222 / 237
こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―
平凡なサラリーマンが異世界生活を満喫しながら勇者になりました その1
しおりを挟む
「カナタと話がしたいので、少しの間だけ攻撃を防いでもらえますか」
「ええ、もちろん」
シモンの神妙な面持ちにエルネスも大きく頷いて応えた。
エルネスだけに負担をかけたくないので、今はこうするしかない。
敵の様子に目を向けると、油断しているのか攻撃を仕掛けてこなかった。
「本来の方法ではないですけど、マナを使う以外にもう一つ同じような力を出す方法があります」
「……そんな方法が?」
「命がけになります。……マナの代わりに生命力を使いますから」
シモンは今まで見たことのない表情を見せていた。
こんなにも真剣な顔つきになるのかと驚きを隠せなかった。
「エルネスはきっと止めるでしょうし、基本に忠実な彼にはできません」
「それじゃあ、俺にしかできない?」
「いえ、おれも同じことができます。……ていうより、さっきもしてました」
強大な魔術を防げたのは、それが理由だったのか。
魔人のような姿に近づきつつあり、シモンに大きな負担をかけてしまった。
「……それでやり方は?」
「マナの回路は使いません。力の源をもっと強く深く意識してください」
「……強く深く」
シモンの言う通り、マナよりも深いところに意識を向ける。
すると、それはあっさりと体感できた。
身体の中に宿る太陽のように力強い、まさに生命力と呼べる力だった。
シモンの言う通り、マナとは力の種類が異なる。
「準備はできた。それで?」
「おおっ、早いですね。早速、やってみましょう」
「もちろん」
「――ただ、死ぬかもしれないことだけは頭に入れておいてください」
シモンは落ち着いた口調で、限界を超えるなと諭していた。
彼はそのまま魔女の方へ近づいて行った。
決死の攻撃を仕掛けようとしているのは明白だった。
自分も続かねばとシモンの後に続いた。
「エルネス、反撃があったら防御を頼みます」
「ええ、分かりました」
シモンの頼みをエルネスは快諾した。
「さて、いっちょやりますか」
シモンは普段の様子に戻って、散歩にでも出かけるような気軽さだった。
それにもかかわらず、彼の全身から膨大な量のエネルギーを感じ取った。
「シモン、そこまで力を使って大丈夫なのか」
「……無事に帰れたら、クルトによろしく伝えてください」
「――えっ」
その意味を理解しようとする間に、シモンは弾丸のように飛び出していった。
彼の決死の攻撃が衝突すると、魔女のところで大きな火柱が立った。
明らかに自爆覚悟の攻撃だった。
このままでは全滅しそうだからといって、己の命を犠牲にするなんて。
胸の内が強く締めつけられるようだった。
苦しくて言葉が出てこない。
シモンがあれだけの攻撃をした以上、魔女が無傷ということはないだろう。
火柱が収まるのを待った。
「そ、そんな……」
「……ぐふっ、シモンめ。木の実をくれてやった恩を忘れおって」
魔女はボロボロの姿になりながらも存在していた。
彼女は怨嗟の声を上げたが、恐怖はちっとも感じなかった。
「――こうなったら、俺がやるしかない」
シモンに教わったばかりのことをイメージする。
マナよりも強く深い力――生命力に意識を傾ける。
すでにマナを酷使しているのに、生命力は太陽のように熱く昂っていた。
「これなら、きっと――」
「カナタさん、ダメです!」
近くにいたエルネスが止めに入った。
彼はこの方法を知らないはずだが、エネルギーの流れで理解したようだ。
「ええ、もちろん」
シモンの神妙な面持ちにエルネスも大きく頷いて応えた。
エルネスだけに負担をかけたくないので、今はこうするしかない。
敵の様子に目を向けると、油断しているのか攻撃を仕掛けてこなかった。
「本来の方法ではないですけど、マナを使う以外にもう一つ同じような力を出す方法があります」
「……そんな方法が?」
「命がけになります。……マナの代わりに生命力を使いますから」
シモンは今まで見たことのない表情を見せていた。
こんなにも真剣な顔つきになるのかと驚きを隠せなかった。
「エルネスはきっと止めるでしょうし、基本に忠実な彼にはできません」
「それじゃあ、俺にしかできない?」
「いえ、おれも同じことができます。……ていうより、さっきもしてました」
強大な魔術を防げたのは、それが理由だったのか。
魔人のような姿に近づきつつあり、シモンに大きな負担をかけてしまった。
「……それでやり方は?」
「マナの回路は使いません。力の源をもっと強く深く意識してください」
「……強く深く」
シモンの言う通り、マナよりも深いところに意識を向ける。
すると、それはあっさりと体感できた。
身体の中に宿る太陽のように力強い、まさに生命力と呼べる力だった。
シモンの言う通り、マナとは力の種類が異なる。
「準備はできた。それで?」
「おおっ、早いですね。早速、やってみましょう」
「もちろん」
「――ただ、死ぬかもしれないことだけは頭に入れておいてください」
シモンは落ち着いた口調で、限界を超えるなと諭していた。
彼はそのまま魔女の方へ近づいて行った。
決死の攻撃を仕掛けようとしているのは明白だった。
自分も続かねばとシモンの後に続いた。
「エルネス、反撃があったら防御を頼みます」
「ええ、分かりました」
シモンの頼みをエルネスは快諾した。
「さて、いっちょやりますか」
シモンは普段の様子に戻って、散歩にでも出かけるような気軽さだった。
それにもかかわらず、彼の全身から膨大な量のエネルギーを感じ取った。
「シモン、そこまで力を使って大丈夫なのか」
「……無事に帰れたら、クルトによろしく伝えてください」
「――えっ」
その意味を理解しようとする間に、シモンは弾丸のように飛び出していった。
彼の決死の攻撃が衝突すると、魔女のところで大きな火柱が立った。
明らかに自爆覚悟の攻撃だった。
このままでは全滅しそうだからといって、己の命を犠牲にするなんて。
胸の内が強く締めつけられるようだった。
苦しくて言葉が出てこない。
シモンがあれだけの攻撃をした以上、魔女が無傷ということはないだろう。
火柱が収まるのを待った。
「そ、そんな……」
「……ぐふっ、シモンめ。木の実をくれてやった恩を忘れおって」
魔女はボロボロの姿になりながらも存在していた。
彼女は怨嗟の声を上げたが、恐怖はちっとも感じなかった。
「――こうなったら、俺がやるしかない」
シモンに教わったばかりのことをイメージする。
マナよりも強く深い力――生命力に意識を傾ける。
すでにマナを酷使しているのに、生命力は太陽のように熱く昂っていた。
「これなら、きっと――」
「カナタさん、ダメです!」
近くにいたエルネスが止めに入った。
彼はこの方法を知らないはずだが、エネルギーの流れで理解したようだ。
1
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる