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初夜でした
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う~ん。なんだろう。
あの二人、喧嘩している(一方的に魅色ちゃんが怒っているだけだけど)はずなのに、なんだか仲が良いんじゃないかなって思ってしまうのは僕の気の所為だろうか?
それにこんな感じの喧嘩、どっかで見たことあるんだよなぁ。
「だいたい貴方、昔からそうなのよ! 澄ました顔して腹の中では何考えているかてんでわかんないんだから! しかも考えていることなんて常人じゃ思いつかないようなえげつないことばかりだし」
「それはそうでしょう。単に思いつくようなことを頭に上げていては、それは考えているうちに入りません。知能が何のためにあると思っているんですか?」
「ほら、この返し方! 本当に腹立たしいことこの上ないわねっ! 男なら拳でかかってきなさいよ、拳で!」
喧嘩上等の精神はいいけど、乱闘はやめてね。魅色ちゃん。
もしも海さんが殴っちゃったら、秘書さんが……ええっと、哀しむから。殴り合いの喧嘩吹っ掛けた魅色ちゃんに。
ドア一枚挟んだリビングの向こう側で、僕は心の中で仲介に入る。
全くもって意味がないけどね。
依然、二人に気付かれない僕は静かに、ドアの向こうで聞き耳を立てる。
魅色ちゃんがここまで怒鳴り続けるのも珍しいからね。
う~ん。仲が悪いといえば、悪いんだろうけど。あの二人の喧嘩って……ああ、そうか! わかった! これ、兄妹の喧嘩みたいに見えるんだ! 容姿は全く似てないけどさ。
そう思って改めて二人の様子を見ると、なんだか微笑ましくなるね。
魅色ちゃんに言ったら怒られそうだけど。
思わず笑っちゃう僕をよそに、魅色ちゃんは疲れたのか、急に声量を落とした。
どうやら一時休戦モードらしい。
「でも、なんなの? 今夜は気味が悪いくらい饒舌よね。いつもはもっと、口数が少ないってのに……」
え? あれで饒舌なの?
「これも柳ちゃんの影響なのかしら? まだ数回しか会ってない柳ちゃんを、ずいぶん気に入ってらっしゃるようね。そりゃあ、可愛いすぎるくらいに可愛い子だけど」
きゃ。
「さっきの言葉を信じたわけじゃないけど、貴方が本当に柳ちゃんを愛しているとして、お聞きするわよ。いったいあの子のどこを見染められたっていうの?」
「そうですね……」
うわ。なんかドキドキする。
こういうのって、盗み聞きしちゃいけないのはわかってるんだけど、知りたいよね。すごく気になるよ。
音声のみでお楽しみください状態だけど、ここで僕が出ちゃったらきっと聞けないもんね。
僕は息をひそめて、固唾をのんだ。
「今までに見たことのないタイプですからね。まず、見てて飽きません」
「確かにそうね。私たちの身近には、あんなタイプいなかったものね」
ど、どんなタイプですか……?
心の中で質問するも、それが二人に届かないのは当然のこと。会話は僕を置いて先へと進む。
そして。
聞かなきゃよかったと。
やはり盗み聞きは良くないことだと、僕はすご~く後悔する。
「どこがというわけではありませんが。強いてあげれば、平凡なところでしょうか。容姿ともに擦れたところがありませんし。それに私と違って、目立つこともありませんからね」
「あら、貴方のその髪、コンプレックスだったの?」
「そうではありません。ですが、奇異や好奇の目で見られることが鬱陶しいことこの上ないのでね……好きになれたことは一度もない」
あの二人、喧嘩している(一方的に魅色ちゃんが怒っているだけだけど)はずなのに、なんだか仲が良いんじゃないかなって思ってしまうのは僕の気の所為だろうか?
それにこんな感じの喧嘩、どっかで見たことあるんだよなぁ。
「だいたい貴方、昔からそうなのよ! 澄ました顔して腹の中では何考えているかてんでわかんないんだから! しかも考えていることなんて常人じゃ思いつかないようなえげつないことばかりだし」
「それはそうでしょう。単に思いつくようなことを頭に上げていては、それは考えているうちに入りません。知能が何のためにあると思っているんですか?」
「ほら、この返し方! 本当に腹立たしいことこの上ないわねっ! 男なら拳でかかってきなさいよ、拳で!」
喧嘩上等の精神はいいけど、乱闘はやめてね。魅色ちゃん。
もしも海さんが殴っちゃったら、秘書さんが……ええっと、哀しむから。殴り合いの喧嘩吹っ掛けた魅色ちゃんに。
ドア一枚挟んだリビングの向こう側で、僕は心の中で仲介に入る。
全くもって意味がないけどね。
依然、二人に気付かれない僕は静かに、ドアの向こうで聞き耳を立てる。
魅色ちゃんがここまで怒鳴り続けるのも珍しいからね。
う~ん。仲が悪いといえば、悪いんだろうけど。あの二人の喧嘩って……ああ、そうか! わかった! これ、兄妹の喧嘩みたいに見えるんだ! 容姿は全く似てないけどさ。
そう思って改めて二人の様子を見ると、なんだか微笑ましくなるね。
魅色ちゃんに言ったら怒られそうだけど。
思わず笑っちゃう僕をよそに、魅色ちゃんは疲れたのか、急に声量を落とした。
どうやら一時休戦モードらしい。
「でも、なんなの? 今夜は気味が悪いくらい饒舌よね。いつもはもっと、口数が少ないってのに……」
え? あれで饒舌なの?
「これも柳ちゃんの影響なのかしら? まだ数回しか会ってない柳ちゃんを、ずいぶん気に入ってらっしゃるようね。そりゃあ、可愛いすぎるくらいに可愛い子だけど」
きゃ。
「さっきの言葉を信じたわけじゃないけど、貴方が本当に柳ちゃんを愛しているとして、お聞きするわよ。いったいあの子のどこを見染められたっていうの?」
「そうですね……」
うわ。なんかドキドキする。
こういうのって、盗み聞きしちゃいけないのはわかってるんだけど、知りたいよね。すごく気になるよ。
音声のみでお楽しみください状態だけど、ここで僕が出ちゃったらきっと聞けないもんね。
僕は息をひそめて、固唾をのんだ。
「今までに見たことのないタイプですからね。まず、見てて飽きません」
「確かにそうね。私たちの身近には、あんなタイプいなかったものね」
ど、どんなタイプですか……?
心の中で質問するも、それが二人に届かないのは当然のこと。会話は僕を置いて先へと進む。
そして。
聞かなきゃよかったと。
やはり盗み聞きは良くないことだと、僕はすご~く後悔する。
「どこがというわけではありませんが。強いてあげれば、平凡なところでしょうか。容姿ともに擦れたところがありませんし。それに私と違って、目立つこともありませんからね」
「あら、貴方のその髪、コンプレックスだったの?」
「そうではありません。ですが、奇異や好奇の目で見られることが鬱陶しいことこの上ないのでね……好きになれたことは一度もない」
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