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こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―

これからの戦い

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 俺たちが砦に戻ると、出迎えた仲間たちは驚くような様子を見せた。
 それはエスラの作戦が短い時間で終わったからだった。

 今度はダスクを奪還するための作戦が必要になるため、砦の外に全ての戦闘員が集められることになった。そして、間髪を入れずに全員が外で整列させられた。

 いつもはオーウェンやイアンが進行役を担うことが多いものの、今回は女王の姿もある。
 満足な食事が取れず、十分な睡眠も取れていないはずだが、気品というかオーラのようなものは衰えていない。

「同席させてもらうけれど、こちらのことは気になさらず」
「はっ、承知しました」

 言うまでもないが、イアンにとって女王は特別な存在のようで低姿勢だった。
 一方のオーウェンはそこまで気にしていないように見えた。

 俺にとっても主君というわけではないので、最低限の敬意を払えば十分だろう。

 やがて、誰からともなく口火が切られて話し合いが開始された。

 オーウェンがエスラの状況を簡潔に述べて、イアンはダスク奪還の展望を語る。
 仲間の中でも疑問がある者は率直な意見を口にして、建設的に議論が進んだ。

 こうして、ダスクに向けた作戦は固まっていった。

 今回も精鋭が選抜されたが、俺は選ばれなかった。
 オーウェンも待機組に入り、人員はダスク出身者中心でまとめられた。

 単純な話で、戦闘が重なった者は休ませるという理由からだった。

 しばらくして、俺やオーウェンはダスクに向かうイアンたちを見送った。
 

 奪還部隊が出発すると、辺りはずいぶん静かになった。

 見送りに出た市民や仲間たちが砦の中に戻ったので、俺もそれに続いた。

 砦内での生活が長引いた結果、自然とそれぞれのスペースが決まっている。
 俺はメリルの隣の椅子に腰かけた。

「今回は休養なんですね」
「そうだね、俺やオーウェンは連戦だったから」

 メリルは微笑みを浮かべている。
 見知らぬ人も多い中で気心知れた彼女は心安らぐ存在だと感じた。

「エスラが取り戻せたなら、私たちの旅も終わりが近いですね」
「そうなの?」
「エスラとダスク、二つの先にある町は多くないですから」

 ダスクを包囲するモンスターを見て、戦いが熾烈になることは予想していた。
 魔人ケスラや敵が言及していた魔王が倒すべき存在になるのだろうか。
 
 俺はメリルとの会話を終えると、砦を出て外の空気に当たろうと思った。

 外に出てみたら木々の隙間から見える空は晴れていた。
 それから、澄んだ空気の中を歩いていると、オーウェンの姿が目に入った。

 彼は鎧などの装備を脇に置き、身軽な格好で素振りをしていた。
 鍛錬の一環であっても、一振り一振りが鋭くキレのある動きだった。

「オーウェン、精が出ますね」
「……カナタか。何もしていないと落ち着かないのだ」

 オーウェンは続けて何回か剣を振ってから、おもむろに鞘に収めた。
 そして、近くの地面に座りこんだ。

「よければ少し話さないか?」
「はい」

 俺は彼の隣に腰かけた。
 どこかで鳥の鳴く声が聞こえた。

「イアンたちは精鋭を連れて向かった。包囲が減っていると報告もあったから、彼らは奪還を成功させるだろう」
「たしかに合同部隊なら上手くいきそうですね」
「ダスクが押さえられたら、次の作戦に移らねばならない」

 オーウェンはそう言って何かを考えるように口を閉じた。

「メリルに聞いたんですけど、この先で支配されている町は少ないみたいですね?」
「……ああっ、ダスクより先はモンスターの拠点があるとされていて、町は多くはない」
「それなら、その先を解放できれば終わりということですね」
「そういうことだ」

 オーウェンにとって決まりきっていたことなのだろう。
 彼は表情の変化が少なく、どこか遠くを見据えるような目をしていた。

    
 オーウェンの会話が終わったが、イアンたちが戻るまでやるべきことがない。
 俺は少し考えた後、運動と気分転換を兼ねて歩くことにした。
  
 その場から歩き始めると、同じように時間を持て余した仲間が目に入った。

 砦から離れすぎないように注意しながら散策していると、ふいに耳鳴りがした。
 
「……なんだ?」

 違和感を覚えて立ち止まる。
 唐突に不吉な感覚が全身を駆け巡った。

「――ほう、まだ生き残っていたのだな」
「魔人……ケラス」

 濃い青色の肌をした人型の異形。
 まさか、こんなところで遭遇してしまうとは。

 周囲に仲間は見当たらず、大きな声を出しても届くか分からない。
 危険な状況に陥ってしまった。
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