腹ペコ令嬢は満腹をご所望です【連載版】

古森きり

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事後処理【後編】

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「いいえ、ロンディウヘッドご夫妻。彼女たちはリーデン夫人経由でリーデン伯爵とお知り合いになったのです。その後もリーデン夫人が手引きして、伯爵と逢瀬を重ねていたそうですわ」
「「!?」」
「なっ! なんだって!? じゃあ……!」

 お兄様正解ですわ。
 お姉様の『伝手』……それはサブリナ様たちと、そして彼女たちの幼心故の憧れを弄ぶゲス野郎の事でしたの。
 夫婦揃ってゲスすぎますわよね。
 最初聞いた時に気づきましたわ。
 ああ、わたくしお姉様とは永遠に分かり合えない……と。

「な、なにが……なにが悪いというのかしら? わたくしはただ、彼女たちの想いと夫の願いを両方叶えてあげただけよ!」

 おっとー! まさかの逆ギレー!
 これにはお父様たちもドン引き顔ですわー!
 もちろんわたくしたちもドン引きですわー!

「メアリ、お前! 正気か!? こんな年端もいかぬ娘たちを、自らの夫に……!? お前はそこまで愚かだったのか!? ケダモノ以下の所業だぞ!?」
「なによ! こんな浮気夫のところに嫁がせたのはお父様じゃない!? だったらわたくしがその浮気夫をどう使おうと勝手でしょ!?」
「信じられない……同じ男として軽蔑する……」
「な! 君だって若くて可愛い女の子が目の前にいて、しかも妻が好きにしていいと言ったら好きにするに決まってる!」
「あなたなんかと一緒にしないで欲しい……」
「そうよ! うちの息子はあなたなんかと同じではないわ!」

 別な修羅場になって参りましたわ。
 収拾がつかなくなりそうなのでパンパン、と手を叩いて一度止めます。
 いえ、お父様とお母様とお兄様の意見にはわたくしたちも大いに同意いたしますけれども。
 同意以外の感情がありませんけれども。

「わたくしはあんまり気にしなかったのですが、サブリナ様たちの親御様はどうお思いになるか……お分かりですわよね」
「ひっ! そ、それは……だが同意の上だ!」
「そういう問題ではありませんわ。リーデン伯爵はすでにロンディウヘッド侯爵家より、メアリお姉様を娶っておられる……既婚者ですのよ。しかもそれにあぐらをかいて、お仕事の方の成績は芳しくなく……」
「俺には合ってないんだ! 俺には俺に合った仕事が必ずある! それなのにみんな俺にあんな仕事を押しつけて……俺の容姿に嫉妬しているんですよ! そうじゃなかったら……」
「もう結構ですわ」

 聞くに耐えませんねぇ。
 こんな方が夫では、お姉様の性格がますます歪んでしまったのも仕方ないのかもしれませんわ。
 まあ、だからと言ってやってはいけない事をやってしまったので許すわけにはいきません。

「リーデン伯爵とリーデン伯爵夫人には正式に起訴状が届いております。複数の被害届けと、彼女たちが学園で犯した罪の損害補償まで上乗せされて届いておりますのでお覚悟ください」
「なっ! ま、待て! 学園での事はメアリと彼女たちの独断だろう!? 俺は関係ないじゃないか!」
「彼女たちにその行動へ移らせたのは、他ならぬあなたのいかがわしい誘惑行為あってこそですわ! 大人なのですからしのごの言わずご自身の犯した罪をしっかり反省して償ってください! 伯爵家がどうなるかは、追って沙汰が下されるでしょう! ご自分たちの行いの結果はしっかり受け入れてくださいませ!」

 フィリーかっこいいですわー!
 ……まあ、普通に考えてお取り潰しもやむなしですわよね。
 貴族令嬢たちが嫁ぎ先を失ったようなものですから。
 親御さんも頭にカッカっと血が上っている事でしょう。
 責任を取らせるために嫁がせようにも三人もおりますし、調べによると彼女たち以外にもリーデン伯爵夫妻の魔の手にかかった女性とは数人いました。
 それだけの数の『政略結婚』が潰れたのです。
 親たちからすれば処刑してもいいとすら思っているはず。
 しかもロンディウヘッド侯爵家は法的に裁かれる事はないけれど、その推進力は確実に減退します。
 後ろ盾がなくなり、他の貴族たちからも訴えられ、元々グラグラだった伯爵家にはなにも残らないでしょう。
 でも……。

「君たちは俺のこの美貌に、勝手に彼女たちが魅了されてしまっただけだと思わないのか! 事実俺は彼女たちに次期王妃殿をどうこうして欲しいなんて頼んだ事はない! 彼女たちに確認してくれればすぐ分かる! 俺は無関係だ! メアリがすべて勝手にした事じゃないか! なんで俺まで!」
「…………」
「メアリ! 君のせいだぞ! なんとか言え! 俺は関係ない! 本当だ! 信じてくれ! クリスティア様!」
「…………お義兄様はどこへ行ってもきっと元気にやっていけると思いますわ」
「クリスティア様!?」

 確信を持って言える。
 この神経図太い人、どこでも生き延びますわ。
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