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初夜でした
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部屋同様に広々とした浴室は、僕の想像の範疇を超えていた。龍一様のところは純和風の木桶だったから、それとは真逆のそれはまるで遊園地のように僕をわくわくさせたんだ。
それでも、今夜は海さんの言われた通りにシャワーだけに留めておこうと、備え付けの高そうなシャンプーとコンディショナー、そして石鹸を使って髪や身体を洗った後、「いいお湯だった」と早々に上がった。
でも、あんなに広いバスタブでお湯に浸かれば、最高なんだろうな~。大理石っていうの? すごく綺麗な石で造られたバスタブだったから、シャワーだけなのがすごくもったいなく感じたよ。朝早く起きたら、入れるかなぁ。入りたいなぁ。
濡れた髪をふかふかのタオルで拭きながら、二人がいるであろうリビングへと足を運ぶ。
履きなれないスリッパで、豪華な飾り付けの廊下を歩くたびに、パタパタと音を鳴らしてしまう。しかしそれが許されるのは、ここにいるのがあの二人だからだろう。だからといって、決して行儀が良いとは言えない。
「海さんは気にしなくていいですよ、って言うし。魅色ちゃんは可愛いって笑うし」
龍一様だったら、しょうがねぇなって苦笑するだろうな。
真城のお兄さんたちも、普段だったら裸足でいいじゃねぇかって言ってくれるし。
あれ。どうあっても、この状態を叱られないな。
「……いや、一人いるか」
パタリ。音を立てて足が止まる。
あの人だったら、こんな行儀の悪い僕を叱る。叱って、僕に煙草を吸った白い煙を吹きかける。
それでもって……。
「拳骨喰らわされるだろうなぁ」
あれ。痛いんだよなぁ。
そんな痛い想像してしまった僕は、実際は痛くもない頭をさすって笑う。
「でも、結婚したんだから、もう叩かれることはないだろうけど」
しかし、今度は音を立てずにそろそろと廊下を歩き始めた。
辺りを見渡せば、誘惑の数々。
ホントに広いんだもんな~。いろいろじっくり見てみたいって思っちゃっても仕方ないよ、これは。
特にバルコニーってやつ! すっごく気になるよ! シャワー浴びたばかりだけど、ものすごく外に出たいよ!
高い所ってなんだかわくわくするよね。高所恐怖症の人には共感されないんだけど、僕は高い所大好きなんだ。今度から住む部屋も最上階だし、毎日がわくわくだね。
う~。明日でもいいから、バルコニーに出たいなぁ。駄目かなぁ。
僕は心の欲求と格闘しながら、ついにリビングの前に辿り着く。
海さんにはまだ見せていない、バイオレットの僕の目。このままリビングに出ていけば、その事実を知っている魅色ちゃんはともかく、海さんはびっくりするんだろうな。
でも! 海さんは僕をもらってくれたんだ。大丈夫。海さんはきっと、受け入れてくれるはず!
覚悟を決めた僕は、グッとリビングのドアノブに手を掛けた。
そして……。
「あ~! もう嫌っ! やっぱりこの人とは反りが合わないわ!」
「だったら、出ていけばいいでしょう。部屋もとったことですし」
「できるわけないでしょ! 柳ちゃんがちゃんと寝付くまではここにいるわよ!」
「心配せずとも、今夜はアレに手を出しませんよ……まだまだ子どもとわかったことですし」
「なっ……! やっぱり柳ちゃんに手を出したのね!? どこまで手をつけたのか正直におっしゃい!」
「フッ」
「もう~ムカつく!! この男、本当にムカつく~!!」
僕の覚悟そっちのけで、喧嘩中の二人の声(特に魅色ちゃんの金切り声)が中から轟いてきたものだから、手に掛けたドアノブを回せず、中に入れないでいた。
それでも、今夜は海さんの言われた通りにシャワーだけに留めておこうと、備え付けの高そうなシャンプーとコンディショナー、そして石鹸を使って髪や身体を洗った後、「いいお湯だった」と早々に上がった。
でも、あんなに広いバスタブでお湯に浸かれば、最高なんだろうな~。大理石っていうの? すごく綺麗な石で造られたバスタブだったから、シャワーだけなのがすごくもったいなく感じたよ。朝早く起きたら、入れるかなぁ。入りたいなぁ。
濡れた髪をふかふかのタオルで拭きながら、二人がいるであろうリビングへと足を運ぶ。
履きなれないスリッパで、豪華な飾り付けの廊下を歩くたびに、パタパタと音を鳴らしてしまう。しかしそれが許されるのは、ここにいるのがあの二人だからだろう。だからといって、決して行儀が良いとは言えない。
「海さんは気にしなくていいですよ、って言うし。魅色ちゃんは可愛いって笑うし」
龍一様だったら、しょうがねぇなって苦笑するだろうな。
真城のお兄さんたちも、普段だったら裸足でいいじゃねぇかって言ってくれるし。
あれ。どうあっても、この状態を叱られないな。
「……いや、一人いるか」
パタリ。音を立てて足が止まる。
あの人だったら、こんな行儀の悪い僕を叱る。叱って、僕に煙草を吸った白い煙を吹きかける。
それでもって……。
「拳骨喰らわされるだろうなぁ」
あれ。痛いんだよなぁ。
そんな痛い想像してしまった僕は、実際は痛くもない頭をさすって笑う。
「でも、結婚したんだから、もう叩かれることはないだろうけど」
しかし、今度は音を立てずにそろそろと廊下を歩き始めた。
辺りを見渡せば、誘惑の数々。
ホントに広いんだもんな~。いろいろじっくり見てみたいって思っちゃっても仕方ないよ、これは。
特にバルコニーってやつ! すっごく気になるよ! シャワー浴びたばかりだけど、ものすごく外に出たいよ!
高い所ってなんだかわくわくするよね。高所恐怖症の人には共感されないんだけど、僕は高い所大好きなんだ。今度から住む部屋も最上階だし、毎日がわくわくだね。
う~。明日でもいいから、バルコニーに出たいなぁ。駄目かなぁ。
僕は心の欲求と格闘しながら、ついにリビングの前に辿り着く。
海さんにはまだ見せていない、バイオレットの僕の目。このままリビングに出ていけば、その事実を知っている魅色ちゃんはともかく、海さんはびっくりするんだろうな。
でも! 海さんは僕をもらってくれたんだ。大丈夫。海さんはきっと、受け入れてくれるはず!
覚悟を決めた僕は、グッとリビングのドアノブに手を掛けた。
そして……。
「あ~! もう嫌っ! やっぱりこの人とは反りが合わないわ!」
「だったら、出ていけばいいでしょう。部屋もとったことですし」
「できるわけないでしょ! 柳ちゃんがちゃんと寝付くまではここにいるわよ!」
「心配せずとも、今夜はアレに手を出しませんよ……まだまだ子どもとわかったことですし」
「なっ……! やっぱり柳ちゃんに手を出したのね!? どこまで手をつけたのか正直におっしゃい!」
「フッ」
「もう~ムカつく!! この男、本当にムカつく~!!」
僕の覚悟そっちのけで、喧嘩中の二人の声(特に魅色ちゃんの金切り声)が中から轟いてきたものだから、手に掛けたドアノブを回せず、中に入れないでいた。
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