4 / 14
#4 高鳴る胸
しおりを挟む
ユアはユージが手に持つ狩猟銃に目をやった。
「あの……ユージ様はどうして山奥へいらっしゃったのですか? 先ほど銃声が2度ほど聞こえたのですが、ユージ様が放たれたのですか?」
「うん、そうだよ。狩りが好きなんだ」
「そうなのですね!」
彼女が驚いた顔をしたからか、ユージは笑った。
「ははは。王家の男はみな、最低でも半年に一度は狩りを行う決まりになっているんだよ」
「そうなのですか!?」
(なんと! そういう決まりがあったなんて……!)
ユアの目がさらに一層大きく開いたので、ユージの頬がさらに緩んだ。
「僕は狩りをするのが大好きなんだけど、父上の跡を継いだら今みたいに自由に狩りをすることはできない。できれば跡を継がず、気ままに生きられたら嬉しいんだけど……」
「それほどまでに……! 狩りには魅力が溢れているのですね」
「そうだね。語り始めたら止まらなくなりそうだ」
ユージはユアの顔色をうかがった。
「……ひどい男だと思ったかい?」
思いもよらぬ言葉に困惑の表情を浮かべるユア。
「……どうしてですか?」
「いやぁ……狩りが好きだなんて、動物を狩る、つまりは動物の命を奪うことが好きだと思われたんじゃないかと思ってね」
「そんな……! そのようなこと、微塵も思いませんでした。狩りというものは、私たちが生きていく上で必要なことだと認識しております。ユージ様とこうしてお話するのは初めてですが、ユージ様はとてもお優しいお心をお持ちなのだと感じました。きっと、狩りを通じて命の大切さや有り難さ、自然と共生することの意味などを感じてらっしゃるのではないかと……」
彼女の言葉に熱がこもっていたからか、ユージはとても嬉しそうに口元を緩めた。
その優しい眼差しを向けられたユア。鼓動が少し速まる。
「ユア、君はとっても優しい人なんだね。普段から、相手の悪いところよりも良いところを見ようとしているのがわかるよ。素敵な考え方だね」
「……っ……ありがとうございます……」
ますます激しく高鳴る胸に両手を当てるユア。
(ど どうしましょう……胸が……ドキドキして苦しい……!)
ユアはきゅっと肩をすくめて気持ちを落ち着かせようとした。
その様子に気づいたユージは、彼女の顔を覗き込んだ。
驚いて足を止めるユア。
「大丈夫かい? やっぱり、気分が悪いんじゃないのかい?」
そう言ってユアの背中にそっと触れるユージ。
突然背中に伝わった感触に、ユアの肩がピクッと反応した。
「っ……! だ……大丈夫でございます……っ」
「本当かい?」
そう言って、ユージはユアに顔を近づけた。
「あの……ユージ様はどうして山奥へいらっしゃったのですか? 先ほど銃声が2度ほど聞こえたのですが、ユージ様が放たれたのですか?」
「うん、そうだよ。狩りが好きなんだ」
「そうなのですね!」
彼女が驚いた顔をしたからか、ユージは笑った。
「ははは。王家の男はみな、最低でも半年に一度は狩りを行う決まりになっているんだよ」
「そうなのですか!?」
(なんと! そういう決まりがあったなんて……!)
ユアの目がさらに一層大きく開いたので、ユージの頬がさらに緩んだ。
「僕は狩りをするのが大好きなんだけど、父上の跡を継いだら今みたいに自由に狩りをすることはできない。できれば跡を継がず、気ままに生きられたら嬉しいんだけど……」
「それほどまでに……! 狩りには魅力が溢れているのですね」
「そうだね。語り始めたら止まらなくなりそうだ」
ユージはユアの顔色をうかがった。
「……ひどい男だと思ったかい?」
思いもよらぬ言葉に困惑の表情を浮かべるユア。
「……どうしてですか?」
「いやぁ……狩りが好きだなんて、動物を狩る、つまりは動物の命を奪うことが好きだと思われたんじゃないかと思ってね」
「そんな……! そのようなこと、微塵も思いませんでした。狩りというものは、私たちが生きていく上で必要なことだと認識しております。ユージ様とこうしてお話するのは初めてですが、ユージ様はとてもお優しいお心をお持ちなのだと感じました。きっと、狩りを通じて命の大切さや有り難さ、自然と共生することの意味などを感じてらっしゃるのではないかと……」
彼女の言葉に熱がこもっていたからか、ユージはとても嬉しそうに口元を緩めた。
その優しい眼差しを向けられたユア。鼓動が少し速まる。
「ユア、君はとっても優しい人なんだね。普段から、相手の悪いところよりも良いところを見ようとしているのがわかるよ。素敵な考え方だね」
「……っ……ありがとうございます……」
ますます激しく高鳴る胸に両手を当てるユア。
(ど どうしましょう……胸が……ドキドキして苦しい……!)
ユアはきゅっと肩をすくめて気持ちを落ち着かせようとした。
その様子に気づいたユージは、彼女の顔を覗き込んだ。
驚いて足を止めるユア。
「大丈夫かい? やっぱり、気分が悪いんじゃないのかい?」
そう言ってユアの背中にそっと触れるユージ。
突然背中に伝わった感触に、ユアの肩がピクッと反応した。
「っ……! だ……大丈夫でございます……っ」
「本当かい?」
そう言って、ユージはユアに顔を近づけた。
135
あなたにおすすめの小説
今夜で忘れる。
豆狸
恋愛
「……今夜で忘れます」
そう言って、私はジョアキン殿下を見つめました。
黄金の髪に緑色の瞳、鼻筋の通った端正な顔を持つ、我がソアレス王国の第二王子。大陸最大の図書館がそびえる学術都市として名高いソアレスの王都にある大学を卒業するまでは、侯爵令嬢の私の婚約者だった方です。
今はお互いに別の方と婚約しています。
「忘れると誓います。ですから、幼いころからの想いに決着をつけるため、どうか私にジョアキン殿下との一夜をくださいませ」
なろう様でも公開中です。
完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。
音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。
見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。
だが、それではいけないと奮闘するのだが……
元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。
完結 喪失の花嫁 見知らぬ家族に囲まれて
音爽(ネソウ)
恋愛
ある日、目を覚ますと見知らぬ部屋にいて見覚えがない家族がいた。彼らは「貴女は記憶を失った」と言う。
しかし、本人はしっかり己の事を把握していたし本当の家族のことも覚えていた。
一体どういうことかと彼女は震える……
拗れた恋の行方
音爽(ネソウ)
恋愛
どうしてあの人はワザと絡んで意地悪をするの?
理解できない子爵令嬢のナリレットは幼少期から悩んでいた。
大切にしていた亡き祖母の髪飾りを隠され、ボロボロにされて……。
彼女は次第に恨むようになっていく。
隣に住む男爵家の次男グランはナリレットに焦がれていた。
しかし、素直になれないまま今日もナリレットに意地悪をするのだった。
完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。
婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。
愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。
絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる