183 / 237
こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―
ダンジョンへの入り口
しおりを挟む
夜の森は闇が深い。一度でも火の魔術を消してしまえば、二度と光の差さない場所へ迷いこみそうな気がした。
俺たちはそれぞれの灯りを頼りにしながら、周囲の捜索を続けている。
グールたちの足跡は撹乱しようという意図が見えず、一直線に続いていた。
「撹乱するまでもないということか。舐められたものだ」
オーウェンがわずかな憤りを感じさせた。
「さっき倒したので全部だといいんですが」
「私もそうあってほしいが、奴らは得体が知れんな」
俺も同意見だった。
消えたグールの残骸がどうなったか掴めていない。
果たして、この人数で大丈夫だろうかと一抹の不安を覚えたところで、砦の方角から松明の炎と足音が近づいてきた。
「オーウェン殿、我々もお伴(とも)させて下さい」
エスラとダスクの仲間が一人ずつ姿を見せた。
彼らはそれぞれ違う種類の装備を身につけており、その腕に自身がありそうな顔つきをしている。
「もちろん、歓迎だ」
「ありがとうございます。イアン殿に直談判した甲斐がありました」
二人は気力が充実しているようで、怖気づくような様子はなかった。
「さて、この辺りは調べ終わった。このまま足跡を辿って進んでいこう」
オーウェンはそう切り出した。
森と平地の境い目から奥に向かうほど、その闇は存在感が増すように感じられた。
大の大人が六人もいるというのに、どこか心細い気持ちにさせる。
「薄気味悪い森だな。エスラの近くにこんなところがあったなんて」
「やはり、肝っ玉が小さいんですね。……うわっ!?」
エレンはリュートを小馬鹿にするようなことを言っていたが、何かの物音に反応して驚いたようだった。
「エレン、味方をからかうのはよしてくれ。ダスクの品格が疑われる」
「おっと、まともな兵士もいるんだな」
「リュート殿だったか。今は協力することが必要な時、多少の無礼は目を瞑ってくれまいか」
後からやってきたダスクの兵士は、丁寧な態度でリュートに申し入れた。
「気にするなって。大して怒っちゃいない」
「それはよかった、はははっ」
ダスクの兵士はリュートの返答を聞いて小気味よい笑い声を上げた。
「――皆、我々を歓迎しているようだぞ」
彼らの会話を遮るように、オーウェンが声を上げた。
獣道の向こうに数体のグールらしき影が見える。
「さっそくお出ましか」
リュートは好戦的な雰囲気を醸し出しながら言った。
「あの一つ提案があるんですけど」
戦いの前に伝えておきたいことを思い出し、自分から話を切り出した。
「どうしたカナタ、手短に頼む」
「はい。実は俺の国にも似たようなモンスターがいて、頭を落とすと絶命させることができます」
「……ふむっ、なるほど。同じ弱点があるかもしれんということか」
「ええ、おそらく」
俺が火の魔術で燃やすことも可能なものの、森が焼失する危険が十分にある。
ゾンビと同じ弱点があるなら、それに越したことはない。
「皆、聞いていたか、奴らの首を狙ってくれ」
オーウェンは神妙な面持ちで言った。
俺たちはじりじりと敵との間合いを詰めていった。
炎や気配でこちらに気づきそうなはずなのに、グールは襲いかかってこない。
「……やけに不気味じゃねえか」
「リュート、慎重に頼むぞ」
オーウェンとリュートが短く言葉を交わした。
やがて、戦闘可能な距離に近づいたところで、控えていたグールたちが足早に引き返した。
「――なんだ、逃げるつもりか!?」
予想外の状況になっている。
しかし、歴戦の強者が揃っているだけあって、仲間たちは怯まずに追いかけた。
俺は罠かもしれないと危険を感じつつ、少し遅れて彼らに続いた。
それから、森の中を少し駆けていくと、グールが立ち止まった。
「……奴ら、どういうつもりだ」
時間差はあったが、オーウェンも不自然なことに気づいたようだ。
「……もしかしたら、グールを操る存在がいるかもしれません」
俺は躊躇いながら、一つの可能性について口にした。
「まさか、そんなことは……」
オーウェンは何かを言いかけたところで、口をつぐんだ。
おそらく、彼も不審な状況だと気づいたのだろう。
「――あれ、グールが消えた!?」
全員で注視していると、グールがの姿が闇に溶けこむように消えた。
「みんな、よく見ろよ。奥に何かあるぞ」
仲間の一人がそう言って松明を投げた。
するとそこには不気味な洞くつがぽっかりと口を開けていた。
俺たちはそれぞれの灯りを頼りにしながら、周囲の捜索を続けている。
グールたちの足跡は撹乱しようという意図が見えず、一直線に続いていた。
「撹乱するまでもないということか。舐められたものだ」
オーウェンがわずかな憤りを感じさせた。
「さっき倒したので全部だといいんですが」
「私もそうあってほしいが、奴らは得体が知れんな」
俺も同意見だった。
消えたグールの残骸がどうなったか掴めていない。
果たして、この人数で大丈夫だろうかと一抹の不安を覚えたところで、砦の方角から松明の炎と足音が近づいてきた。
「オーウェン殿、我々もお伴(とも)させて下さい」
エスラとダスクの仲間が一人ずつ姿を見せた。
彼らはそれぞれ違う種類の装備を身につけており、その腕に自身がありそうな顔つきをしている。
「もちろん、歓迎だ」
「ありがとうございます。イアン殿に直談判した甲斐がありました」
二人は気力が充実しているようで、怖気づくような様子はなかった。
「さて、この辺りは調べ終わった。このまま足跡を辿って進んでいこう」
オーウェンはそう切り出した。
森と平地の境い目から奥に向かうほど、その闇は存在感が増すように感じられた。
大の大人が六人もいるというのに、どこか心細い気持ちにさせる。
「薄気味悪い森だな。エスラの近くにこんなところがあったなんて」
「やはり、肝っ玉が小さいんですね。……うわっ!?」
エレンはリュートを小馬鹿にするようなことを言っていたが、何かの物音に反応して驚いたようだった。
「エレン、味方をからかうのはよしてくれ。ダスクの品格が疑われる」
「おっと、まともな兵士もいるんだな」
「リュート殿だったか。今は協力することが必要な時、多少の無礼は目を瞑ってくれまいか」
後からやってきたダスクの兵士は、丁寧な態度でリュートに申し入れた。
「気にするなって。大して怒っちゃいない」
「それはよかった、はははっ」
ダスクの兵士はリュートの返答を聞いて小気味よい笑い声を上げた。
「――皆、我々を歓迎しているようだぞ」
彼らの会話を遮るように、オーウェンが声を上げた。
獣道の向こうに数体のグールらしき影が見える。
「さっそくお出ましか」
リュートは好戦的な雰囲気を醸し出しながら言った。
「あの一つ提案があるんですけど」
戦いの前に伝えておきたいことを思い出し、自分から話を切り出した。
「どうしたカナタ、手短に頼む」
「はい。実は俺の国にも似たようなモンスターがいて、頭を落とすと絶命させることができます」
「……ふむっ、なるほど。同じ弱点があるかもしれんということか」
「ええ、おそらく」
俺が火の魔術で燃やすことも可能なものの、森が焼失する危険が十分にある。
ゾンビと同じ弱点があるなら、それに越したことはない。
「皆、聞いていたか、奴らの首を狙ってくれ」
オーウェンは神妙な面持ちで言った。
俺たちはじりじりと敵との間合いを詰めていった。
炎や気配でこちらに気づきそうなはずなのに、グールは襲いかかってこない。
「……やけに不気味じゃねえか」
「リュート、慎重に頼むぞ」
オーウェンとリュートが短く言葉を交わした。
やがて、戦闘可能な距離に近づいたところで、控えていたグールたちが足早に引き返した。
「――なんだ、逃げるつもりか!?」
予想外の状況になっている。
しかし、歴戦の強者が揃っているだけあって、仲間たちは怯まずに追いかけた。
俺は罠かもしれないと危険を感じつつ、少し遅れて彼らに続いた。
それから、森の中を少し駆けていくと、グールが立ち止まった。
「……奴ら、どういうつもりだ」
時間差はあったが、オーウェンも不自然なことに気づいたようだ。
「……もしかしたら、グールを操る存在がいるかもしれません」
俺は躊躇いながら、一つの可能性について口にした。
「まさか、そんなことは……」
オーウェンは何かを言いかけたところで、口をつぐんだ。
おそらく、彼も不審な状況だと気づいたのだろう。
「――あれ、グールが消えた!?」
全員で注視していると、グールがの姿が闇に溶けこむように消えた。
「みんな、よく見ろよ。奥に何かあるぞ」
仲間の一人がそう言って松明を投げた。
するとそこには不気味な洞くつがぽっかりと口を開けていた。
1
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる