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第93話 とある乙女達のダンジョン探索記 #2
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「ギャビッ」
通路の奥に飛んでいき、そのまま見えなくなるゴブリン。
「しっかし、この撲撲棒ってやつは本当に気持ちがいいねえ」
手に残る感触を確かめるようにグーパーし、にんやりと笑うマリアベル。
満足げなその様子に、コピー品の制作者であるロベリーもまたホッとした笑みを浮かべる。
「カルア君が作ったのを『抜いた魔石』で再現してみたけど、同じ性能を維持出来て良かったわ。素材の差で多少消費魔力が増えたけどね」
「「さっすが聖女!」」
「……だから聖女はやめてって」
代わる代わる撲撲棒を振る乙女達、そしてその手元から代わる代わる飛んでゆくゴブリン達……
誰も彼もフルスイングの気持ち良さに手加減などする気は欠片も起きず、出会ったゴブリン達は揃って壁の染みとなって吸収され消えていった。
もちろん平面蛙ならぬ平面ゴブリンになる者などはおらず――
そして(ゴブリンは)誰もいなくなった。
「何だろうね、魔法を使う間もなくここまで辿り着いちまったよ」
「どちらかと言うと『使う気も起きずに』って感じですかね、ししょー。いやー、久々にいいストレス解消でしたよー」
下へと続く階段の前でそう感想を漏らす師弟。
その横では他の乙女達の鼻息も荒い。
「さあピノ様、後は次の階層だけよ。そこの連中を吹っ飛ばしたら、いよいよ……」
「行こうロベリー。全てはモフの為に」
「そうよ、これ以上毛のない緑に構ってても仕方が無いもの」
「モフへの道を遮るものは」
「「「消し去るのみ!」」」
「さあ行くわよっ!」
「「「おおーーーっ!」」」
可愛らしい握り拳を天に突き上げる乙女達。そんな彼女らを止める事の出来るゴブなどいる筈もなく……
彼女らは第5階層を踏破した。
さあ、いよいよ念願の第6階層に突入だっ!
「きゅうぅぅぅん……」
ピノの腕の中に抱かれる1匹のコボルト。
その胸には『コボルトマメシー』と書かれたワッペンがぶら下がっている。
「カワイイ……」
潤んだ瞳、震える小さな体。
その細かな振動は緊張からくるものではない。怯え――いや、恐怖によるもの。
なぜなら彼は殺意を持って襲いかかった獲物に、なす術もなく捕獲されてしまったのだから。
そして――
「うふふふふふ」
もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ
「次私ねっ」
まふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふ
「ああっ、ずるい。私も」
モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ
「そろそろあたしにも抱かせてくれないかねぇ」
もっふぁもっふぁもっふぁもっふぁもっふぁもっふぁもっふぁもっふぁ
代わる代わる新たな刺激を全身に受け続け、彼の精神は徐々に融解していった。そこには既に殺意も緊張も恐怖も無く、ただただ――
そしてついに訪れるメルトダウン。
「くふううぅぅぅぅん」
その表情はだらしなく蕩け、半開きとなった口からは吐息のようなか細い鳴き声。尻尾はゆっくりと左右に振られ、だがそこに彼の意思は感じられない。
と、その時だ。
まるで彼のその声を聞きつけたかのように、通路の奥から別のコボルトが姿を現す。
自分を見つめるニンゲン達の瞳が怪しく輝く。そこから感じ取る意思は敵意とも殺意とも違う。あれは一体……
その異様な雰囲気にコボルトは一瞬足を止めるが、自分には課された使命がある。その使命を全うすべく唸り声を上げて彼女らに襲い掛か――
「もふゲット!」
「それでそれで? 今度は何コボルト?」
「ええっと……コボルトテリアだって」
「へえ、何だか顔立ちに気品があるわね」
「これって、誰かがカットとかしてるのかな」
「可愛いといっても魔物だからね、初めからこの姿で生まれてきたんだろうさ」
このコボルトテリアもまたまた乙女達の洗礼を浴び、人前に出せないような表情を浮かべる。
その時コボルトマメシーの意識が浮上し、ふと先ほどまで受け続けていた刺激が無くなっている事に気付いた。そして自らの足が地に着いている事に気付くや否や、脱兎の如くその場から逃げ出した。犬だけど。
「ああっ、私のマメシーちゃんがっ!」
一人の乙女がそれを見て悲しげに声を上げるが、別の乙女がそっとその肩に手を置いた。
「大丈夫、すぐに新しい出会いが待ってるから。さあ、次の子達に会いに行くわよ」
一方こちらはダンジョンコアの間――
「何ですかあいつらは! あの子達はモフられ係じゃないですよ!?」
乙女達の様子をじっと観察していたダンジョンの管理者は、一人喚き散らしていた。
「確かに皆それほど強い魔物じゃないです。でも視認出来ない程のスピードで一瞬の内に無力化とかあり得ないですよっ! あいつ絶対ヤバイ奴です!」
そう叫ぶセントラルの視線の先にあるのは、エンカウントの瞬間にコボルト達をあっさり捕獲するピノの姿。
通路からコボルトチワワが現れるとその次の瞬間にはコボルトチワワの背後に移動、いつの間にか奪い取った剣を投げ捨ててその全身を抱き抱えモフり始める――ここまで僅か0.05秒。
自分の身に起きた事態を把握出来ていないコボルトチワワは、やがて全身をモフれらるその刺激で身動きが取れなくなり、そして――
「ああっ、また1匹堕ちたです……」
ダンジョンコアの間に、悲しげな声が響いた。
「時々カルアお兄ちゃんの名前を出してたですから、あいつら間違いなくお兄ちゃんの関係者です。なら迂闊な手出しは出来ないし、そもそもあのピノって女の異常な強さ……あれじゃ返り討ちにされる未来しか見えないです。こうなったらもう嵐が過ぎ去るのを待つしかないですよぉーーっ」
分析した現状から達した結論は『手の打ちようが無い』……
涙目のセントラルは突如現れた乙女達への対処を諦めた。
「なんて奴等を呼び寄せたですかっ! カルアお兄ちゃんの、ぶゎかああぁぁぁぁぁっ!!」
通路の奥に飛んでいき、そのまま見えなくなるゴブリン。
「しっかし、この撲撲棒ってやつは本当に気持ちがいいねえ」
手に残る感触を確かめるようにグーパーし、にんやりと笑うマリアベル。
満足げなその様子に、コピー品の制作者であるロベリーもまたホッとした笑みを浮かべる。
「カルア君が作ったのを『抜いた魔石』で再現してみたけど、同じ性能を維持出来て良かったわ。素材の差で多少消費魔力が増えたけどね」
「「さっすが聖女!」」
「……だから聖女はやめてって」
代わる代わる撲撲棒を振る乙女達、そしてその手元から代わる代わる飛んでゆくゴブリン達……
誰も彼もフルスイングの気持ち良さに手加減などする気は欠片も起きず、出会ったゴブリン達は揃って壁の染みとなって吸収され消えていった。
もちろん平面蛙ならぬ平面ゴブリンになる者などはおらず――
そして(ゴブリンは)誰もいなくなった。
「何だろうね、魔法を使う間もなくここまで辿り着いちまったよ」
「どちらかと言うと『使う気も起きずに』って感じですかね、ししょー。いやー、久々にいいストレス解消でしたよー」
下へと続く階段の前でそう感想を漏らす師弟。
その横では他の乙女達の鼻息も荒い。
「さあピノ様、後は次の階層だけよ。そこの連中を吹っ飛ばしたら、いよいよ……」
「行こうロベリー。全てはモフの為に」
「そうよ、これ以上毛のない緑に構ってても仕方が無いもの」
「モフへの道を遮るものは」
「「「消し去るのみ!」」」
「さあ行くわよっ!」
「「「おおーーーっ!」」」
可愛らしい握り拳を天に突き上げる乙女達。そんな彼女らを止める事の出来るゴブなどいる筈もなく……
彼女らは第5階層を踏破した。
さあ、いよいよ念願の第6階層に突入だっ!
「きゅうぅぅぅん……」
ピノの腕の中に抱かれる1匹のコボルト。
その胸には『コボルトマメシー』と書かれたワッペンがぶら下がっている。
「カワイイ……」
潤んだ瞳、震える小さな体。
その細かな振動は緊張からくるものではない。怯え――いや、恐怖によるもの。
なぜなら彼は殺意を持って襲いかかった獲物に、なす術もなく捕獲されてしまったのだから。
そして――
「うふふふふふ」
もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ
「次私ねっ」
まふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふまふ
「ああっ、ずるい。私も」
モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ
「そろそろあたしにも抱かせてくれないかねぇ」
もっふぁもっふぁもっふぁもっふぁもっふぁもっふぁもっふぁもっふぁ
代わる代わる新たな刺激を全身に受け続け、彼の精神は徐々に融解していった。そこには既に殺意も緊張も恐怖も無く、ただただ――
そしてついに訪れるメルトダウン。
「くふううぅぅぅぅん」
その表情はだらしなく蕩け、半開きとなった口からは吐息のようなか細い鳴き声。尻尾はゆっくりと左右に振られ、だがそこに彼の意思は感じられない。
と、その時だ。
まるで彼のその声を聞きつけたかのように、通路の奥から別のコボルトが姿を現す。
自分を見つめるニンゲン達の瞳が怪しく輝く。そこから感じ取る意思は敵意とも殺意とも違う。あれは一体……
その異様な雰囲気にコボルトは一瞬足を止めるが、自分には課された使命がある。その使命を全うすべく唸り声を上げて彼女らに襲い掛か――
「もふゲット!」
「それでそれで? 今度は何コボルト?」
「ええっと……コボルトテリアだって」
「へえ、何だか顔立ちに気品があるわね」
「これって、誰かがカットとかしてるのかな」
「可愛いといっても魔物だからね、初めからこの姿で生まれてきたんだろうさ」
このコボルトテリアもまたまた乙女達の洗礼を浴び、人前に出せないような表情を浮かべる。
その時コボルトマメシーの意識が浮上し、ふと先ほどまで受け続けていた刺激が無くなっている事に気付いた。そして自らの足が地に着いている事に気付くや否や、脱兎の如くその場から逃げ出した。犬だけど。
「ああっ、私のマメシーちゃんがっ!」
一人の乙女がそれを見て悲しげに声を上げるが、別の乙女がそっとその肩に手を置いた。
「大丈夫、すぐに新しい出会いが待ってるから。さあ、次の子達に会いに行くわよ」
一方こちらはダンジョンコアの間――
「何ですかあいつらは! あの子達はモフられ係じゃないですよ!?」
乙女達の様子をじっと観察していたダンジョンの管理者は、一人喚き散らしていた。
「確かに皆それほど強い魔物じゃないです。でも視認出来ない程のスピードで一瞬の内に無力化とかあり得ないですよっ! あいつ絶対ヤバイ奴です!」
そう叫ぶセントラルの視線の先にあるのは、エンカウントの瞬間にコボルト達をあっさり捕獲するピノの姿。
通路からコボルトチワワが現れるとその次の瞬間にはコボルトチワワの背後に移動、いつの間にか奪い取った剣を投げ捨ててその全身を抱き抱えモフり始める――ここまで僅か0.05秒。
自分の身に起きた事態を把握出来ていないコボルトチワワは、やがて全身をモフれらるその刺激で身動きが取れなくなり、そして――
「ああっ、また1匹堕ちたです……」
ダンジョンコアの間に、悲しげな声が響いた。
「時々カルアお兄ちゃんの名前を出してたですから、あいつら間違いなくお兄ちゃんの関係者です。なら迂闊な手出しは出来ないし、そもそもあのピノって女の異常な強さ……あれじゃ返り討ちにされる未来しか見えないです。こうなったらもう嵐が過ぎ去るのを待つしかないですよぉーーっ」
分析した現状から達した結論は『手の打ちようが無い』……
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