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猫歴15年
平行世界29日目その2にゃ~
しおりを挟む最後の会見は猫問題になって一時騒然。もう会見は終了するぞと脅して、日本滞在の感想に戻る。
わしとしてはオオトリは避けたかったのだが、リータたちが最後は代表のわしこそふさわしいとかプッシュするので、前回と同じ順番。絶対に、こんなふざけた生き物はふさわしくないと思うのに……
というわけで、一番手はさっちゃんだ。
「改めまして、私は東の国、次期女王サンドリーヌです。よろしくお願いします」
さっちゃんがペコリとお辞儀をすると、温かい拍手が起こり、その音を聞きながら着席する。
「前回、私はこの東京を見本にして国作りをすると言いましたが……やっぱりやめました」
突然の手の平返しで、場内にざわめきが起こった。
「確かに建物も町も綺麗なのですが、空が汚すぎます。電線と言いましたか……日本を全て見たわけではないですが、どこに行っても電線があるので、正直気になって仕方がありませんでした。
聞くところによりますと、地中に埋める方法があるらしいのですが、どうしてやらないのでしょうか? ここ日本におきましては災害が多いのですから、いくらお金が掛かっても国民のためにやるべきでしょう」
さっちゃんの正論に、記者たちの声は減って行く。
「このことから、私は東京を見本にするのはやめて、独自に国作りをしようと決めました。前言を撤回して申し訳ありませんが、私に取ってはいい勉強になったことには代わりありませんので、感謝しかありません。ありがとうございました」
再度さっちゃんがお辞儀をして席に座り直したが、拍手もなく終了。玉藻が立ち上がる。
「日ノ本出身、元天皇名代の玉藻じゃ。妾の感想は、ただただ情けなくて仕方がないの一点に尽きる」
玉藻は立ったまま喋り続ける。
「戦争で負けたことは、悔しくとも過去であるからどうしようもないが、そのあとはどうじゃ? 経済で一番を取ったのじゃろう?? 何故その時、盗られた土地を取り返さんのじゃ。何故他国に追い抜かれたら巻き返さんのじゃ。何故拉致された国民を助けようとしないのじゃ。
何故自国で起こっている問題を解決しようとしないのじゃ。何故、何もしない政治家どもを追い出さんのじゃ! 何故、誰も怒らんのじゃ!!」
冷静に語っていた玉藻はしだいに声が大きくなった。
「日ノ本の若者は、強大な徳川相手に命を懸けて戦ったぞ! ここでもそうじゃろ! だから世界とも戦えたのじゃろう! だから何度も立ち上がれたのじゃろう! いつまで寝ておるんじゃ! お前たちは、誇り高き民じゃろうが!!」
玉藻は涙ながらに訴え、武道館の全ての者を睨み付けると、ドスンとイスに腰を落とした。
「まぁにゃ~。わしも同意見にゃ」
静まり返る場内に、わしのとぼけた声が響き渡る。そして、用意していたスピーチ原稿は懐に押し込み、自分の言葉で語る。
「ぶっちゃけ、猫の国がこんにゃことになっていたら、わしは無能にゃ政治家全員クビにするにゃ。いや、10年以上やっているヤツは、全員縛り首にゃ。こんにゃ国にしたのは長く政治家やってるヤツの責任だからにゃ。
官僚も同罪にゃ。上層部は全員一番下まで降格にゃ。各省庁で働く人も、ほとんどシャッフルにゃ。天下り先は全部潰すから、絶対に逃がさないにゃよ?」
わしは面白いことを言ったつもりなのに、玉藻の圧が強すぎたからか誰も言葉を発さない。
「言っておくけど、国民も悪いんにゃよ? 政治家の顔色を見てちゃんと報道しないマスコミ。特定の政治家ばかり下の者に応援させる企業や組合。その言葉通り投票する社会人。医者の言葉を真に受ける高齢者。全てを諦めてしまった若者……
せっかく選挙という素晴らしいシステムがあるのに、言いにゃり、考えもしにゃい、行かにゃいでは、機能するわけないにゃ」
わしは一度観客席を見回してから続ける。
「玉藻は、この日本を憂いて涙ながらに訴えたにゃ。君たちはどうするにゃ? 心に響いたにゃらば、戦えにゃ。血を流さず戦う武器が君たちの手にはすでにあるにゃろ? インターネット、SNS、選挙……
三種の神器で、時代遅れの政治家どもを排除してやれにゃ! そして、悪しき慣習をぶっ潰し、より良い日本を作ってやれにゃ! 新しい日本の夜明けぜよにゃ~~~!!」
坂本龍馬をマネて決まったかと思ったが、誰からも反応はなし。
「え~……とかイロイロ言いにゃしたけど、日本、めっちゃ楽しかったですにゃ~。それじゃあ……逃げるにゃ~~~!!」
「「にゃ~~~!!」」
場がしらけまくっていたのでは、さっちゃんも玉藻もいたたまれないのか、わしと一緒に脱兎の如く逃走。リムジンに飛び乗ったら「早く出してお願い~!」と、めっちゃ懇願してホテルに帰るわしたちであったとさ。
「「「「「あははははは」」」」」
「「「「にゃははははは」」」」
スウィートルームに入ったら、一同大爆笑。ララに至っては、また死にそうなくらいのたうち回っている。
「「「にゃんで今日に限って見てるんにゃ~」」」
どうせ見てないと思ったのに、今回で最後だからと全員テレビの前に座って記者会見を見ていたとのこと。
なので、わしの最後の言葉のあとに場が冷め切っていたので青ざめる顔や、血相変えて逃げ出すわしたちの顔もバッチリ見たんだって。8Kテレビが恨めしい……
「ヒィヒィ……あんなにかっこつけてたのに……アハハハハ」
「「「「「あははははは」」」」」
「「「「にゃははははは」」」」
「この笑い、全部わしのにゃの!?」
「そうですよね~?」
「そうじゃよな~?」
「「「「「あははははは」」」」」
「「「「にゃははははは」」」」
ララの必死の訴えをツッコンでみたら、また爆笑。さっちゃんと玉藻がわしに罪を擦り付けた時に爆笑が起こったということは、2人も同罪だろう。たぶん半々ぐらいで……あ、8:2でわしのせいですか。そうですか。
「てか、にゃんで2人は日本政府にケンカ売ってるんにゃ~。そのせいでわしが考えた別れの挨拶が台無しになったんだからにゃ~」
そう。わしは超無難なことを言おうとしていたのに、2人して日本政府を非難するから1人だけまったく違うことを言うわけにはいかず、ずっと思っていた愚痴を長々と言ってしまったのだ。
「いや、私は……シラタマちゃんと玉藻様が、なにか日本政府に言いたいことがありそうだったから、アシストしようとちょっと悪く言っただけだよ? 2人と違うことを言うのもおかしいし……」
確かにさっちゃんの日本政府批判はたいしたことがないし、1人だけ楽しかったで終わるわけにもいかないのはわからなくもない。なので、涙まで流した玉藻に罪を擦り付けよう。
「にゃに泣きながら怒鳴ってるんにゃ~」
「いや、ちょっと演技して、発破を掛けただけじゃ。私情が入って熱が入りすぎたとは思うが、そのおかげで迫真の演技になったじゃろ?」
「アレのどこがちょっとなんにゃ!?」
「そちこそ、どんだけ溜まっておったんじゃ? 革命を扇動しておったじゃないか」
「わしは玉藻に乗せられたんにゃ~。あんにゃこと言うつもりはなかったんにゃ~」
覆水盆に返らず。誰が一番酷いことを言っていたかの決を取っても、わしの完敗。なので、スピーチ原稿を読んでみたら、どうしてこれを読まないのかの非難の嵐。無難なつもりで書いたけど、よくできていたみたいだ。
「アハハハハ。それちょうだい。アハハハハ」
「笑うにゃらあげないにゃ~!!」
皆が感動してスタンディングオベーションしてくれたのに、ララだけは別。笑い転げているので原稿は破いてやろうとしたら、リータに奪い取られてララに渡された。
このまま帰ると心証が悪いので、あとからララちゃんネルで流してほしいそうだ。
「読めるにゃ?」
「アハハハハ。ヒィヒィ。アハハハハ」
「無理じゃにゃい??」
「「「頼みましたからね!」」」
わしが確認を取ってもララは笑い転げているので、リータ、メイバイ、エミリは念を押しまくるのであったとさ。
この日は平行世界最後の夜ということもあり、ララとのお別れ会をする予定だったけど、笑いすぎて気絶したので、ジュマルとララ抜きでパーティー。
今まで買い漁った飲食物を食い散らかすのはちょっともったいないので、今日のメニューは全て出前だ。
コンシェルジュにも手伝ってもらって、近所の店という店から大量発注したから、オカモチの人が大行列。エレベーターも使えなくなったらしい……
皆で楽しく飲み食いし、コンシェルジュやスタッフが一向にペースが落ちないわしたちを見てゲーゲー言い、お腹が膨らんで来た頃にようやくララが復活した。
「いくらなんでも食べすぎよ」
「にゃ? お前たちも早く食べないとなくなるにゃよ??」
「無理。見てるだけで胸焼けしたわ」
「ジュマル君みたいに食べないと成長しないにゃよ~?」
「どこ見てるのよ!」
ララは胸を手で隠しているけど、わしの視線の先はジュマル。「けっこう食うなこいつ」と見ているので、ララもわしがエロイことを考えていないと気付いて顔を赤くしていた。
「明日帰るのよね……」
「まぁにゃ~。期限が1ヶ月しかにゃいから、延ばすわけにもいかないからにゃ。ひょっとしたらもう1日あるかもしれないけど、実験をするのも怖いからにゃ~」
「そう……」
「にゃに? 今ごろ寂しくなったにゃ??」
「いいえ。こないだ別れの挨拶をしちゃったから、なんと言って別れたらいいかわからなくなっちゃって……てへ」
「お前が押し掛けて来たんにゃろ~」
ララの口が重いと思ったら、単純に別れの言葉を探していただけ。わしだってそんな言葉思い付かないのに、てへぺろってしてやがる。
「まぁいいにゃ。ちょうどいいから仕事を頼むにゃ~」
「また面倒ごとに巻き込もうとしてるの? 私、まだJKなのよ??」
「そのJKが、わしを使っていくら稼いだんにゃ??」
「あ、あはは……」
ララが大笑いしないで乾いた笑いをしてるってことは、痛いところにクリティカルヒット。長年連れ添ったのだから、わしだって元女房のクセぐらい知ってるっちゅうの。
「金塊を換金したお金がけっこう余りそうにゃから、ユニセフに半分。残り半分を日本の子供の施設に寄付して欲しいんにゃ。お前にゃらやり方知ってるにゃろ?」
「私が全て奪うかもしれないわよ?」
「にゃはは。お前がそんにゃことしないのは、わしが一番知ってるにゃ。動画で儲けたお金も、ほとんど寄付してるにゃろ?」
「もう~。仕方ないわね。これで最後よ」
「にゃん回目の最後だろうにゃ~。にゃははは」
「ホント、死んでからも同じやり取りするとは思っていなかったわ。アハハハハ」
お互い生前のやり取りを思い出して笑っていたら、リータたちが仲良くしすぎと話に入って来たので、ここからはわしとララの物語を語る。
少し照れくさいが、2人でしていたボランティア活動を笑いながら聞かせ、夜が更けて行くのであった……
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