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これぞ王道? 眼鏡転校生が現れました
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しおりを挟むガヤガヤと一層騒がしくなった教室内。僕は腰がアレでしたが、可愛い紫瞠君に困った顔をさせたくなかったので、別室へと移動する事にしました。ガヤガヤと騒がしかったのは、進学クラスの噂の転校生二人がやって来たからでした。確かにこんな美形がウチの様な普通クラスにやってくること自体、芸能人がお忍びで下町にやってくるくらい珍しい事ですからね。
それから思い出しました。この金髪不良さん――もとい金髪転校生君は、昨日偶々資料で見てしまったあの片岡総合病院のお子さんである片岡葉月君です。あまりにもインパクトがあったので、不良さんという偏見をもって見てしまいました。いやでも仕方ないでしょう。この人、まるで昨日にでもすんごい喧嘩をしたかのような風貌だったんだもの。
それはともかく。別室と言っても、僕みたいな平凡学生が人気の少ない穴場を知ってるわけもないのですが、ここで意外にも役に立つ、腐男子坂本君が最近やけに仲の良い副会長である七海君に連絡を取り、特進クラスへの入室を許可してくれました。そうなんです。特進クラスって他生徒が入室する事はたやすくできなくて、許可がなければあの生徒会の親衛隊ですら入る事ができないのです。ちなみに、僕は何度か特別に入ったことがありますが、他クラスと異なるのが、特進クラスだけはまともだと言う事。何がまともかと言うと、あのクラスは親衛隊だの、ホモォだのがない、という事でしょうか。つまり、親衛隊に疎まれている僕が皇君と一言二言話そうが、クラスの人たちがいちゃもんをつけることがないと言う事です。なんと良いクラスでしょうか。いえいえ、これが普通なんだと思います。他クラス、どうしてこの常識が常識じゃないんだ。
僕達はそそくさと特進クラスへと入室すると、そこにはニコニコと微笑んで歓迎してくれる七海君、そして僕にとんでもねえ仕打ちをしやがったあの悪魔が営業用の笑みを貼りつけて待っていました。あの野郎……普段以上に艶々した綺麗な顔してやがんな。
僕は片岡君の後ろにいる紫瞠君を、あの悪魔から守るように前へと出ていきましたが、七海君がどうぞと空いている席に僕達を誘導してくれたため、そこに大人しく並んで座ることになりました。ええと、片岡君、紫瞠君、僕、坂本君の順ですね。そして向かいに、悪魔と七海君が腰を下ろしました。
ガルルル。
「まあまあ、そう威嚇しないで平凡君。これでも若、反省してるからさ」
「七海」
「本当の事でしょ、全く。こ~んな人畜無害で可愛い可愛い紫瞠君に妬き」
「いい加減にしないとお前の秘密を暴露しますよ」
「はいはい。ここら辺にしておきますよ……って、坂本君? どうしたの?」
「別に。何でもないです」
ガルルル……んん? 何? 皇君がたまに機嫌が悪くなるのはいつものことだとして、何故に坂本君が不貞腐れてるんですか? そんでもって七海君がやけに嬉しそうに坂本君を見ているし。何? 何が起こっているの?
「とりあえず、話進めていい?」
ここで。おいてけぼりになりつつあった、眠そうな表情の片岡君が口を挟みました。いや、挟んでくれてありがとうです。ものすごく、ダウナーな感じの人みたいですが。
片岡君はにこりともせずに、しかしぺこりと頭を軽く下げて僕達に挨拶をしました。
「初めまして。昨日からこのクラスに転校してきた片岡葉月です。こんなナリしてますが、喧嘩はすげえ嫌いです。家は病院っつーか、祖父が片岡総合病院の院長をしています。急にクラスに押しかけてごめんね。でも昨日はこっちの柳がお世話になったみたいで」
と、隣にいる紫瞠君の頭を撫で撫でしながら、片岡君は自己紹介を終えました。こうして見ると、なんだか兄弟みたいですね。似てませんけど。
「いえいえ、こちらこそ」
僕も片岡君同様、頭を下げました。片岡君、怪我はしてますが、常識人みたいです。派手な外見からは想像もつかないくらい、礼儀はしっかりとしています。良かった~。
ここは僕も、ちゃんと挨拶をせねばです。口を開いて僕は自分の名前を言おうとしました……しかし。
「僕は坂本と言います。そしてこっちが友人の平凡君です」
「おい」
坂本君が先に自己紹介を済ませ、ついでとばかりに僕の方まで適当に紹介を済ませやがりました。本当にこいつ、縁を切ったろうか。
すると、片岡君は何かに気づいたように片眉を上げてついでに首を傾げました。そして……
「へっ?」
「平凡……ああ、ヘーボンじゃなくて平凡ね。どうりで、どこからどうみても日本人なわけだ」
紫瞠君を超えて僕の方にその長い手を伸ばしたかと思ったら、そのまま僕の頬に手を当てて自分側に顔を寄せる様にして近づけました。近っ!? ってか、イケメン! この人も皇君に負けず劣らずのイケメンだな!?
ぐいっとさらに近くなる僕と片岡君の距離。しかしそこに。
「うおおっ!?」
僕を引っぺがす様にして僕の腕を引っ張り、まるで俵を担ぐようにヘッドロックを決めた輩がいたのです。そう。この傍若無人が。
「すみませんが、片岡君。あまり、私の目の前でコレに気安く触れないでもらえますか?」
「ふぉ、ふぉのやふぉお」
この野郎っ。いきなりヘッドロックを決めてくるたぁいい度胸じゃねえか。しかもいい匂いしてやがんな、ちくしょう!
僕が皇君の腕の中でふごふごと呼吸を繰り返し、決して無駄ではないと信じている抵抗をしている中、片岡君は何か納得したのか皇君に短く謝りました。
「ああ、ごめん、ごめん。そういうことね。でも安心して。俺、野郎に興味ないから。むしろ……」
「ふえっ?」
「俺は柳にしか興味がないから」
そして片岡君は、まるで天使の様に華奢で小さな紫瞠君を抱きかかえると、そのまま自分の膝の上に彼を乗せ抱きしめたのです。ちくしょう! 僕も大きかったらやってみてえな!
弟を取られたような悔しい気持ちで、まだなお皇君にヘッドロックを決められている僕は指を咥える事も出来ずにただ見ているだけでしたが、この男がそれに突っ込まずにいられるわけがありませんでした。
「クワシク!!」
「おいこら、そこの腐男子っ!」
何でもかんでもホモォに繋げるんじゃねえよ。
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