204 / 278
第82話 ボスの間で僕達を待っていたのは #3
しおりを挟む
「んくっ……ふぅ………………。よしっ、じゃあみんな落ち着いたところで、そろそろ転移してからの事を聞かせてもらえる?」
銀色の戦士が残していったその衝撃を身を捩って何とか乗り切ったクーラは、表情を改めカルア達に問いかけた。
「あっ、はい! あの、でもその前にひとつ訊いていいですか?」
「ええ。どうしたの?」
「あのダンジョンコア、一体どうしたんですか?」
カルアが指差した先に鎮座しているのは、このダンジョンのダンジョンコア。だが今は薄ピンク色の弱々しい光がゆっくりと明滅し、まるで精魂尽き果てたといったように見える。
「ええ、あれについて私もあなた達に訊きたい事があるの。どうもあのダンジョンコア、あなた達の何かの行動が切っ掛けで、ああなっちゃったみたいなのよね」
ダンジョンコアの変化が自分達のせいと言われて釈然としないカルアだったが、今はまず報告が先だろう。そう考えたカルアは、転移させられてからここに戻ってくるまでの、自分達の身に起きた事を話し始めた。所々補足を入れる仲間達と共に。
「――第7層で出てきたのは喋る雑魚ばっかりで、特に良いものが落ちてた訳でも無かったのね」
「そうなのよ! おまけに隠しダンジョンのくせに階層ボスみたいなのもいなかったし、ホント意味が分からない階層だったわ」
「うーん、作りかけだったのかしらね。……それであなた達、その階段を降りたのよね?」
続く第8階層の話を聞き終える頃、クーラは何時しか腕を組んでうーんと唸っていた。
「アニキゴブリン……アニキゴブリンねえ」
暫く記憶と格闘したクーラだったが、やはり聞き覚えの無い名前だ。
「まあいいわ。……で、そいつにはあなた達の作戦が見事にハマったと。うん、私もいい作戦だったと思うわよ。もしかしたら私でも初見だと引っ掛かるかもね。で、そのアニキゴブリンの強さはどれくらいだったの、ネッガー?」
「最初は師匠の1段階めを少し上回る程度、怒りによるパワーアップでそこから更に強くなりました」
「成程……通常のゴブリンからは考えられない強さね」
そして話は進み、第9階層に降り立ったカルア達が歩を進め始めたあたり。
「それだわっ!!」
突然クーラが声を上げた。そして『どれ?』といった表情のカルア達に確認する。
「あなた達、第9階層に入ってからずっと、ダンジョンの壁とか床なんかの構造物を引き剥がしながら進んだのね? それも結構な長時間」
だがその問いに答えたのはカルア達ではなかった。彼らの横で突如発生した激しい光の明滅が彼らの会話に割り込む。それはまるでクーラの問いへの同意、そしてカルア達を責め立てるかのように。
「ほら、ダンジョンもそうだって言っ――は?」
『全くね、非常識にも程があると思うの! 戦闘で破損とかなら仕方ないわ。だってダンジョンだもの。でもね、1階層分全ての床と壁を剥がして持って帰るなんて普通やる!? ねえ、あれ剥がされるのってどれくらい痛いか知ってる? 知らないのならあなた達の髪の毛、1本ずつ全部毟り取って教えてあげようか!?』
カルア達に向かってそう捲し立てているのは、ダンジョンコアの上に足を組んで座っている小さな女の子。いや身長は小さな子くらいだが、その姿からすると16~17才程の少女と言っていいだろう。
「ええっと……あなた、誰?」
先程までは確かにそこには誰もいなかった。それにその身体のサイズといい口にした内容といい、本当は『誰?』ではなく『何?』と訊きたかったところだろう。そんなクーラに返したその少女の答えは――
『私? 見たら分かると思うけど私は精霊よ。このダンジョンコアに住んでいる精霊。このダンジョンの管理をやってるから、ダンジョンの精霊って事になるわね』
――最大級の爆弾発言だったのである。
絶句。
唖然とする一同の中、カルアがポツリと呟いた。
「精霊って……お伽噺だけのものかと思ってた。ホントにいたんだ……」
そんなカルアに胡乱げな視線を送るダンジョンの精霊。『何言ってんのコイツ?』といった表情でカルアに言葉を返す。
『あなた何で精霊がいないなんて思ってるの? あなただって――』
「いやいやいや、ちょっと待っておくれよ!」
とそれを遮り乱入したのは、ここまで静かだったモリス。
「精霊!? 精霊だって!? 精霊ってあれだろ? 全ての魔法の力を司る存在って言われてる、あの――」
『ちょっと急にそんなハードル上げないでくれる!? 私そんなの司ってなんていないし、そもそも人間だって普通に魔法を使ってるじゃない! と・に・か・く! 私は精霊で、このダンジョンの管理者なの! 階層の管理をしたり魔物を産み出したりとか――』
「あああああーーーーーっ!!」
今度は叫び声によって話を遮られたダンジョンの精霊。一瞬ビクッと肩を震わせてから、声の主であるアーシュに視線を向ける。
「じゃあ……じゃああんたがゴブリン達が言ってた『母』ってやつ!?」
銀色の戦士が残していったその衝撃を身を捩って何とか乗り切ったクーラは、表情を改めカルア達に問いかけた。
「あっ、はい! あの、でもその前にひとつ訊いていいですか?」
「ええ。どうしたの?」
「あのダンジョンコア、一体どうしたんですか?」
カルアが指差した先に鎮座しているのは、このダンジョンのダンジョンコア。だが今は薄ピンク色の弱々しい光がゆっくりと明滅し、まるで精魂尽き果てたといったように見える。
「ええ、あれについて私もあなた達に訊きたい事があるの。どうもあのダンジョンコア、あなた達の何かの行動が切っ掛けで、ああなっちゃったみたいなのよね」
ダンジョンコアの変化が自分達のせいと言われて釈然としないカルアだったが、今はまず報告が先だろう。そう考えたカルアは、転移させられてからここに戻ってくるまでの、自分達の身に起きた事を話し始めた。所々補足を入れる仲間達と共に。
「――第7層で出てきたのは喋る雑魚ばっかりで、特に良いものが落ちてた訳でも無かったのね」
「そうなのよ! おまけに隠しダンジョンのくせに階層ボスみたいなのもいなかったし、ホント意味が分からない階層だったわ」
「うーん、作りかけだったのかしらね。……それであなた達、その階段を降りたのよね?」
続く第8階層の話を聞き終える頃、クーラは何時しか腕を組んでうーんと唸っていた。
「アニキゴブリン……アニキゴブリンねえ」
暫く記憶と格闘したクーラだったが、やはり聞き覚えの無い名前だ。
「まあいいわ。……で、そいつにはあなた達の作戦が見事にハマったと。うん、私もいい作戦だったと思うわよ。もしかしたら私でも初見だと引っ掛かるかもね。で、そのアニキゴブリンの強さはどれくらいだったの、ネッガー?」
「最初は師匠の1段階めを少し上回る程度、怒りによるパワーアップでそこから更に強くなりました」
「成程……通常のゴブリンからは考えられない強さね」
そして話は進み、第9階層に降り立ったカルア達が歩を進め始めたあたり。
「それだわっ!!」
突然クーラが声を上げた。そして『どれ?』といった表情のカルア達に確認する。
「あなた達、第9階層に入ってからずっと、ダンジョンの壁とか床なんかの構造物を引き剥がしながら進んだのね? それも結構な長時間」
だがその問いに答えたのはカルア達ではなかった。彼らの横で突如発生した激しい光の明滅が彼らの会話に割り込む。それはまるでクーラの問いへの同意、そしてカルア達を責め立てるかのように。
「ほら、ダンジョンもそうだって言っ――は?」
『全くね、非常識にも程があると思うの! 戦闘で破損とかなら仕方ないわ。だってダンジョンだもの。でもね、1階層分全ての床と壁を剥がして持って帰るなんて普通やる!? ねえ、あれ剥がされるのってどれくらい痛いか知ってる? 知らないのならあなた達の髪の毛、1本ずつ全部毟り取って教えてあげようか!?』
カルア達に向かってそう捲し立てているのは、ダンジョンコアの上に足を組んで座っている小さな女の子。いや身長は小さな子くらいだが、その姿からすると16~17才程の少女と言っていいだろう。
「ええっと……あなた、誰?」
先程までは確かにそこには誰もいなかった。それにその身体のサイズといい口にした内容といい、本当は『誰?』ではなく『何?』と訊きたかったところだろう。そんなクーラに返したその少女の答えは――
『私? 見たら分かると思うけど私は精霊よ。このダンジョンコアに住んでいる精霊。このダンジョンの管理をやってるから、ダンジョンの精霊って事になるわね』
――最大級の爆弾発言だったのである。
絶句。
唖然とする一同の中、カルアがポツリと呟いた。
「精霊って……お伽噺だけのものかと思ってた。ホントにいたんだ……」
そんなカルアに胡乱げな視線を送るダンジョンの精霊。『何言ってんのコイツ?』といった表情でカルアに言葉を返す。
『あなた何で精霊がいないなんて思ってるの? あなただって――』
「いやいやいや、ちょっと待っておくれよ!」
とそれを遮り乱入したのは、ここまで静かだったモリス。
「精霊!? 精霊だって!? 精霊ってあれだろ? 全ての魔法の力を司る存在って言われてる、あの――」
『ちょっと急にそんなハードル上げないでくれる!? 私そんなの司ってなんていないし、そもそも人間だって普通に魔法を使ってるじゃない! と・に・か・く! 私は精霊で、このダンジョンの管理者なの! 階層の管理をしたり魔物を産み出したりとか――』
「あああああーーーーーっ!!」
今度は叫び声によって話を遮られたダンジョンの精霊。一瞬ビクッと肩を震わせてから、声の主であるアーシュに視線を向ける。
「じゃあ……じゃああんたがゴブリン達が言ってた『母』ってやつ!?」
116
あなたにおすすめの小説
35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~
月神世一
ファンタジー
紹介文
「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」
そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。
失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。
「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」
手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。
電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。
さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!?
森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、
罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、
競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。
これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。
……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!
一流冒険者トウマの道草旅譚
黒蓬
ファンタジー
主人公のトウマは世界の各地を旅しながら、旅先で依頼をこなす冒険者。
しかし、彼には旅先で気になるものを見つけると寄らずにはいられない道草癖があった。
そんな寄り道優先の自由気ままなトウマの旅は、今日も新たな出会いと波乱を連れてくる。
極限効率の掃除屋 ――レベル15、物理だけで理を解体する――
銀雪 華音
ファンタジー
「レベル15か? ゴミだな」
世界は男を笑い、男は世界を「解体」した。
魔力も才能も持たず、万年レベル15で停滞する掃除屋、トワ。
彼が十年の歳月を費やして辿り着いたのは、魔法という神秘を物理現象へと引きずり下ろす、狂気的なまでの**『極限効率』**だった。
一万回の反復が生み出す、予備動作ゼロの打撃。
構造の隙間を分子レベルで突く、不可視の解体。
彼にとって、レベル100超えの魔物も、神の加護を受けた聖騎士も、ただの「非効率な肉の塊」に過ぎない。
「レベルは恩恵じゃない……。人類を飼い慣らすための『制限(リミッター)』だ」
暴かれる世界の嘘。動き出すシステムの簒奪者。
管理者が定めた数値(レベル)という鎖を、たった一振りのナイフで叩き切る。
これは、最弱の掃除屋が「論理」という名の剣で、世界の理(バグ)を修正する物語。気になる方は読んでみてください。
※アルファポリスで先行で公開されます。
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた
Mr.Six
ファンタジー
仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。
訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。
「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」
そう開き直り、この世界を探求することに――
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
不死王はスローライフを希望します
小狐丸
ファンタジー
気がついたら、暗い森の中に居た男。
深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。
そこで俺は気がつく。
「俺って透けてないか?」
そう、男はゴーストになっていた。
最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。
その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。
設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる