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生まれ変わったΩが起こしたキセキ
END?
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それからしばらくして、俺は宗佑と共に屋敷を後にした。本来の目的である一喜の墓参りをする為だ。
陸郎は俺の絵を見るのに夢中で屋敷の中に残した。ただ一人ではご迷惑をかけるかもしれない為、耀太君についていてもらうことにした。絵を目にしてからというもの興奮しっぱなしで、どれもこれも素晴らしい! 見事だ! やはり儂の母ちゃんは世界一だ! と、引き気味の耀太君相手に絶賛している。可哀想に。後で飴か何かを買ってあげるとしよう。
しかし、絵の中の俺がやけに美しく描かれていたからだと思うが、あんなに美人だっただろうか? 恵も自分とはいえ、やはり前世だ。記憶が大分朧気で、あまりにも美しいあの絵が盛られているのではないかと疑わしく感じる。
対して、宗佑はほくほく顔だ。
「良かった。陸郎殿が私と圭介の結婚を認めてくれて。あれで駄目だったら、どうしようかとドキドキしていたよ」
最後まで冷静沈着だった宗佑からは、緊張なんてものはさらさら感じられなかった。俺はふふっと笑った。
「あれだけ大量の恵をもらえるとなればな……俺としては二、三枚で充分なんだけど」
「ヌードもあるよ」
「えっ、嘘!?」
「ごめん。それは嘘」
「もうっ!」
そんな楽しいやり取りをしながら、手を繋いでしばらく歩いた先に小さな墓地を見つけた。本家からそう遠く離れていないそこには墓石が数えるほどしかない。
宗佑は丹下と彫られた墓石の前で立ち止まった。
「ここが曾祖父、一喜の墓だよ」
「うん。ありがとう」
さすがというべきか立派な墓だ。綺麗に手入れをされており、添えられている花も新しく変えられたばかりの物が活けてある。良かったな、一喜。お前は家族からこんなにも大切にされているよ。
その隣には、同じく丹下と彫られた小さな墓石があった。一喜の眠る大きく立派な墓に比べれば、それはやけにこぢんまりとしていた。
「こちらは?」
「正臣が眠る墓だよ」
なるほど。嫌われていても墓はきちんと建ててもらえたのだな。もしかしたら、あの俺の絵を描く姿を見て一喜の正臣に対する気持ちが変わったのかもしれないな。
「それから、これを」
宗佑が俺へと差し出したのは、一つの骨壺だった。
「遺骨?」
「恵さんのだよ。曾祖父がずっと迷っていたらしいんだ。正臣の墓に入れるか、どうするかをね」
結局、決められないまま一喜は亡くなり、丹下本家でずっと保管されていたとのことだった。根は優しい子だったのだ。いくら正臣を嫌っていても、非情にはなりきれなかったのだろう。
俺は骨壺を受け取った。
「一喜らしいな」
「君が決めるといい」
不思議だ。自分を腕に抱く日が来るとは……こんなこと、死なない限りあり得ない。当たり前だが、とても軽く感じた。
ぎゅっと自身を抱いてから、俺は決断した。
「うん。恵は正臣と共に眠らせてあげて欲しい。安らかに、というわけにはいかないだろうけど」
あの美しすぎる恵が隣にいくのだ。きっと驚くだろうな。いつまた発情してもおかしくない。でもその時は、貴方が抑えてくれるのだろう? なあ、正臣。
そう彼に語りかけながら墓石を見つめていると、宗佑がジャケットの胸ポケットから一枚の写真を取り出した。
「そうだね。私も、この写真の中の彼を見ていると、そうは思えない。きっと正臣がびっくりしちゃうだろうね」
「ああ……ふふっ。私らしいや」
写真を受け取ると、そこには六人の子供達と一緒に写るかつての俺がいた。まだ一歳かそこらの陸郎を抱き、カメラに向かってにっかりと笑う俺は確かに綺麗だが、美しいというよりは逞しい母の顔をしていた。
正臣の描いたあの絵はやはり美しすぎる。それもそうか。彼の前ではまだ母ではなかったからな。
モノクロで不鮮明ではあるものの、この写真を撮った日のことはよく覚えている。家族写真だよ、と。まだ高価だったそれがどうしても欲しかった。
一喜、ニコ、三貴、志雄、皐月、そして陸郎。全員が揃って笑う、奇跡の一枚だ。
愛していたよ。そして、愛しているよ。
「愛しているよ、宗佑」
「ああ、私もだよ」
こうして俺は、二度目の人生を楽しむことを、墓前で彼らに誓ったのだった。
陸郎は俺の絵を見るのに夢中で屋敷の中に残した。ただ一人ではご迷惑をかけるかもしれない為、耀太君についていてもらうことにした。絵を目にしてからというもの興奮しっぱなしで、どれもこれも素晴らしい! 見事だ! やはり儂の母ちゃんは世界一だ! と、引き気味の耀太君相手に絶賛している。可哀想に。後で飴か何かを買ってあげるとしよう。
しかし、絵の中の俺がやけに美しく描かれていたからだと思うが、あんなに美人だっただろうか? 恵も自分とはいえ、やはり前世だ。記憶が大分朧気で、あまりにも美しいあの絵が盛られているのではないかと疑わしく感じる。
対して、宗佑はほくほく顔だ。
「良かった。陸郎殿が私と圭介の結婚を認めてくれて。あれで駄目だったら、どうしようかとドキドキしていたよ」
最後まで冷静沈着だった宗佑からは、緊張なんてものはさらさら感じられなかった。俺はふふっと笑った。
「あれだけ大量の恵をもらえるとなればな……俺としては二、三枚で充分なんだけど」
「ヌードもあるよ」
「えっ、嘘!?」
「ごめん。それは嘘」
「もうっ!」
そんな楽しいやり取りをしながら、手を繋いでしばらく歩いた先に小さな墓地を見つけた。本家からそう遠く離れていないそこには墓石が数えるほどしかない。
宗佑は丹下と彫られた墓石の前で立ち止まった。
「ここが曾祖父、一喜の墓だよ」
「うん。ありがとう」
さすがというべきか立派な墓だ。綺麗に手入れをされており、添えられている花も新しく変えられたばかりの物が活けてある。良かったな、一喜。お前は家族からこんなにも大切にされているよ。
その隣には、同じく丹下と彫られた小さな墓石があった。一喜の眠る大きく立派な墓に比べれば、それはやけにこぢんまりとしていた。
「こちらは?」
「正臣が眠る墓だよ」
なるほど。嫌われていても墓はきちんと建ててもらえたのだな。もしかしたら、あの俺の絵を描く姿を見て一喜の正臣に対する気持ちが変わったのかもしれないな。
「それから、これを」
宗佑が俺へと差し出したのは、一つの骨壺だった。
「遺骨?」
「恵さんのだよ。曾祖父がずっと迷っていたらしいんだ。正臣の墓に入れるか、どうするかをね」
結局、決められないまま一喜は亡くなり、丹下本家でずっと保管されていたとのことだった。根は優しい子だったのだ。いくら正臣を嫌っていても、非情にはなりきれなかったのだろう。
俺は骨壺を受け取った。
「一喜らしいな」
「君が決めるといい」
不思議だ。自分を腕に抱く日が来るとは……こんなこと、死なない限りあり得ない。当たり前だが、とても軽く感じた。
ぎゅっと自身を抱いてから、俺は決断した。
「うん。恵は正臣と共に眠らせてあげて欲しい。安らかに、というわけにはいかないだろうけど」
あの美しすぎる恵が隣にいくのだ。きっと驚くだろうな。いつまた発情してもおかしくない。でもその時は、貴方が抑えてくれるのだろう? なあ、正臣。
そう彼に語りかけながら墓石を見つめていると、宗佑がジャケットの胸ポケットから一枚の写真を取り出した。
「そうだね。私も、この写真の中の彼を見ていると、そうは思えない。きっと正臣がびっくりしちゃうだろうね」
「ああ……ふふっ。私らしいや」
写真を受け取ると、そこには六人の子供達と一緒に写るかつての俺がいた。まだ一歳かそこらの陸郎を抱き、カメラに向かってにっかりと笑う俺は確かに綺麗だが、美しいというよりは逞しい母の顔をしていた。
正臣の描いたあの絵はやはり美しすぎる。それもそうか。彼の前ではまだ母ではなかったからな。
モノクロで不鮮明ではあるものの、この写真を撮った日のことはよく覚えている。家族写真だよ、と。まだ高価だったそれがどうしても欲しかった。
一喜、ニコ、三貴、志雄、皐月、そして陸郎。全員が揃って笑う、奇跡の一枚だ。
愛していたよ。そして、愛しているよ。
「愛しているよ、宗佑」
「ああ、私もだよ」
こうして俺は、二度目の人生を楽しむことを、墓前で彼らに誓ったのだった。
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