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こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―

選出されたパーティー

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 グールの残骸が消失していたことはその場にいる全員に動揺を与えた。

 経験豊富な戦士に見えるオーウェンでさえ、うろたえているように見えた。

 予測不能な事態に陥っていたこともあり、再び砦の中に戻った。

「燃えかすになったモンスターが復活しただと……そんなことはありえん」

 オーウェンの報告を受けて、イアンはしばらく沈黙した。

「たしかに確認したのだな?」
「ああっ、私と仲間たちが見ている」

 訝しがるイアンに対して、オーウェンは毅然とした口調で言った。

 それぞれの代表者である二人が動揺するような様子を見せているので、周囲の雰囲気は落ち着かないように感じられた。

「……ひとまず冷静に話し合おう」
「……たしかにその通りだ」

 二人は平静を取り戻したように見えた。

 俺の立場で口出しはできないが、意見を共有して結論を出すべきだと感じた。
 
「――あの、ちょっといいですかね」

 今まで口出ししなかった青年が口を開いた。
 たしか、エレンという名前だった気がする。

「エレン、どうした?」

 虚を突かれたような表情でイアンが応じた。

「双方これまでの戦いで数を削られたとはいえ、各々の精鋭は残っているはず。それならここの守りを固めつつ、不審な点を調べに行ってもいいと思いませんか?」

 エレンは誇張のない自然な口調で語った。

「そいつの言う通りだ。夜が明けるまで待つのもありだが、グールの存在は不気味すぎる。それにエスラで市民が行方知れずになったのは奴らの仕業かもしれねえ」

 リュートはおもむろに口を開き、彼の意見に同意を示した。

「どうだイアン、彼らの作戦は?」
「悪くない。ダスクの兵士たちは簡単にやられはしないだろう」

 二人の意見が合ったように見えると、室内の空気が沸き立つように感じられた。

「これから人選をする。皆、そのまま待機してくれ」

 オーウェンが全員に向けて指示を出し、彼はイアンと打ち合わせを始めた。


 それから探索に向けたメンバーが選出された。

 市民やフレア女王がいることもあり、イアンは砦を守る役目になった。
 探索にはオーウェン、エレン、リュート、俺という少人数で組まれた。

「ここは何があっても死守する。もちろん、エスラの戦士にも危害が及ばないように最大限の努力をすることを約束しよう」

 イアンはそう言って俺たちを送り出した。


 俺たちは再び砦の横穴から外に出た。
 進行方向には暗闇の広がる不気味な森が口を開いている。

「もう少し人数が多くてもいいと思うんですけど、目立たないようにするにはちょうどいいかもしれないですね」

 エレンは納得するような様子で言った。

「そうか? 数的不利になったら真っ先に退かせてもらうぜ」
「おやっ、意外に肝が小さいんですね」
「無礼だな若造。同じ槍使いでなければ蹴りを入れたぞ」
「いえいえ、侮辱したつもりはありませんから」

 リュートとエレンがやり合っているのかと思ったが、二人共平静を保ったまま話をしている。

「彼らなりのコミュニケーションの仕方なのだろう」

 近くを歩いていたオーウェンが苦笑まじりに言った。    

「なるほど、そういうもんか」

 リュートとエレンは会話を続けたが、先を行く俺とオーウェンは口を閉じた。

 オーウェンの持つ松明だけでは心ともなくなり、片手で火の魔術を起こす。
 灯りが増えて少し周囲が明るくなった。

「グールは定期的に通っていたのだろうか」
「この道は足跡で踏み固められてますね」

 俺とオーウェンは地面の様子を確かめた。

「モンスターがエスラを支配してから周囲を警戒する余裕がなかったとはいえ、この程度の距離に不穏な存在が潜んでいたとは」  
  
 彼は悔しそうに言った。

「グールはまだいるかもしれませんし、まずは痕跡を辿りましょう」

 俺が声をかけると、オーウェンは引き締まった表情で頷いた。

 足元に目を向けると足跡は砦に向かう物と森の奥へ向かう物の二種類がある。
 気は進まないが、どこへつながっているのか先へ進んで確かめるべきだろう。
 
 俺たちは足跡を辿るように森の奥へと足を踏み入れていった。
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