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試験開始です。
予選開始です(ルチル視点)2
『これから試合の再開をする!』
騒がしかった二階席が静かになり、試合の採点をしてくださっている教授の方々からも、試合再開の連絡が届いた。ギベオンは人型から、狼の姿で試合をするようにと言われてしまいました。次からは対策をするので、今回は特別に加点されるそうです。
確かに、二階席を見上げると、先程までは何処にいるのか分からなかったアメーリア様の姿が見える。その後ろには白い尻尾が二つあって、片方はきっとアズライト様だと思う。アズライト様の隣にいる可愛い女の子は誰だろう?
「んだよ、アイドクレーズいねーなぁ…?試合終わってねーってのに」
「ジャスパー様、お約束でもされていたのですか?」
「いや、先程アイドクレーズの試合を見に行ったからな。ラズーラ殿下もいらっしゃるから来ていると思ったんだが…」
「アイクは騒々しいのを嫌うからな」
昔からの幼馴染なので、ラズーラ王子様もジャスパー様もアイドクレーズ様の事には詳しいです。リモナイト王子様は興味が無いのか、いつの間にか持ち込んでいた王宮特製のクッキーを食べていました。
(あ、ギベオンがさり気無く、リモナイト王子様にお強請りしてクッキー貰おうとしてる!)
大きな狼の前足がリモナイト王子様のマントを引っ張って、後ろに引っ張られたリモナイト王子様が振り返る。大きな口をぱかっと開けたギベオンに、クッキーを指差して首を傾げるリモナイト王子様。その姿にギベオンが縦に頷いている。
いつの間にギベオンが狼に戻ったのか見てなかったけど、クッキーが欲しかったなら人型の時にリモナイト王子様に言えばよかったんじゃないの?何でわざわざ話せない姿でやってるの?ギベオン。
「ルチルー、ギベオンってクッキー上げていいの?」
「あ、はい!大丈夫です。いつもどこからか頂いているようで」
「ふーん……?どこからかねー、そうなんだ」
何を思ったのか、にっこりと天使の笑顔を見せるリモナイト王子様。ギベオンに持っている王宮特製のクッキーを分けてくれるのかと思っていたら、パクッと手に持ったクッキーを一口で食べてしまいました。
(あ、あれ?ギベオンにあげるんじゃ無かったの??)
『この小悪魔め…』
「ごめんねギベオン、食べかけだったから。それでー、最後の一枚だったんだよね。終わったらもう一回貰ってあげる」
「ガルルッ」
「怒らないでよー、この前僕の分のケーキ食べたって、ちゃんと聞いてるんだからね?」
言い方も可愛いし、可愛く微笑んでいるはずなのに、何故かリモナイト王子様の背後が黒い気がします。怖い…。いつも天使の笑顔のリモナイト王子様が怒ってる!?ギベオンの馬鹿、何で王子様のケーキを食べちゃったの!?
「あー…、リィは食べ物には煩いからな」
「リィ殿下は昔から、王宮から届けられる特製のお菓子にだけは厳しいんだ。アリア嬢が用意していたのを、いつの間にか食べていたようだな」
「そう、なんですか…」
(私が魔に憑かれている時に、何をやっていたのよギベオンの馬鹿!!)
試合が再開し、黒い微笑みを浮かべていたリモナイト王子様だったけど、直ぐにその顔は元の可愛い顔に戻っていました。というのも、先程まで試合をやっていた対戦相手が敵わないと棄権したんです。
(え、これって不戦勝って事?)
ぽかんとしている私の肩に、ジャスパー様の大きな手が乗せられて顔を向けると、素敵な笑顔を向けられました。はわわっ!胸がドキドキして息が苦しいです!どうして上流階級の方々は皆さん素敵なんでしょう!?
「お疲れさん、棄権するとは肩透かしだったな」
「あの歓声の前に、少し手合わせしていたからな。戦意を失ったのかもしれん」
「上位戦でも観客が入るのは止めて欲しいですね、去年も上位戦は観覧席を用意していたと聞いていますが」
「今年は無くなるはずだ、こう何度も止められるのは私も困るからな」
ラズーラ王子様の溜息に、護衛のジャスパー様が苦笑を浮かべて二階席を眺めていました。試合も終わったので、二階席にいた応援の生徒は、次々に友達の下へと行っているようです。
「ラズーラ殿下、リモナイト殿下。勝利おめでとう御座います」
「不戦勝も、一応は勝利だな」
「執務室にお茶の仕度をさせております、そちらでお話でも如何でしょうか?」
「ああ、迎えが来るまで時間もあるだろうからな」
「ルチルも一緒に行こう?アリアの淹れてくれるお茶は美味しいよ」
「え、あ、あの…アメーリア様が、お淹れになるのですか?」
皆さんについていけない私に、アメーリア様はにっこりと微笑みを浮かべると、ガッシリと私の腕を捕獲し、引き摺るようにカフェへと連行されたのでした。
上級階級の御令嬢って、意外と力強いですよ、ね?色々と強いですけど。
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