腹ペコ令嬢は満腹をご所望です【連載版】

古森きり

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お腹が空きました!

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「クリスティア様ぁぁ! 助けてください! 俺は関係ないんですー!」
「きゃあ!」
「クリス! 下がって! 誰か! このケダモノを取り押さえて!」
「はっ!」
「おい、暴れるなケダモノ!」

 フィリーとジェーン様に左右を固められ、部屋から出る。
 まあ、なんて恐ろしい……なりふり構わないにしてもお兄様を見習って頂きたいわ。

「なんでおぞましい男……! あんな男にそそのかされてわたくしを裏切っていたのね……サブリナ」
「本当気持ち悪~……。もっと早く知っていればクリスティア様に喧嘩を売るような真似しなかったのに!」
「まあ、ジェーン様……ではジェーン様もわたくしのお友達になってくださいますか?」
「え?」

 廊下に出たあと、真剣に気持ちの悪いものを見る目のジェーン様に提案してみました。
 だって、それなりに一緒にいる時間も増えましたし。
 なんなら結構仲良しになれたと思いますし。
 これからも仲良くやっていけそうですし!

「…………、……でも、あの、いいのですか? 私、あの……」
「わたくしは平民出身なので、味方になってくださる方が多いと助かりますわ」
「……あ……」
「言っておきますけど、裏切ったらただじゃおきませんわよ! わたくし裏切られるの大嫌いですの!」

 フィリーはサブリナ様の件がトラウマなのですわね。
 まあ、それはそうでしょう。

「そんな事しないわ! ……二人がいいなら……私も……友達になりたい……」
「! では、わたくしの事はクリスとお呼びくださいな」
「さ、さすがに急には無理だからクリス様と呼ぶわ。次期王妃様だしね」
「まあよろしいんじゃなくて? わたくしの事は特別フィリーと呼んでもよろしくてよ」
「じゃあ私の事も呼び捨てでいいわ」
「わあ、改めてよろしくお願いしますわ、ジェーン」

 お友達が増えましたー! とっても嬉しいですわ~!
 ルイナもニコニコ見守っていてくれて、なんだか最近とても人間っぽくなった気がします!

「さあ、そろそろダンスが始まりますわ。クリスはミリアム様とアーク様、お二人と踊らなければならないんですから早く戻って!」
「そ、そうでしたわ! ……はあぁ……わたくしダンス苦手なのに……」
「早くも弱音吐かない!」
「ふええぇ……」

 フィリーはかっこよくて優しいんですけど厳しいです~!


 フィリーに促され、会場に戻るとすぐにお城の使用人に呼ばれてしまいました。
 やっぱりダンスの時間が押し迫っていたのです。
 まずはヴィヴィズ王国の王家の者が踊って、開始の合図としなければなりません。
 陛下はニコニコ動く気ゼロ!
 お誕生日なので息子たちが世継ぎとして立派に成長した姿が見たい、とかそんな感じなのかもしれません。
 もちろん……陛下はミリアムのささやかな夢もご存じです。
 アークの王位に対するやる気のなさも。
 だからお二人が本当に望まないのなら——王家の血族の中からでなくともいい。
 国を支えられるほどに優秀な者がいるのなら、その者に王位を与える事も吝かではないと思っておられる。
 それは、わたくしの前世の世界のような……。

「………………」
「お嬢様、どうされたのですか? お急ぎください」
「あ、え、ええ、そうだったわね」

 立ち止まってしまいました。
 ルイナに肩を叩かれて我に返る。
 今、なんとなく——……わたくしがこの世界にクリスティアとして『招かれた』理由が、分かったような気がした。
 でも、それは簡単な事ではなく、時間もとても必要。
 少なくとも陛下やミリアムたちの代ですぐになんとか出来るものではない……。
 でも、提案して、支持していく事は出来る。
 まずは変えなければならない。
 もしも、本当にわたくしの前世住んでいた国のように、この国を変えるのならば……まずは人の意識を。

「クリス、お帰り」
「大丈夫でしたか?」
「はい!」

 でも、それはまた今度。まずはお二人の殿下とダンスです。
 陛下のお誕生日を祝うパーティーですもの、たくさん楽しんで頂けるようわたくし自身が笑顔で楽しみましょう!

「じゃあ、まずは私から!」
「はい。わたくしダンスが苦手なので踏んでしまったらごめんなさいっ」
「いいよ、少しくらい」

 ミリアム! 寛大なお心っ!

 ぐうううううう……。

「「「…………」」」
「お、お嬢様……」
「ごめんなひゃい……」

 お腹が! さっき海老天の天ぷら蕎麦の事をかんがえていたので!
 お腹が空いて……あああっ!

「クリス、ダンスだけ頑張ってくれ。終わったらクリスが食べたいものを作ってあげるから」
「!」
「ミリアム、そんな事簡単に約束していいんですか? クリスのこの顔はお菓子ではないですよ?」
「!?」

 アーク、わたくしの顔でわたくしの食べたいもののジャンルが分かりますの!?
 そんな事が!?

「構わないさ。今日はたくさん頑張ってくれたからな」
「!」
「まあ、それは確かに……。仕方ないですね、その代わり僕の時まで頑張ってくださいよ?」
「は、はい! いっぱい食べます!」
「お嬢様!」
「あ! いえ、まずはダンスを頑張ります!」
「「そうして」」




 このあとむちゃくちゃ無茶振りして海老天蕎麦食べた。
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