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第一章:気弱令嬢、前世を思い出すの巻
④
しおりを挟む蝶番が外れかけているのか、ふらふらと不穏に揺れている扉。そのそばで、お手本のように折り目正しく一礼した人がいる。
年の頃は六十代半ば。きちんと撫でつけた銀髪と、シワ一つない家令の制服が恐ろしく似合う。エインズワース家で長年勤める大ベテラン、執事長のロバートである。
「現況のご報告と、許されるならばお見舞いを、と申しておられます。如何いたしましょう」
「おお、早かったんだな! 父上、おれも同席して良いですか」
「ダメだと言っても付いてくるだろうが、お前は。――すぐにお会いしよう、応接室にお通ししてくれ。母さんはカレンデュラの支度を」
「かしこまりました」
「はい、あなた。さあカレン、このショールを羽織っていてちょうだいね。病み上がりなのはご存じだから、許していただけるでしょう」
「あ、はい……ええと、誰が来られたんですか?」
すぐさま話をまとめて出て行く男性陣だ。去り際、もう一度礼をしたロバートが目を合わせて、『よろしゅうございました』というように微笑んでくれたのがうれしい。いつも思うが、あの人ホントにこまやかだよなぁ。
執事長に改めて感心しつつの確認に、母のローズマリーはショールを着せかけながらにっこりした。どこか悪戯っぽいというか、もうすぐ楽しいことが起こるのを確信しているような表情だ。
「うふふふ、それがね? カレンが階段から落ちたのを、その場で受け止めて下さった方がいたの。ものすごく心配しておられたから、報告がてら様子を見にいらしたんだと思うわ~」
「えっ、そんな人がいらしたんですか!?」
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命の恩人に対して、もしかしなくとも大分失礼なことを思いつつ、待つことしばし。応接間での話が付いたと見えて、複数の足音が廊下をやって来るのが聞こえた。もちろん、今度はうんと静かな歩き方だ。
「――失礼いたします。奥方様、お嬢様、よろしいでしょうか」
「ええ、勿論。入っていただいてちょうだい」
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