【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます

天白

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初夜でした

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 バッ、と海さんを見ると、彼は小さく首を縦に振った。

 じゃあ、魅色ちゃんと海さんの関係って……。

「そっかぁ。そうなんだぁ」

 あの人、秘書さんだったんだ。てっきり、運転手さんかと。

 でも、秘書って。本当に海さん、何をしてる人なんだろう?

 お店を経営してるから?

 ますます、自分の旦那さまが謎だということを思い知らされる僕。

 そして、魅色ちゃんは答えのわかった僕に対し、小さく付け加えた。

「まぁ、それ以前から知っているんだけどね。……関わりたくもなかったけど」

「?」

 それってどういうこと? と、聞こうとしたら。

「柳」

「はい?」

「風呂に入りたがっていたでしょう? もう晩いですし、今夜はシャワーだけにして寝なさい。バスローブはそこのラックにあります」

 と、話を逸らされてしまった。

 魅色ちゃんも、これ以上は話さないとばかりに、口を閉じちゃったし。

 ものすごくナチュラルだったけど、もしかして、話を掘り下げないようにされたのかな?

 究明されたくないんなら、仕方ないけど……気になる。

 それにそう!

 海さんに言われて思い出したけど、僕ってばお風呂に入りたいっていうことになってたね! あの時は席を外さなきゃ、って思って適当なこと言ったけど。

 でも、確かに今夜はもう晩いから、海さんの言うとおりシャワーだけでいいかも。

 いや。それよりも、海さんと喧嘩したことや、魅色ちゃんの突然の訪問ですっかり忘れていたんだけども!

 僕、アレの処置がしたいから洗面所を借りたかったんだよね。もう痛くはないから、多分大丈夫だと思うけど、放置は目に悪影響だよなぁ。

 そういうわけで、僕は海さんの言葉に甘えることにした。

「じゃあ、お先にご無礼します」

 ぺこりと一礼。

 海さんは僕を放して、バスルームから出ていく。

 仲の悪いだろう海さんと魅色ちゃんを、二人きりにすることに、少しだけ後ろ髪を引かれるんだけれども。

 その不安を拭い去るかのように、魅色ちゃんは「大丈夫よ」と小さく耳打ちをした。

「それよりも、今後、あの人が貴方に変なことをしないようにとくと言っておくから。まだ十八にもなってないんだから、セックスは駄目よ?」

 ということは、十八になったら解禁なんだね。

 今のうちに勉強しておこう。

「わかった」

「いい子ね」

 頷く僕に魅色ちゃんは満足そう。よ~し、がんばろ。

「魅色。早く出なさい」

「はいはい。わかってるわよ……じゃ、後でね」

「うん」

 こうして、海さんに促され、魅色ちゃんもそこから出ていき、僕一人になったところで。

 魔法が解ける。

「う~ん。いつ見ても変な色」

 僕は眼鏡を外し、そして両目に貼りつけた偽物を取り外して、本当の僕になった。

 そこには、鮮やかに輝く二つのバイオレット。

「つけたまま寝ちゃったから、真っ赤になってるかと思ったけど……大丈夫だね」

 でも赤になってたら、旦那さまとお揃いだったのに。結婚した身としては、バイオレットより、そっちのほうが、よかったなぁ。

 黒髪黒目の純日本人を装い、偽っていた身としては、そちらのほうが不自然であるはずなのに、カラーコンタクトレンズを外して本当の色であるバイオレットにそれを感じてしまうというのは、僕がどれだけ自分の両目を好きじゃないのかということ。

 極めて稀だと言われる、この紫色の両目が、はっきり言って嫌いだった。

「絶対、どっかの異国の血が混じってるよね。僕の身体」

 生まれてすぐに「奉公」に出された僕は、自分の出生に関わることや、実の両親を知らずに育った。

 龍一様のいる真城家にいたのだって、つまりはそういうこと。「奉公」に出てるのに、とてもお世話になったね。

 ホント。お世話になった。

 大抵は、どこの家でも僕は役に立たない上に、この目の色が気味悪いらしくってさ。どの家でも「奉公」は長続きしなくて、僕はいろんなとこを転々としてたんだ。早いときなんか、1か月もなかったもん。その中でも一番長く続いたのは、真城に来る前の家だったかな。

 だからってわけじゃないけど、普段はずっとこの目の色を隠していて。本当の自分になるときだって、お風呂に入る時や、寝るときくらいしかないんだよ。

 そしてこのことを知っている人間も、今やごく僅かしかいないんだ。

 だからもちろん。数回しか会ったことのない海さんが、龍一様から僕の事を聞かされていないのなら、このことを知っているはずがないんだ。あの時、大きい声を出して言いそびれてしまった「秘密」は、このことだった。

「海さん。これ見たらびっくりするかなぁ。あと……」

 あと。もう一つ。

 これはただ、人を驚かせたくなくてわざわざ言わないだけなのだけど。やっぱり、それを見る人は驚く表情をしてしまうから、なるべく隠したくて。

 それを龍一様に打ち明けたら、一年くらい前に眼鏡を渡されたんだ。直接的には隠せないけれど、その足しにはなるだろうって。

 だから掛け始めた伊達眼鏡。でも、旦那さまになる海さんには、言わなくちゃいけないのかもしれない。

 突然目にしたら、やっぱり驚くだろうから。

 ま、考えたって仕方ないや。これからずっと一緒なんだから、いずれはバレちゃうし。

 呑気に、僕は服を脱ぎ始めた。

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