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こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―

空白のエスラ

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 オーウェンやイアンと二人の仲間が広場でモンスターに取り囲まれていた。
 見回した感じではコボルトやオークが十体ほどだろうか。

 俺とベネットは離れた場所から見守っている。

 彼女の言うようにオーウェンたちが安易に見つかるとは想像しづらい。
 何か考えがあってのことかもしれない。

 彼らに危険が及ぶ可能性があるものの、ベネットの心づもりは分からなかった。
 それでも、自分自身は不測の事態に陥ったら助けに行くつもりだった。

 息を呑むように見つめていると、コボルトたちが斬りかかった。
 それぞれに短めの剣を手にして、殺気を感じさせる迫り方だった。

 さすがに雑兵ではオーウェンたちに及ばず、あっさりと斬り捨てられた。
 今度は残った二体のオークが襲いかかろうとしていた。

 オークたちはモンスターとは思えないほど、隙のない構えをしている。 

 二対四という人間側が有利な状況にもかかわらず、膠着状態に入った。
 オーウェンたちは緊張した面持ちで敵の様子を窺っている。

 先に沈黙を破ったのはオークたちだった。

 巨体を物ともしない素早い接近をした後、鋭い突きを見舞う。
 どうにか防いでいるが、仲間たちが劣勢に見えた。

「……援護しないと」
「いいえ、もう少し待つわよ」

 ベネットは凛とした声で言った。
 彼女なりに好機を窺っているのか、あるいはオーウェンたちを信じているのか。
 
 緊迫したこの状況で口を出すことは抵抗がある。

 そのまま見守っていると、イアンが突きを剣で防ぎながら反撃に転じた。
 一対一の状況に持ちこんで、そのままオークへ斬撃を繰り出す。

 一進一退の攻防になったが、彼は優勢になったところで敵を斬り結んだ。
 片方のオークが地面に倒れこむ。

 片割れの危機に動揺したようで、もう一体のオークに隙が見えた。
 その好機を他の仲間が見逃すはずもなく、的確に敵の胴体を捉えた。

 隙をついた攻撃を防ぎきれるはずもなく、もう片方のオークも倒された。

「ほら、言った通りでしょう」

 ベネットは自信を感じさせる様子で笑みを浮かべた。 


 俺たちは決着がついたところでオーウェンたちのところへ歩いていった。

「無傷で倒せましたね」
「おおっ、カナタとベネットか。これぐらいの相手なら大したことはない」  
「ところで、どうしてわざわざ呼び寄せるような状態だったんですか?」
「ああっ、それなら――」

 オーウェンは順を追って説明をしてくれた。

 各ペアで敵の拠点を探ったが、もぬけの殻に近い状態だったそうだ。
 そして、彼らは陽動作戦を取ることで散らばったモンスターを誘い出した。

 ちょうど、俺たちが目撃したのは集まったモンスターと戦い始めるところだったというわけだ。

「……エスラにいないということはダスクを攻めていたモンスターに合流していたということですかね?」
「いや、ダスクの包囲を見た限り、異なる勢力だった」
「オーウェンの言う通りだ。時系列としてエスラから増援に来たとは考えにくい」

 イアンも加わって話を続けた。
 どうも、辻褄が合わない点があるようだ。

「最低限の戦力を残して、どこへ向かうというのだ……」
「ダスクを襲ったモンスターも不自然ではある。あれだけの数がどこに隠れていたのか」
「あるいは離れたどこかに拠点があってもおかしくない」
「……なるほど」

 オーウェンの言葉にイアンは納得するような様子を見せた。
 一方の俺はこちらの状況に疎いため、なかなか会話に入れないでいる。
  
「支配が広がってから、しばらく足を運んでいないところがある」
「ああっ、その中に拠点があるかもしれない」
「数からして劣勢になりそうだが、ベネットやカナタ殿がいれば可能性は残る」
「イアン、攻めこむというなら我々にも協力させてくれ」

 オーウェンの声音を力強く感じた。
 イアンは彼の言葉に大きく頷いた。

 
 それから、再び八人が合流してエスラの捜索を開始した。

 仲間たちが確認済みだったが、モンスターが集まっていそうな場所は空だった。
 
 オーウェンはエスラを奪還するまでもないと判断して、町の代表に注意を続けるようにということと何かあればすぐに駆けつけるという言伝をした。

 そして、俺たちは砦に帰還して、ダスクに向かう作戦を立てることになった。
 
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