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これぞ王道? 眼鏡転校生が現れました
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しおりを挟む王道眼鏡転校生は、なんてことありません。ごくごく普通の男子高校生でした。ボサボサの鳥頭でもなければ、顔が隠れるような鼈甲眼鏡の正体不明小僧でもありません。ただ、ちょっとどころじゃなく可愛かったというのが僕の第一印象で、とても気に入ってしまった理由です。
チワワ軍団とは全然違う可愛さです。天然というのでしょうか。紫瞠君は同学年には見えない、あどけなさと幼さ、そして純粋さがありました。僕に弟がいたなら目に入れても痛くない程の可愛さです。
そんな紫瞠君は購買で缶コーヒーをなぜか三本、そしてイチゴ牛乳を一本購入すると、僕達と別れました。
別れ際に、「バイバイ」と手を大きく振って、その手を傍にある壁に激突させてとても痛がっていましたが。
沙耶ちゃん。僕は沙耶ちゃんの一番のお兄さんでいるつもりですが、一人くらい弟を迎え入れてもいいでしょうか。
弟……えへへ。
「気味の悪い笑みですね。お前、今日の学力テストでとうとう頭がイかれましたか」
「失礼な。僕は今回のテストで平均点は叩きだせたという手ごたえを感じています」
学生寮の中。自分が寝床としているその一室で自習に勤しんでいる僕に向かって、この部屋のもう一人の主である人間が、何やら不躾な事を言いやがりました。僕は今回の学力テストで赤はないという自信があるのです。
きっぱりと断言してみせると、隣の学習机で勉強とは別に、生徒会の山積み資料に囲まれている皆の憧れ、僕の天敵である生徒会会長こと皇若菜君が、眉間に皺を寄せまくって僕を蔑むかのような視線を向けていました。
ふん。そんなゴミでも見るかのような目で見られても、僕はへいちゃらなのです。テストも上手くいき、新しくも可愛らしい新たな友に出会うことができたのですから。
いつまで経ってもチワワ軍団しか引き連れられないような上辺だけの猫かぶり野郎は、わけのわからん書類の山に埋もれていればいいのです。やーい、やーい、ざまあみろ。
ガツン!
「痛い!?」
何!? いきなりこめかみに激痛が走りましたよ!?
患部を摩りながら辺りを見渡すと、分厚いファイルが一冊、床に落ちていました。まさかこの角に当たった!? 紙なんて束になりゃ凶器以外の何物でもありませんよ! しかもこめかみだろ!? 超痛ぇ!
ガバッと、思い当たる節どころか絶対てめぇだろうという方向を睨みつけてやると、やはりというべきか、いかにもファイルをぶん投げましたという構えをしている皇君がいました。しかも超絶に鬱陶しそうな顔をして。
「な、何ですか」
「いえ。何故だかコケにされているような気がしたので。邪気を払おうと」
な、何ということでしょうか。確証もないのに人に物をぶつけてくるなんて! 恐ろしいにも程がある奴です。
「んも~」
仮にも生徒会の資料でしょうに。そんなファイルで僕の頭を殴るなど、なんて罰当たりな。皇君の頭には槍でも降ればいいのです。頭の中でブツブツと文句を言いながらも、凶器となった悲劇のファイルを皇君に返そうと手にすると、パラリと中のページが見えてしまいました。不可抗力と言うやつですが、僕の目に飛び込んできたのは……
「ヤンキー!?」
と、びっくりするくらいの見事な金髪を持った青年がその中にいたのです。一瞬、不良さんモードの皇君かと思いましたが、顔が全く違いました。目鼻立ちは整っているのですが、こうなんというか。寝ぼけた様な、やる気な~いお顔です。いえ、美形さんには違いないのですけどね。
初めて目にするその人物。ファイルに収められていたのは他校の制服を着ている写真でしたが、その横に彼の資料と思しき文書がありました。え~と、片岡葉月? この人の名前でしょうか? 何々? 家は片岡総合病院の……って、あの大病院の!? めっちゃ有名な総合病院じゃないですか! テレビや雑誌でも院長先生が引っ張りだこの! ええ~、このヤンキーさん、その片岡総合病院のお子さんなんですか。どれどれもっと詳しく……
「何を細見しているのですか。個人情報ですよ」
と、ファイルを読んでいる最中の僕の目の前にやってきた皇君によって、それは遮られてしまいました。って、貴方がこれを僕に投げつけてきたのでしょうに。
皇君は僕からファイルを奪うと、自身の席へと戻りました。しかし僕はそのファイルに興味津々。
「それ、一体何の資料なんです?」
「お前、馬鹿なんですか? この学校の関係資料に決まっているでしょう」
馬鹿なんですか? は、余計です。
「じゃあそこにある片岡葉月という人もこの学校の関係者、ということですか?」
「転校生ですよ。噂くらい耳にしているでしょう?」
ん? 転校生? ってことは。
「紫瞠君と一緒に転校してきたというもう一人の彼ですか!」
ポンと、手を叩く僕。とんでもなく癖のある野郎が転校してきやがりましたね! ま、まあ、我が校は成績や特技が秀でていれば、染髪やピアスなどはごちゃごちゃと煩くない所ではありますが……目立つ!
だからといって、金髪に偏見があるわけではありません。全ての金髪さんがヤンキーなどとは思いませんよ、さすがに。
この仮面生徒会長は別としますが。
「紫瞠、君?」
ふと、皇君は僕が言った台詞に片眉を上げました。ん? どうしました?
「お前、紫瞠柳を知っているのですか?」
「へ?」
突如、ずずいっと僕の前に立ち、攻め寄るように顔を近づける皇君。って、近いっ! そんでもって腹立つ程無駄に恰好いい顔立ちしてやがるな! よくわかるわ! それが一体何だ!?
皇君は僕が他に逃げられないようにと、腕を机の前に起き、退路を塞ぎます。そんなことせんでもちゃんと答えるわ!
「知ってるも何も、昼休みに偶然廊下で会ったんですよ。購買を探しているようで、偶々」
「偶々ねえ。それでお前、今日はやけに上機嫌だと思いましたが、彼が関係しているのですか?」
「そ、それがどうしました?」
だ、駄目です。この魔王・皇に紫瞠君の可愛さを話してしまっては駄目です! いえ、紫瞠君とこの男が同じクラスであったとしても、まだ僕しか知らない紫瞠君の可愛さをこの男に知られてしまっては駄目なのです! 紫瞠君を……我が弟を死守です、死守!
僕は皇君を睨むように見上げると、この男は何を思ったのか。
「まさかとは思いますが。彼を好きになった、という馬鹿な感情を抱いていないでしょうね?」
「はあ?」
何を言ってるんだ、この男は? 何を言ってるんだ、この男は!?
「同級生を好きになって何が悪いんですか?」
この時の僕は知りませんでしたし、今でもわからないのですが。
この回答に、何かこの男を魔物にさせてしまう何かがあったでしょうか?
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