拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ

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#4 高鳴る胸

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 ユアはユージが手に持つ狩猟銃に目をやった。

「あの……ユージ様はどうして山奥へいらっしゃったのですか? 先ほど銃声が2度ほど聞こえたのですが、ユージ様が放たれたのですか?」

「うん、そうだよ。狩りが好きなんだ」

「そうなのですね!」

 彼女が驚いた顔をしたからか、ユージは笑った。

「ははは。王家の男はみな、最低でも半年に一度は狩りを行う決まりになっているんだよ」

「そうなのですか!?」

(なんと! そういう決まりがあったなんて……!)

 ユアの目がさらに一層大きく開いたので、ユージの頬がさらに緩んだ。

「僕は狩りをするのが大好きなんだけど、父上の跡を継いだら今みたいに自由に狩りをすることはできない。できれば跡を継がず、気ままに生きられたら嬉しいんだけど……」

「それほどまでに……! 狩りには魅力が溢れているのですね」

「そうだね。語り始めたら止まらなくなりそうだ」

 ユージはユアの顔色をうかがった。

「……ひどい男だと思ったかい?」

 思いもよらぬ言葉に困惑の表情を浮かべるユア。

「……どうしてですか?」

「いやぁ……狩りが好きだなんて、動物を狩る、つまりは動物の命を奪うことが好きだと思われたんじゃないかと思ってね」

「そんな……! そのようなこと、微塵も思いませんでした。狩りというものは、私たちが生きていく上で必要なことだと認識しております。ユージ様とこうしてお話するのは初めてですが、ユージ様はとてもお優しいお心をお持ちなのだと感じました。きっと、狩りを通じて命の大切さや有り難さ、自然と共生することの意味などを感じてらっしゃるのではないかと……」

 彼女の言葉に熱がこもっていたからか、ユージはとても嬉しそうに口元を緩めた。
 その優しい眼差しを向けられたユア。鼓動が少し速まる。
 
「ユア、君はとっても優しい人なんだね。普段から、相手の悪いところよりも良いところを見ようとしているのがわかるよ。素敵な考え方だね」

「……っ……ありがとうございます……」

 ますます激しく高鳴る胸に両手を当てるユア。

(ど どうしましょう……胸が……ドキドキして苦しい……!)

 ユアはきゅっと肩をすくめて気持ちを落ち着かせようとした。
 その様子に気づいたユージは、彼女の顔を覗き込んだ。
 驚いて足を止めるユア。

「大丈夫かい? やっぱり、気分が悪いんじゃないのかい?」

 そう言ってユアの背中にそっと触れるユージ。
 突然背中に伝わった感触に、ユアの肩がピクッと反応した。

「っ……! だ……大丈夫でございます……っ」

「本当かい?」

 そう言って、ユージはユアに顔を近づけた。
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