スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第82話 ボスの間で僕達を待っていたのは #2

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『ちょま無理痛い痛い痛いィィィィィィィィィィィィィーーーーッ!!! ヤーーーメーーーテーーーーーーッ!!!』
これはクーラへの返答なのか、それとも新たな悲鳴なのか。

「……ええっと」
顔を見合わせる二人。

「これもう間違いなく悲鳴だよねえ。ていうか普通に喋ってるよねえ。『痛い』って……」
「ええ、もう確定ね……だけど、このダンジョンに一体何が……」

『ダンジョン』ではなく『ダンジョン』と言っている辺り、既に無意識のうちにダンジョンを被害者認定しているようだ。

「うーん、それは僕にも分からないけど……ただそんな分からない事をしちゃいそうな容疑者には……大いに心当たりがあるんだよねえ」
「ああ、あの子達なら……」

二人は思い思いに首を振ったり深い溜め息を吐いたり。その後暫くして、とある思いを胸にその場へと座り込んだ。
『これは、あの子達が戻ってくるのを待つしかなさそうだなあ』……と。

要救助者が容疑者に変わった瞬間である。



それから約1時間――
やがてダンジョンからと思われる悲鳴が聞こえなくなり、それから更にもう暫く経ち、そしてようやく魔力の嵐は収まった。
先程まで真っ赤な光を放っていたダンジョンコアは、今は薄ピンク色の弱い光がゆっくりと、だが不規則に明滅している。
――息も絶え絶え、といった様子で。

「やれやれ。どうにか収まってくれたみたいだねえ。」
「よかった……じゃああの子達もそろそろ帰ってくるって事なのかしら」

もう大丈夫そうだと【結界】を解除したモリス、そして同様に立ち上がったクーラの二人がそう話していると、部屋の奥の壁の一部が四角く光り出し、やがてそこに扉が現れた。

「おっ、あれってもしかして『勇者達の帰還』、ってやつかな」
「でしょうね。あの子達には色々と聞かせてもらいましょ。ああそうだ、ピノ先生だけど、自分が助けに来たって事を秘密にして欲しいって。ちゃんを口裏を合わせてよ?」
「りょーかーい。理由としては『弟の成長を願う姉心』ってところかな」

どうやら二人の口から銀色の戦士の正体がバレる心配はなさそうだ。

「それにしてもさ、あの二人の関係って何ていうか、見ていて微笑ましいっていうか、もどかしいっていうか…………でもまあ、そこもまた面白いんだよねえ」
「そうね、しっかしピノ先生も……積極的なんだか消極的なんだか」

そう苦笑いを浮かべる二人だが、ふとモリスはある事が気になった。

「あれ? ピノ君って彼らと一緒にあそこから出てくるんだよね? 多分変装か何かしてるんだろうけど、僕達はピノ君の事を何て呼べばいいんだろう?」
「ああ、そういえば……」

ロベリーに頼まれて【隠蔽】のサンプルを渡したモリスではあったが、その際に彼女からメタルピノスーツやそれに関する話は一切聞いていない。
そして一方のクーラもまた――
「確か、『気付かれないように変身していく』って……ん? 変身?」
といった感じで、一切の情報を持ち合わせていない。

そんな二人が見守る中やがて扉はゆっくりと開き、そして――
「ただいまぁ!! あ、ここって……そうだ、やっぱりボスの間だ! あっ、クーラせんせーーい! と、あれ? モリスさん?」
「ほらカルア、後ろがつかえてんだから早く進みなさいよ! ああ、やっと帰って来れたわ!」
「セカンケイブよ、わたしは帰ってきた」
「ああ! 全員無事に帰ってこれてよかった」
「本当だよね。まったく、一時はどうなるかと思ったよ」
カルア達オーディナリーダが無事の帰還を果たした。

「――よかった!! あなた達!! 本当によかった!!」
彼らの顔を見た瞬間胸が一杯になり、これ以上の言葉が出てこないクーラ。そしてその横で――
「うんうん、いやあ本当によかったよ。最初に知らせを聞いた時は本当にビックリしたからねえ」
などと言いながらも、焦りまくっていたその時の様子を微塵も感じさせないモリス。

ようやく訪れた感動の再会の瞬間。それを噛み締める二人の前に、カルア達に続いて――
「!? 銀っ!?」
「っぶふぅ!?」
銀色のスーツに身を包んだ戦士が現れたのである。



(ねえちょっとクーラ君どうしよう、『アレ』きっとピノ君だよね?)
(ええ、状況的にも間違いないと思うけど……銀……っていうかメタルなヒーロー?)
(ちょっと僕の想像を越えてきたよ? っていうか気を緩めたら笑い転げちゃいそう)
(それは全力で堪えて。私もつられちゃうから! それよりも一体どうコンタクトを取れば……)
(うーん、これはアレだ、流れに身を任せるしかないんじゃない?)
(う……そうね。ピノ先生かあの子達が名前を呼ぶような流れに、何とか……)

テンパった彼らが小声で必死に打ち合わを行うそんな中、カルアから無自覚なスーパーアシストが炸裂する。

「クーラ先生ありがとうございました。クーラ先生がルピノスさんに依頼してくれたお陰で、僕達全員何とか無事に帰ってくる事が出来ました!」

(ナイスだカルア君!)
(あなたならやってくれるって信じてた!)

「え、ええ! 良かっタワー。ルピノスよねルピノス! エエ、ありがとうルピノス!」
「うんうんそうそう、ルピノス君だヨネー。やっぱりルピノス君に頼んで正解だっタヨー」

クーラとモリスは早速それに乗っかってルピノスに歩み寄る。その余りに棒読み片言な返事と胡散臭い表情に、思わず心の中で溜め息を吐いたルピノスの中の人は、『これはダメだ、すぐにこの場を去らなきゃ!』と素早く判断し――
「……ええ。何とか間に合いました。では後はあなた達にお任せします。私はこれで――」
急いでその場を去る流れに持っていく。

「ええっ!? もう行ってしまわれるのですか、ルピノス様!?」
そう名残惜しそうな表情を見せるアーシュに、ルピノスは真摯に語り掛ける。
「君達はもう大丈夫だ。 だが今こうしている間にも、何処かで誰かが助けを求めているかもしれない。だから私は……行かなければならないんだっ!」

……助けを求めているのはパルムである。


ルピノスのその言葉に瞳を潤ませるアーシュ、そして――
「ぶふっ」
「ぷっ」
吹き出しかけたモリスとクーラ。
その二人をキッと睨みつけてから、ルピノスは――
「ではさらばだっ!!」
その場を逃げるように……いや、『颯爽と!』転移で去っていった。

「……『主に愛の戦士ルピノス』様、ありがとうございました」
「「「「ありがとうございました!」」」」

「「ブフウゥゥゥゥゥッ!!!!」」
(おっ、おもに愛の戦士!? ピノ先生自分でそう名乗ったの!?)
(『主に』? 愛のあたりを『主に』? って愛以外にも何か担当が!? てかそんなフワッとした……ああダメ、もう僕我慢の限界が……プッ)
(ダメよ! 最後まで我慢しなさい! ああでも私ももう……ブグッ)

新人冒険者パーティ『オーディナリーダ』のピンチに猛然と駆けつけ、その力をもって見事魔のダンジョンから救い出したルピノス!

たった今までルピノスが立っていた場所から視線を外す事無く別れにこらえる子供達、そして後ろを向いて肩を震わせ必死でこらえる大人二人を残し、颯爽と去っていったのである。

ありがとう、主に愛の戦士ルピノス!
さようなら、主に愛の戦士ルピノス!
頑張れ! 主に愛の戦士ルピノス!!
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