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試験開始です。
予選開始です。(ルチル視点)
しおりを挟む「リィは光の防御魔法展開しルチルレイ嬢と待機、ジャスパーは前衛を引きつけよ」
「はっ、お任せを」
「ルチルちょっと下がってね『光の壁』」
ラズーラ王子様の指示の元、私とリモナイト王子様を守る光の壁が現れる。この光はギベオンには若干不快に感じるのか、中へと入るのを拒んで私から少し離れてしまった。アメーリア様の光魔法とは何が違うのかわからないけど、居心地が悪いみたい。
マウシット様も一応参謀として参加されている形になっているけど、試合の時は少し離れて応援してくれています。さっき声を掛けてくれたアメーリア様の姿は、沢山の観客に紛れてしまって見えなくなってます。
「ルチルレイ嬢、ギベオンは人型を取れるか?」
「は、はい!大丈夫です。ギベオン」
『人型は止められているのではないのか?』
「でも、ラズーラ王子様が…」
ギベオンに人型になって前衛で術を使って欲しいのだと思っていたら、まさかのギベオンが疑問をぶつけてくる。確かにギベオンが人型になった事で観客が煩いとは言われたけど、ギベオンだって全力を出すなら人型のほうが良いって言ってたのに。
「ルチルレイ嬢?」
「あ、あの…、ちょっと待って下さい」
(どうして?ギベオンだって、人型の方が力を使いやすいって言ってたじゃない)
ギベオンがジッと見上げているのは、二階席に沢山いる生徒達。普段はこんな人混みに行かないから、沢山居る観客が気になるのかも知れない。これの一つ前の試合でも、歓声が凄くて不機嫌になっていたから。
『我を動かしたいのなら、ルチルが指示を出せ』
「ええ!?む、無理よ、試合なら優勝経験のあるラズーラ王子様の指示の方がいいって作戦でしょ?」
『我はルチルの守護聖獣だ、ルチルの命しか聞かぬ』
真っ直ぐに私を見上げてくる、ギベオンの銀色の瞳が圧倒してくるから少し怖い。ラズーラ王子様をお待たせしているという焦りもあるし、いきなりこんな事を言い出すのがどうしてなのかって混乱してくる。
「ルチル?どうかしたの?ギベオンが人型になれないの?」
「リモナイト王子様…」
「泣かなくても大丈夫だよ、ギベオンが人型じゃなくても他の作戦だってあるからね」
リモナイト王子様の優しい手が、ポンポンと頭に乗せられて優しく撫でてくださる。にこっと笑みを浮かべラズーラ王子様の側へと近付くのを、申し訳ない気持ちで見送ってしまう。混乱して知らずに滲んでいた涙を拭いて、もう一度ギベオンと話をしようとしゃがみ込んだ。
「ギベオン、人型になるのが嫌なのは、人が多いから?」
『それは関係ない』
ふいっと逸らされる狼の顔。
まだちょっと怖いの知ってて顔を背けてくれたのか、本当に逸らされたのか解らないから辛い。ギベオンと話をしている今も、ラズーラ王子様は自らの炎魔法を繰り出して後衛の魔法特進科の生徒を圧倒している。ジャスパー様の剣技も素晴らしくて、二人も相手にしているのに、全く負けてない。
(私一人が完全に足手纏いになってるよ…、どうしたらいいんだろう…)
少しでも、アメーリア様のチームの試合を見学しておけば良かった。
マナー講座の試験や、合同実技試験だから沢山練習しないといけないと、ジャスパー様やマウシット様にお願いして、少しでも使える火魔法の練習ばかりしていたけど、ギベオンが言いたいのはそういう事じゃないんだよね?
「ぎ、ギベオン…。お願い、人型になって教えて欲しいです」
『仕方無い』
小さな溜息を吐いて、ゆっくりとギベオンが人型になっていく。其れと同時に二階席から歓声が上がって試合が止まってしまった。試合の採点をしている教授陣から注意の為に、一時試合が止まってしまう。
「やはり、止められてしまったか」
「も、申し訳ありませんっ、ラズーラ王子様」
「気にしなくてもいい、少し確かめたかったんだ。ギベオン、狼の姿だと術の威力は落ちるのか?」
「我は子猫とは違う」
腕を組んでラズーラ王子様に不機嫌に答えるギベオン、あまりの不敬をどうしたらいいの!?とオロオロしていたら、リモナイト王子様に『大丈夫』って微笑みを頂いてしまった。狼の姿のギベオンよりは、人型のギベオンの方が慣れているけど、このままではいつまで経っても試合が出来ない。
「上位戦でもこの観客は、鬱陶しいな」
「教師とも交渉しております、アイドクレーズが先に掛け合ってくれているそうです」
「試合毎に増えていたからな、丁度いいだろう」
「ギベオン人型になって大丈夫なの?」
「お前の光魔法は、狼のままでは居心地が悪い」
「ぎ、ギベオン!?そんな失礼な言い方…」
ギベオンの言葉に、リモナイト王子様はキョトンとして首を傾げたけど、直ぐに金が掛かったアメジストの瞳を柔らかく細めた。いつもニコニコと笑顔で優しいリモナイト王子様だからこそ、ギベオンの失礼な言い方を笑って許してくださったのかしら?
「きっと、アリアのお菓子のおかげかもねー?」
「そういえば、お前の我が侭が始まりだと聞いたな」
「違うよー、お母様のお願いだよ。持ち込んだのはアトランティ侯爵だしね?」
ふわふわと柔らかく微笑みを浮かべるリモナイト王子様って、本当に可愛くて癒されます。だけど、違うほうを向いたギベオンが、私だけに聞こえる声で『見掛けはまやかしという事か…』って呟いていたのは、何だったんだろう?
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