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こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―

幻の空間 ―仕掛けられた罠―

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 歴戦の勇士である彼らでさえ、奇怪な状況に戸惑っているように見えた。
 動揺が少なそうなオーウェンも、気を張っているだけなのかもしれない。
 
 やがて、俺たちは光を発する穴の前にたどり着いた。

「洞窟の中で眩しいが、直視できないほどではないな」
「魔術の類に見えますけど、得体が知れません」

 オーウェンの横に並んで、穴の周りを確かめた。
 光の向こうは霞がかかっているようでよく見えない。

「引き返すつもりがないんなら、とっとと中に入ろうぜ」

 リュートが先んじて進もうとしている。

「もちろんだ、ここにきて引き返すわけがない。私から進もう」

 オーウェンは慎重な足取りで中に入っていった。


「…………中から反応がないな」

 戦士の一人が不安そうな様子で口にした。
 しばらく待っていたが、特に変化はなかった。

「敵の戦力が分からないのに分断されるのはまずい」

 今度はリュートが口を開いて、そのまま穴の中に入っていった。

「勇猛果敢ですね。エスラの兵士として負けられません」

 続いてエレンが突入した。

「カナタ殿、我々も行きます」

 後から駆けつけた二人も後に続いた。

「さて、どうするか……」

 穴の周りを再確認してみたが、マナの流れを読み取ることはできなかった。

 俺は意を決して光の向こう側へと足を踏み入れた。

「……ここは一体」

 周囲を見渡すと、暗い洞窟の中にいたとは思えないような光景が広がっていた。

 透き通るような青空と色とりどりの野花が咲き誇る草原。

 幻覚を起こす魔術など聞いたことはないが、そういう類の何かだと感じている。

 ――魔術には魔術で対抗するしかない。  

 俺は右手を掲げると、風魔術で空気のうねりを発生させた。

「……これで周囲のマナをかき混ぜることができるはずだ」

 次第に長閑な景色が歪み始め、最後には消えていった。

 それから、いつの間にか洞窟に戻っていた。

「……まさか、我が幻術を破るとは」  

 マイクで特殊効果をかけたような奇妙な声が聞こえた。

 声のした方に視線を向けると、紫のローブを着た人影が目に入った。
 目深にフードを被っており、顔つきや表情を読み取ることはできない。

 謎の人物は台座のような物に陣取り、まるで王のように構えている。
 しかし、今はそれよりもオーウェンたちのことが気にかかる。

「みんな、大丈夫?」

 自分の周りでは仲間たちが朦朧としていて声をかけた。
 すると、全員がハッとしたように辺りを見回した。

「……ここは、そうか幻術をかけられていたのか」

 オーウェンは気を取り直したように言った。

 洞窟の中にぽかりと口を開けた広い空間。
 俺たちはその中心で散り散りになっている。

「わずか六人で来るとは。その蛮勇が無謀だったと気づくがいい」

 謎の人物の周囲でマナが歪むような感覚が生じた。 
 その直後、奇妙な光が発生して、複数のグールが現れた。

 そしてすぐさま、猛獣のように襲いかかってきた。

「――奴が首謀者だったか。皆、武器を構えろ!」

 オーウェンのかけ声に反応するように仲間たちはそれぞれの武器を手にした。
 
 グールまでの距離がすぐに縮まっていく。
 俺は急いで魔術を発動するタイミングに備えた。

 最初に戦い始めたのはエレンとリュートだった。
 
 二人は巧みな槍捌きでグールの襲撃を足止めしている。
 そこへ他の仲間達も加勢に入った。

 俺も遅れないように射程を見定めながら距離を詰めた。

 すると、今度は別の方向にグールが現れた。

「まずい、こっちを先に倒そう」

 俺は右手を掲げて火の魔術を放った。
 複数の火球がグールに向かって飛んでいく。

 それらが直撃すると敵は黒焦げになり、そのまま動かなくなった。
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