スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第52話 回復魔法の訓練がはじまりました #3

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「回復魔法についての説明は以上です。何か質問等はありますか?」
ここでネッガーがバッと立ち上がり、バリー先生に例の質問を投げ掛けた。
「俺は【身体強化】を使うんですが、回復魔法と【身体強化】を連携させる技のようなものは、あるんでしょうか」
「そうですね……【身体強化】は自身の肉体をベースとした魔法――と言うより魔力運用に近い技術ですから、どうしても強度には限界があります。回復魔法を組み合わせると『その強度を超えた場合の損傷を治しつつ戦闘を継続する』といった事が可能とはなりますが、これは正直お勧め出来ません。先ほど言ったとおり、回復魔法には必ず栄養補給が必要となりますから、身体はどんどん飢餓状態に近付いていきます。ですから余程の緊急時以外は使用しない方がいいでしょう」
「……はい、分かりました」

ネッガーは納得はしたけど少し残念そうだ。

「先生、ひとつ教えて下さい。バリー先生が使える回復魔法はどれですか?」
「私は【中回復】まで使用出来ます。流石に【大回復】は無理ですが」
「あの……【中回復】が使える人って、やっぱり時空間魔法の適性を持ってる人だけですか?」
「そうです。【回復】だけなら時空間魔法の適性が無くても使用できるんですが、【中回復】以上は時空間魔法適性が無いと難しい――いや不可能と言っていいでしょう」

聞けば聞くほど回復魔法は時空間魔法って考えるのが自然に思えてくる。
あ、僕もさっきから気になってた事訊いてみようかな。

「あの、すっごく変な事訊くんですけど……。さっきからバリー先生の質問って、僕達が答える事を先回りしてるように感じたんですけど、もしかしてそれって、【限定的な未来視】みたいな何かですか?」
「ははは、それは何とも夢のある質問ですね。もしそうだったら嬉しいところですけど、僕のは授業をスムーズに進める為の『先生術せんせいじゅつ』――つまり先生としての技術、です」

それにしては随分的確だった気がするけど。――もしかして無意識に発動してたりしてね。
って言うか『先生術』なんていう技術があるの!?

「さて、他に質問がなければそろそろ回復魔法の実技に移りましょうか」

そんな事言われたら、もう誰も質問なんてする訳無いよね。みんな早く実技をやりたくって仕方ないんだから。
「――はい、それではここからは実技の時間とします。皆さん、爪の先端の部分に小さく傷を付けて下さい。根本の方じゃないですよ。先端の方です。傷を付けたらいよいよそこからが回復魔法の出番です。その指に対して、爪を治すイメージで魔力を注いで下さい。成功すると傷を付けた場所を押し出すように爪が伸びていきます。根本に傷を付けると爪ひとつ分伸びる事になりますから、傷は先端のほうがいいですよ」

先生の指示通り爪に傷をつけて、みんなそれぞれ回復魔法の訓練を開始した。
みんな自分の爪を見つめてもの凄く集中している。頑張れーー。
それじゃあ僕は――

「あの先生、僕は【回復】が使えるから【中回復】の訓練をしたいんですけど、【中回復】の訓練ってどんな事をすればいいですか?」
「そうですね……、実は特にこれといった特別な訓練方法はないんです。ほとんどの人が、何度も【回復】を使っているうちにいつの間にか使えるようになった、と言っているんです」

ええー、それじゃあどうすれば……
だって【回復】だったらこれまで何度も何度も使ったよ? ――石ころにだけど。
もしかして人に使わないとダメって事なの?

――なんて考えてたらバリー先生がまた口を開いた。話にはまだ続きがあったみたい。

「これはあくまでぼく個人の想像と推測ですが――、もし先ほど言ったように【過去視】が関係するのであれば、時空間魔法のうちの時間魔法――つまり【固定】や【復元】を覚えるのが【中回復】習得の近道になるかもしれません」

時空間魔法の訓練が近道……
あ、でも【固定】は使えるようになりたい! だってボックスの時間を停止する事が出来るようになるから。ご飯とか食材とかが傷んだり腐ったりなんて心配しなくてよくなるから!

ああ、そう言えばここ何日かピノさんのご飯食べてないや。久し振りに食べたいなあ。
――て言うか最近会ってないなあ。
――ピノさん、元気かなあ。
――ピノさん。

『――はい、カルア君どうしました?』
「うわぁっ!? えっ、ピノさん!?」

急に目の前にピノさんの顔が――ってこれペンダントの通信具だ!!
「えっ、あの、いや特に何もないんですけど……今授業中だし」
「あれ、そうなんですか? 通信具の呼び出し音が鳴ったので応答したんですよ」
「ええっ、何故……?」

だって通信なんて……って、もしかして!?

「――ピノさんの事考えてたから通信具が反応しちゃったのかも」
「ああ、私の事考えててくれたんですね。ふふふっ。そうだ、明日は私休みだから、そっちにご飯作りに行きますね。学校が終わったら時間とか決めましょう。じゃあ授業頑張って」
「はいっ、ありがとうございますピノさん!」

――通信終了。
掛けるつもりがなくても掛かっちゃう事があるのか。これはちょっと調整が必要かな。
ってあれ? 皆さんどうしました?

「ええっとカルア君、今のって【通信】の魔法ですか?」
「ああいえ、魔道具です。このブレスレットが【通信】の魔道具になってて――」
「すると、目の前に表示されていたのが【通信】の相手ですか?」
「はい、そうですけど……?」

あれ? 何か考え込んでる? これってまさか、また……?

「私はそのように小型な通信具を見た事が無いのですが。それに相手の顔が映し出されるといった機能もです。それはどちらで購入されたものですか?」
「ああ、これは僕が作ったものだから、他では売ってないと思います」
「自作……その高性能な魔道具を自作したと……? ちなみに先ほどの【通信】の相手はどちらに?」
「――ヒトツメの街です」
「っ!? 通信距離もとんでもない……」

あの? もしもし先生?

「すみませんがちょっと席を外しますので、皆さんはそのまま訓練を続けていて下さい」
バリー先生は扉を開けるとゆっくり教室を出て、そして――
「こここ、校長ーーーーーーーーっ!!!!」
ダダダダダダダダダッ
――猛ダッシュ。

そして僕は猛デジャヴュ……
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