってご推薦なさって、ようやく学校側も了承されましてね。でも、叔父様の仰ることは正解でしたわ。その後、順調に成長されて今は立派なお医者様ですもの」
私もこの長蛇の列に並ぶのかな――と思っていたが、ジゼル様はその列を横目にさらに建物の奥へと進む。
「試験は受けなくていいのでしょうか」
「あら、あの行列に並ばれるおつもりでしたの?私は嫌ですわ」
ジゼル様は呆れたように私を見つめる。
「教師と水晶があれば簡単に判定できるんですもの。別室を用意させましたわ」
貴族らしいやり方だ。ここ数ヶ月、スラム街に住んでいただけで、すっかり感覚は前世の貧乏女子大生に戻っていたことに気付かされる。
「ジゼル様、ゴドウィン公爵令嬢、本日はお忙しい中、足を運んでくださりありがとうございます」
別室受験会場として案内された部屋には明らかに『教師』と言うには威厳があふれている初老の老人が待っていた。
「私、校長のウェイアムと申します」
校長は仰々しく膝をついて挨拶をする。公爵令嬢時代は王族以外の人間には、こうして膝をついて挨拶されていたことを思い出す。
「はじめまして。グレイスと申します。本日はご無理を申し上げ申し訳ございません」
「いえいえ、ゴドウィン公爵のお嬢様が医術に興味を持って下さったのですから、当然のことでございます。ささ早速ですが、お試しくださいませ」
校長は私を水晶の前へと案内する。
「水晶に手を当てながら、回復魔法の基本である手消毒の魔法を唱えてくださいませ」
そう言って渡された呪文が書かれた紙を手に取り、ゆっくりと唱えてみる。手消毒だけならば、魔法を使えば誰でも唱えられるのか……と思っていると、突然目の前の水晶が光り
パリーンッ!
という音と共に粉々に飛び散った。
「も、申し訳ございません!!!!」
私が謝罪する前に校長は再び膝をついて私に平身低頭謝罪をする。
「先ほど、魔力が特別多い生徒がおりまして……。その者が使った水晶を持ってきてしまったようでございます」
生徒の手から出た魔力は大きすぎると時に水晶を割ってしまうことがあるという。その衝撃がたまった状態で、私が魔法を使ったため割れてしまったのだろう。生徒一人一人の衝撃は大した量でなくても数十年も同じ物を使い続けると、時々このような現象が起こるのだとか。
「ただグレイス様が魔力をお持ちなのは判明いたしましたので、ぜひご入学下さいませ。お待ちしております」
「グレイス様、よかったですわね」
ジゼル様は合格するのが当たり前というように、微笑んだ。おそらく寄付金などを目当てに私が入学することは最初から決まっていたのだろう。確かに神官学校に入学したと聞けば、父のことだ総合病院の一つや二つ建ててしまうに違いない。
――――
「バカ者!!!! なぜ新品の水晶を用意しなかったのじゃ!!」
グレイスとジゼルの姿が見えなくなると校長は近くにいた若い神官を怒鳴り散らした。
「これでは寄付金目当てというのが、あからさまではないか!!」
「いえ、新しいものを用意したのですが……」
校長の怒りに慣れているのか、神官は怒りで顔を真っ赤にしている彼を無視して資料を確認する。
「やっぱり!305番の水晶ですよ。これ、さっき出したばっかりなんです」
「そんなわけあるか!! 他の生徒よりもずば抜けて魔力が多かったあの生徒ですら、ヒビしか入れられなかったではないか」
「そうなんですよ。ヒビが入ったら割れるのも時間の問題なので、捨てたんです。もう百年も使っていますしね。それが35番の水晶です」
「何かの記録ミスじゃろ!! あぁ~~、恥をかいたわ。片づけておくように!!」
校長は投げ捨てるように、そう言うと部屋から大股で出て行く。それを見送りながら若い神官は聞こえないようにため息をついた。最近、何を言っても耳をかさなくなったな――と小さく落胆していた。
「でも新品の水晶を粉々にするだけの魔力なんて、『大聖女』でもなきゃ持ち合わせてないか……」
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