45 / 51
腐男子坂本くんの○○な日
3
しおりを挟む出てきたカフェから電車二駅、そこから歩くこと十五分のところに貴腐人ロードはあります。僕が行きたいお店はたくさんありますが、中でも比較的ライトなお店を選んでそこへ入りました。ブードシ先生の新刊も入荷されているはずですし、一割ほどは一般的な漫画、ラノベもありますから、パンピーの七海君が入っても退屈しないことでしょう。といっても、七海君は僕にぴったりで離れないんですけどね。
色付き眼鏡を少しだけ指でずり下ろし、腐だらけの店内を見渡しながら七海君が感想を漏らしました。
「へ~、ここが貴腐人ロードのお店かぁ。見事に女の人ばかり、ホモな絵ばかりだね」
「ここはBLをこよなく愛する人の為のエリアですからね。リアルBLはありませんが……」
「リアルBLならここにいるじゃない」
七海君が自分を指差しました。そんなさらりと言えるなんて、少しだけ悔しいじゃないですか。
しかし、さすがはお姉様方ですね。七海君を目にしてもきゃあきゃあ騒ぎません。一瞬だけ、七海君へと視線をやるも、皆さんすぐにご自分の買い物へと集中されます……きっと脳内で静かに感極まっていらっしゃるんでしょう。わかります。わかりますよ。だって同人誌を持つ手が震えてらっしゃいますもん。それから僕に向かって、親指を立てて向けるのも。イケメンを連れてきて労われたのは初めてです。
店内のマナーを守りつつ、僕は一目散に商業新刊コーナーへと向かいました。一般的な本屋なら、隅の方だったり、壁際だったりと追いやられてしまうBLコーナーですが、ここは別。辺り一面にホモ漫画を並べてくれています。
今月も豊作ですね。沙那ちゃんと語らいたい新刊たちですが、今日はブードシ先生一択です。『異世界転生した俺だけど、そんな奥まで挿れちゃらめえ…!』です。タイトルは毎度、酷くなっていってますがどこまでも追いかけますよ、ブードシ先生。
平積みコーナーの前で目を皿のようにして目当ての漫画を探し始めると、僕の隣で七海君が「お」と声を上げました。そしてスッと手を伸ばすと、裸のガチムチメンズが触手によって「あは~ん」なポーズを取らされている表紙のそれを五冊ほど纏めて手に取ります。その一瞬だけ、近くにいたお姉様が小さく悲鳴を上げました。
しかしそんな悲鳴も気にせず、七海君はそこから比較的綺麗な物を選ぶと、二冊だけ右手に、そして残った三冊を棚に戻して僕に表紙を向けて確認を取りました。
「これだよね? タカちゃんのお目当て」
「あ、はい。そうです……」
「ん。待ってて」
そう言って、七海君はスタスタと入り口付近まで行ってしまい、そこで会計を済ませると黒のビニール袋を掲げて僕のところまで戻ってきました。そしてブードシ先生の新刊が二冊入ったそれを僕へと差し出して……
「はい、新刊」
ニコリと微笑みました。
また一瞬、「きゃあっ!」と沸き上がる歓喜の悲鳴が。でも僕は、そんなの気にしませんでした。いえ、気になりませんでした。
差し出されるそれを両手で受け取り、僕は胸に抱きしめました。
「……ありがとう、ございますっ」
ブードシ先生のホモ漫画を目にしても臆することなく、またドン引くことなく手に取って、僕にプレゼントしてくれたことは、もちろん嬉しいです。ですがそれだけでなく、僕がお気に入りの漫画は必ず二冊購入していることを知っていて、そうしてくれたその気持ちがとても嬉しくて、嬉しくて……。
ホモ漫画を抱きしめながら、七海君にお礼を言いました。この時、僕がどんな顔をしていたかなんてわかりません。
だから七海君が何を思ったのでしょう? 公共の場だというのに、僕を抱き寄せて頬にキスをしたんです。
沸き上がる悲鳴。店員さんが抱えていた同人誌を盛大に床へと落としました。
僕もびっくりして小さな悲鳴を上げると、七海君がとても嬉しそうに笑っていました。
「こっちこそ、幸せをありがとう」
15
あなたにおすすめの小説
色欲も時代には勝てないらしい
もにゃじろう
BL
前世で恋人だった運命の人に、今世では捨てられてしまった祐樹。前世で愛してくれた人は彼以外誰もいないのだから、今後僕を愛してくれる人は現れないだろう。その事を裏付けるように、その後付き合う人はみんな酷い人ばかりで…………。
攻めがクズでノンケです。
攻め・受け共に、以外とのキスや行為を仄めかす表現があります。
元クズ後溺愛×前世の記憶持ち
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
幼馴染は僕を選ばない。
佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。
僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。
僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。
好きだった。
好きだった。
好きだった。
離れることで断ち切った縁。
気付いた時に断ち切られていた縁。
辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる