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はじめての異世界 ―ウィリデ探訪編―
エルフの偉い人 その1
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リサが言うところの栄養補給が終わった頃、俺を探しているという人物に会いに行くことになった。
にぎやかな市場を離れて、彼女に案内されるがままに進んだ。
もしも外国へ旅行に行ってこんな展開になったら、確実についていくことはないだろう。異世界を訪れてから危険人物を目にしておらず、エルフはいい人という希望的観測も影響していた。
「私は森に住むエルフなんだけど、エレノアから話は聞いてたわ。大森林の先へ行きたいなら私たちの長(おさ)が許可しなければ無理よ」
「……エレノア先生から、なるほど」
おそらく、エルネスからエレノア先生に話が通っていたのだろう。
エルフ同士のつながりがあるのかもしれない。
「それにしても物好きね。ウィリデの人間は用事がないのに大森林を通ったり、ましてやフォンスに行こうなんて思ったりしないからね」
「せっかくここまで来たんだから、ついでに他の地域も巡ってみたいんだ」
当然ながら、異国ではなく地球からやってきたという点は伏せておいた。
余分なことは話さないに限る。
「ふーん、そう。エルフの長が高齢で代理人に色々と任せているから、彼に気に入られたら問題ないと思うわ。別にテストみたいなものがあるわけじゃないから安心して」
気に入られるとはずいぶん抽象的な表現だと思った。
もっとも、そういうことならエルネスやエレノア先生のおかげでエルフに苦手意識がないのは幸いなのかもしれない。
現地語で“気に入られる”という言葉の意味を日本語に変換しきれていない可能性を危惧しつつ、まずは最善を尽くすことを決意した。親しみを持ってもらうのに地球も異世界も関係ない……はずだ。
今まで通ったことのない道を進むうちに街の外れの方まで来ていた。
少し不安になりながら歩いていると、リサがもうすぐつくといった。
「――あそこよ」
リサは足を止めて口を開いた。
彼女が指し示した先にそう大きくない建物があった。
こちらの感覚では普通の一軒家に見える。白い外壁に茜色の瓦だ。
そこからさらに近づいた後、リサは先に建物に入っていった。
待つようにいわれて少しすると彼女が戻ってきた。
問題ないので中へ入るようにと促され、俺は頷いて入り口へと足を運んだ。
粗相があってはいけないと思うと緊張がこみ上げるような感覚があった。
ドアを開けて中に入ると整理された部屋の様子が目に入った。テーブルと椅子にいくつかの家具。必要最低限にとどめられているように映った。
そして、ひと目でエルフと分かる人物が座っていた。
「はじめまして、カナタくん。わたしはヨセフという名だ」
そう名乗った男性は少し表情を崩した。
エルネス基準を採用するなら彼よりも一回り以上は年上だろう。
金髪で白い肌をしているが、年長者特有の落ち着いた佇まいがある。
「……はじめまして」
「わたしは街と森を行き来していてね。エレノアが来た時に入れ違いになってしまって、リサが森からの使者としてやってきたというわけだ。ある程度の事情は把握しているから、改めて君の口から聞かせてもらえないか」
ヨセフは穏やかな様子でそう話した。
こちらに圧力をかけないように配慮してくれているのだろう。
「きっかけは同郷からこの国へ来ている友人が他の国へ行ってみたいと言ったことでした。ただ、それはきっかけにすぎなくて、俺自身が森の向こうにあるフォンスや色んな場所に行ってみたいと感じています」
これは偽らざる本心だった。
それに適当なことをいえば見抜かれるだろうとも考えていた。
「ほう、そういうことなのか。わたしたちは別に通行を許可しないとか、いじわるをしてやろうみたいなことを考えているわけではないよ。ただし、大森林からフォンスまではそれなりに距離がある。長旅になると思うけれど、そのへんは大丈夫なのだろうか」
ヨセフは孫をいたわる老人のような穏やかな目つきをしていた。
「はい、エルネスに鍛えられてますし、いけると思います」
「そうか、わかった。それじゃあ、わたしから長老に伝えておくことにしよう」
ヨセフは笑顔で頷いた。
その表情は納得しているように見えた。
「ありがとうございます……それはよかった」
ひとまずこれで新たな道が開けた。きっと村川も喜ぶだろう。
脇にいたリサを目にすると微笑んでいた。
「あと、大森林には人に襲いかかる動物がいたり、危険な箇所があったりする」
「道案内なしでは危険が増すので、ここいるリサにも護衛についてもらおう。この子は魔術はそこまで使えないが、弓の扱いに長けているので役に立つはずだ」
「えっ、私!? ……うーん、わかりました」
リサは戸惑いを見せながらも承諾した。
「えっと、なんかごめんなさい」
「君の体調も万全ではないようだから、何日かした後に出発するようにしよう」
ヨセフはこちらを気づかうような表情をしていた。
俺はヨセフとリサに礼をいって建物を後にした。
外に出るとリサがついてきた。
「道に迷いそうでしょ。よかったら市場の辺りまで見送るわ」
「それは助かるね」
たしかにどうやって帰ればいいのか分からなかった。
当然時間をかければ戻れるとは思うが。
リサの案内でここへ来る時に通った道を戻ることにした。
「素朴な疑問なんだけど、そんなにフォンスに行きたいの?」
「いや、その国だけじゃなくて色んなところを見てみたいんだ」
隣のリサに歩調を合わせながらいった。
答えを考えてみたが、そこまで迷うような質問ではなかった。
それは旅先で貪欲に色んなものを見て回りたいという感覚に似ている。
もちろん危険は考慮するべきで、そのためにも現地の人の協力をできる限り得ようと思っていた。
「そう、フォンス辺りまではよくても、その先のカルマンは歓迎されないだろうから、フォンス止まりになるのかしらね」
「緋色の国、だった? そんなに危ないやつが多いの」
エルネスの話が部分的に記憶に残っている。
鍛冶が得意で血の気が多い国だったか。
にぎやかな市場を離れて、彼女に案内されるがままに進んだ。
もしも外国へ旅行に行ってこんな展開になったら、確実についていくことはないだろう。異世界を訪れてから危険人物を目にしておらず、エルフはいい人という希望的観測も影響していた。
「私は森に住むエルフなんだけど、エレノアから話は聞いてたわ。大森林の先へ行きたいなら私たちの長(おさ)が許可しなければ無理よ」
「……エレノア先生から、なるほど」
おそらく、エルネスからエレノア先生に話が通っていたのだろう。
エルフ同士のつながりがあるのかもしれない。
「それにしても物好きね。ウィリデの人間は用事がないのに大森林を通ったり、ましてやフォンスに行こうなんて思ったりしないからね」
「せっかくここまで来たんだから、ついでに他の地域も巡ってみたいんだ」
当然ながら、異国ではなく地球からやってきたという点は伏せておいた。
余分なことは話さないに限る。
「ふーん、そう。エルフの長が高齢で代理人に色々と任せているから、彼に気に入られたら問題ないと思うわ。別にテストみたいなものがあるわけじゃないから安心して」
気に入られるとはずいぶん抽象的な表現だと思った。
もっとも、そういうことならエルネスやエレノア先生のおかげでエルフに苦手意識がないのは幸いなのかもしれない。
現地語で“気に入られる”という言葉の意味を日本語に変換しきれていない可能性を危惧しつつ、まずは最善を尽くすことを決意した。親しみを持ってもらうのに地球も異世界も関係ない……はずだ。
今まで通ったことのない道を進むうちに街の外れの方まで来ていた。
少し不安になりながら歩いていると、リサがもうすぐつくといった。
「――あそこよ」
リサは足を止めて口を開いた。
彼女が指し示した先にそう大きくない建物があった。
こちらの感覚では普通の一軒家に見える。白い外壁に茜色の瓦だ。
そこからさらに近づいた後、リサは先に建物に入っていった。
待つようにいわれて少しすると彼女が戻ってきた。
問題ないので中へ入るようにと促され、俺は頷いて入り口へと足を運んだ。
粗相があってはいけないと思うと緊張がこみ上げるような感覚があった。
ドアを開けて中に入ると整理された部屋の様子が目に入った。テーブルと椅子にいくつかの家具。必要最低限にとどめられているように映った。
そして、ひと目でエルフと分かる人物が座っていた。
「はじめまして、カナタくん。わたしはヨセフという名だ」
そう名乗った男性は少し表情を崩した。
エルネス基準を採用するなら彼よりも一回り以上は年上だろう。
金髪で白い肌をしているが、年長者特有の落ち着いた佇まいがある。
「……はじめまして」
「わたしは街と森を行き来していてね。エレノアが来た時に入れ違いになってしまって、リサが森からの使者としてやってきたというわけだ。ある程度の事情は把握しているから、改めて君の口から聞かせてもらえないか」
ヨセフは穏やかな様子でそう話した。
こちらに圧力をかけないように配慮してくれているのだろう。
「きっかけは同郷からこの国へ来ている友人が他の国へ行ってみたいと言ったことでした。ただ、それはきっかけにすぎなくて、俺自身が森の向こうにあるフォンスや色んな場所に行ってみたいと感じています」
これは偽らざる本心だった。
それに適当なことをいえば見抜かれるだろうとも考えていた。
「ほう、そういうことなのか。わたしたちは別に通行を許可しないとか、いじわるをしてやろうみたいなことを考えているわけではないよ。ただし、大森林からフォンスまではそれなりに距離がある。長旅になると思うけれど、そのへんは大丈夫なのだろうか」
ヨセフは孫をいたわる老人のような穏やかな目つきをしていた。
「はい、エルネスに鍛えられてますし、いけると思います」
「そうか、わかった。それじゃあ、わたしから長老に伝えておくことにしよう」
ヨセフは笑顔で頷いた。
その表情は納得しているように見えた。
「ありがとうございます……それはよかった」
ひとまずこれで新たな道が開けた。きっと村川も喜ぶだろう。
脇にいたリサを目にすると微笑んでいた。
「あと、大森林には人に襲いかかる動物がいたり、危険な箇所があったりする」
「道案内なしでは危険が増すので、ここいるリサにも護衛についてもらおう。この子は魔術はそこまで使えないが、弓の扱いに長けているので役に立つはずだ」
「えっ、私!? ……うーん、わかりました」
リサは戸惑いを見せながらも承諾した。
「えっと、なんかごめんなさい」
「君の体調も万全ではないようだから、何日かした後に出発するようにしよう」
ヨセフはこちらを気づかうような表情をしていた。
俺はヨセフとリサに礼をいって建物を後にした。
外に出るとリサがついてきた。
「道に迷いそうでしょ。よかったら市場の辺りまで見送るわ」
「それは助かるね」
たしかにどうやって帰ればいいのか分からなかった。
当然時間をかければ戻れるとは思うが。
リサの案内でここへ来る時に通った道を戻ることにした。
「素朴な疑問なんだけど、そんなにフォンスに行きたいの?」
「いや、その国だけじゃなくて色んなところを見てみたいんだ」
隣のリサに歩調を合わせながらいった。
答えを考えてみたが、そこまで迷うような質問ではなかった。
それは旅先で貪欲に色んなものを見て回りたいという感覚に似ている。
もちろん危険は考慮するべきで、そのためにも現地の人の協力をできる限り得ようと思っていた。
「そう、フォンス辺りまではよくても、その先のカルマンは歓迎されないだろうから、フォンス止まりになるのかしらね」
「緋色の国、だった? そんなに危ないやつが多いの」
エルネスの話が部分的に記憶に残っている。
鍛冶が得意で血の気が多い国だったか。
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