溺愛アルファの完璧なる巣作り

夕凪

文字の大きさ
99 / 184
リヒト⑧

しおりを挟む
 起き抜けはいつも、自分がどこに居てどういう体勢になっているかわからない。

 このときも僕は半分眠りながら、ぼやけた視界の中で顔を巡らせた。

 茶色の髪のひとが見えた。
 テオバルドさんだろうか?

 ここ最近は目覚めたときには彼がベッドの横に居ることが多かったので、きっとテオバルドさんだろうと思いつつ、「……ておばるどさんですか?」と眠気で動かしにくい口をもごもごと開いて問いかけた。

「ひぃっ!」

 テオバルドさんらしきひとがなんだかおかしな悲鳴をあげた。
 と思ったら。

「なんでっ! リヒト! なんでテオなんかを最初に呼ぶの! 僕は? 僕のこと見えてるっ?」

 聞き取りやすくくっきりとした声が響いて、僕の視界が金と新緑のきれいな色で塞がれた。

 ……え?
 え?
 ええ?
 なんでだろう。
 ユーリ様のように見える色合いが、僕に覆いかぶさっている。

 え? 
 どういうこと??

 僕の頭がハテナでいっぱいになって、それから昨日(昨日なのかな? 日付がよくわからないけど、まさか二日も寝てたわけじゃないと思う)見た夢のことを思い出す。

 夢の中ではユーリ様が僕に、僕のオメガ、と言ってくれて。
 一緒に居るための強さが持てるように頑張れと、キスをしてくれて……。

 ということは僕はまだ夢の世界に居るのかな?
 目が覚めたと思ったけれど、まだ夢を見ているのかしら。

 僕はそうっと両手を伸ばして、ユーリ様のような形の顔をてのひらで包んでみた。
 夢の中でユーリ様と会ったときは、体が動かなかったけれど、いまは思う通りに動いた。

 触った、という感触はあまりない。でも僕の手は確かになにかに触れていて、これが夢だとしたら、なんだかとても存在感があってまるで現実のユーリ様のようだと思った。

「僕の夢、すごい……」

 触っても消えないユーリ様に、思わずそう呟くと、
「まだ夢だと思ってるの? リヒト、僕のオメガ、そろそろちゃんと起きようか」
 笑いの混ざった声がそう言って、僕の頬にちゅっとキスが降ってきた。

 その段で僕はようやく、自分の姿勢がどうなっているのかを理解した。
 体には毛布のようなものが巻かれていて、その状態で誰かの膝に横向きに座っているのだ。

 誰かというのはこの、金色の髪に新緑色の瞳のひとで……。

「…………ユーリ様ですか?」

 恐る恐る問いかけたその声は、自分の耳には聞こえなかった。
 ちゃんと音になったかどうかもわからない。
 それでもそのひとが。

「やっと僕の名前を呼んでくれた」
 と言って、笑ったから。
 僕は驚きすぎて、ポカンとしたあと、もがくように手足を動かして体勢を変えようとした。

「うわっ、リヒト危ない。膝から落ちるよ」
「ゆ、ユーリ様ですかっ? 本物のユーリ様ですかっ?」

 注意されたけれどじっとしていられず、僕はバランスを崩しながらもなんとか(というか、たぶんユーリ様の手が背中とかを支えてくれていたのだろう)向かい合わせの形になって、正面からユーリ様の顔を見つめた。

 目と、口の位置はわかる。
 でも他はぼやけてハッキリとは見えない。
 僕の目では、ユーリ様かどうか断言できない。でも。

「もう一度僕を呼んで、リヒト」

 やさしい声で、そう促された僕は、ボロボロと泣きながら口を開いた。

「ゆ、ゆぅりさま。ユーリ様。お帰りなさい。会いたかったです」

 ユーリ様の名前を呼びながら目の前のひとにしがみついた。離れてしまったらまぼろしみたいに消えてしまうではないかと怖くて、怖くて、消えないようにしがみついた。
 そうしたらユーリ様の腕がぎゅうっと僕を抱きしめてくれて。

「ただいま。僕のオメガ」

 こころが震えそうなほどの音が、僕の耳にぼわんと滲んで、胸の奥まで落ちてきた。

 ああ。ユーリ様だ。ユーリ様が居る。
 嬉しくて、嬉しいのに涙が止まらなくて、息が詰まってはふはふと口を開けたら、ユーリ様が軽やかな笑い声をあげられた。

「リヒト、リヒト、目が溶けてしまいそうだよ。ああほら、そのまま顔を上げておいて」

 僕の目尻にユーリ様の唇がつけられて、たぶん、涙を舐めとられた。それからユーリ様はテオバルドさんからハンカチのようなものを受け取って、それで僕の目と、鼻と、口の下を拭いてくださった。
 もしかして僕の顔、ものすごくきたないのじゃないのかな。
 急に心配になって、僕はそろりとユーリ様から顔を離した。でも服を握った手はやっぱり離せなくて、しがみついたままだ。
 そんな僕の頬にまたユーリ様がキスをする。

「リヒト。お風呂に入って、食事にしようか。その前にトイレに行く? あ、喉が渇いているかな。先に水を飲もうか。しまった。いつもの栄養ドリンクを持ってきたらよかった」

 なんだか弾んだ口調で立て続けに言われて、僕は、お腹は空いていなかったけれど久しぶりにユーリ様と食事ができるのだと思うと嬉しくなって、うふふと笑った。

 ユーリ様が突然「あっ」と大きな声を出されて、僕は急に顔をユーリ様の旨に押し付ける形で抱き込まれてしまう。

「見ないでください!」

 ユーリ様が叫んだ。
 一瞬僕に向けられた言葉かと思ったけれど、どこからか、
「なるほど。おまえが隠しておきたがった理由がわかった。これはアマルに見つかったら大騒ぎだな!」
 と、低く、びりびりするような声が聞こえてきて、僕はそろりと振り返った。

「リヒト。見なくていいよ」

 ユーリ様のてのひら? かな? それが僕の目を覆って視界が塞がれた。

「ど、どなたでしょうか。ユーリ様、僕……」
「リヒト。大丈夫。気にしなくていい相手だから」
「なんと! クラウス聞いたか。俺たちの弟があんな無情なことを言うものか。あれはユーリじゃなくてユーリの偽物じゃないのか」

 偽物!
 え? ユーリ様の偽物?
 僕が驚いて身じろぎをしたら、
「兄上! リヒトが混乱するのでやめてください!」
 ユーリ様がそう言って、大きなため息をついてから僕の目の上のてのひらをどけてくださった。

 兄上……兄上って聞こえた気がする。
 ユーリ様のお兄さんといえば、上のお兄さんが国王様で、下のお兄さんがエミール様のつがいで騎士団の……。

「リヒト。上の兄のマリウスと、下の兄のクラウスだよ」

 僕が一生懸命記憶を手繰り寄せるよりも早く、ユーリ様がそう教えてくださった。

 僕はユーリ様の膝の上で半身を捻って、いつの間にか傍に立っていらしたお二人を見上げた。

 金色だ、と思った。
 ユーリ様と同じ金髪のひとたちが、僕を囲んでいる。

 国王様と、騎士団長様。お二人の立場を思い出して、僕は咄嗟にユーリ様の膝から降りて自分で立ち上がろうとした。
 でも腰に回ったユーリ様の腕が、僕の体を固定している。

 結局僕の体はくるりと向きを変えただけで、背中をユーリ様にもたれさせる形で膝に抱かれたまま立つこともできずに、どうしたら良いのか途方に暮れてしまった。

「あ、あの、僕、僕は」
「あらためて、僕のオメガのリヒトです。マリウス兄上、クラウス兄上」

 ユーリ様が僕の代わりにそう言ってくださる。僕は慌てて口を開いた。

「リヒトです! あの、僕は、目が良く見えません。お顔が覚えられません。だから次にお会いしたときにも、お名前をお聞きするかもしれません。ごめんなさい」

 再びお会いする機会があるかはわからなかったけれど、きっと失礼なことをしてしまうだろうか先に謝っておく。

 僕が頭を下げると、後頭部になにかが乗った気配がした。
 なんだろう。首を捻って見てみると、ユーリ様が僕の頭を撫でてくださったのだとわかった。

「リヒト、大丈夫。きみのことは兄たちもちゃんとわかっているから」

 そうなのだろうか。
 でもやっぱり国王様と騎士団長様に失礼があったらいけないと思う。

 あれ、そういえばここはどこなのだろう。
 僕はエミール様のお屋敷に居たはずなのに。
 エミール様のことを思い出して顔を巡らせてみたら、金髪のひとの後ろに、ユーリ様よりも濃い髪色のほっそりとしたシルエットが見えた。
 エミール様だろうか。
 僕の目がそっちを見たことに気づいてくれたのだろう、そのひとが前に出てくる。

「……エミール様ですか?」
「はい、エミールです。リヒト。具合はいかがですか?」

 エミール様のやさしいお声が返ってきて、僕はひと間違いをしなかったことにすこしホッとした。
 それから、夜中にお屋敷に入れてもらった上に僕の吐いたものでエミール様を汚してしまったことを思い出して、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「エミール様、あの、昨日はすみませんでした。僕、エミール様のお洋服を汚してしまって」
「リヒト。汚れたものなどなにもありませんよ。あなたが元気になって良かった。やっぱりあなたにはユーリ様が特効薬なのですね。一緒に眠って元気を分けてもらったのでしょう」
「え?」

 僕はポカンとなって、ユーリ様を振り仰いだ。

 いまのエミール様の言い方だと、ユーリ様が帰って来られたのはつい今しがたのことではなくて。
 僕が体調を崩したすぐ後のことで、それで戻ってすぐに僕と一緒のベッドで寝てくださった、ということなのだろうか。
 ということは、あの夢は。
 ユーリ様と一緒に生きるための強さを持ってほしいと言われた、あのやさしくて、あたたかくて、しあわせなあの夢は。

「……夢じゃ、なかったんですか?」

 涙混じりに僕が呟くと、ユーリ様がやさしい口調で、
「だから最初に夢じゃないよって教えてあげたのに。僕のオメガときたら、夢でいいだなんてさびしいことを言うから、僕はショックで失神寸前だったよ」
 冗談交じりに、そう言って。

「僕を信じるって約束したこと、覚えてる?」
 と、問いかけてきた。
 僕は新緑色の瞳を見つめながら、頷いた。

「いい子」

 ちゅ、とこめかみにユーリ様の唇がつけられる。

「きみの願いは僕がすべて叶えるからね、リヒト。でもその話の前に食事をしないと、僕のオメガが痩せて消えてしまいそうだ」

 僕を抱っこして、ユーリ様がひょいと立ち上がった。
 目線が急に上がって、僕は慌ててユーリ様の肩に手を回す。

「シモン。リヒトをお風呂に入れてもあげてもいいのかな」

 ユーリ様が口にした名前には聞き覚えがあった。そうだ。昨日僕を見てくれた医師のシモンさんだ。

「殿下。先に簡単に診察させていただきたいですなぁ」

 ベンさんによく似たおっとりとした話し方で、シモンさんがそう答えた。
 僕はユーリ様の腕の中でもぞりと動いて、ユーリ様の耳の近くに検討をつけ、そこに口を近づけて囁いた。

「ユーリ様、僕、あの、おトイレに行きたいです」

 ユーリ様が笑いながらまたちゅっとキスを降らせて、   
「僕のオメガは簡単なことしかおねだりしてくれないんだから!」
 と笑った。  


 
 

しおりを挟む
感想 260

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。 オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました

水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。 新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。 それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。 「お前は俺の運命の番だ」 彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。 不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?

水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。 断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。 しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。 これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?

隠れオメガの整備士は自由になりたい。なのに暴走する最強騎士を身体を張って止めたら、運命の番だとバレて過保護な専属契約を結ばされました

水凪しおん
BL
※オメガバース設定。激しい戦闘描写や、執着攻めによるマーキング描写、軽度の性的な接触の描写がありますので、15歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。 汚染された惑星を浄化する生体兵器『機装(ギア)』。 その搭乗者は優れた能力を持つ『アルファ』に限られ、彼らの精神を安定させる鎮静剤として『オメガ』が存在する世界。 整備士のエリアンは、オメガであることを隠し、ベータと偽って軍の最前線で働いていた。 オメガは道具のように扱われるこの社会で、自由を守るための必死の嘘だった。 だがある日、軍最強のエリートパイロット・クレイドの機装が暴走する事故に遭遇する。 死を覚悟して止めに入ったエリアンだったが、暴走する機体はなぜか彼にだけ反応し、沈静化した。 それは、隠していたオメガのフェロモンが、クレイドと強烈な『共鳴』を起こした瞬間だった。 「見つけた。俺の対になる存在を」 正体がバレたと戦慄するエリアンに対し、冷徹なはずのクレイドが向けたのは、処罰ではなく執着に満ちた熱い視線で……? 孤独なエリート騎士×身分を隠した健気な整備士。 星の命運と本能が交錯する、近未来SFオメガバース!

処理中です...