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第93話 とある乙女達のダンジョン探索記 #1
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これは、ピノ、ロベリー、ミレア、そしてマリアベルによるセントラルダンジョン初探索の物語。
さて、モリスとカルアによる報告会が終わるや否や、4名の少女――ではなく乙女達は、セントラルダンジョンに向けて出発した。
セントラルダンジョンに行った事のないピノは、直接ダンジョンまで【転移】する事が出来ない。
もしかしたら、そのうちカルアが『あっそうだ』などと言ってそんな機能を付けてしまう未来が来るのかもしれないが、少なくともそれは今ではない。
森の入口まで【転移】したピノは臨時パーティの乙女達に『ちょっとここで待ってて。時短してくるから』と言い残し、小さなつむじ風と共に姿を消した。
「まあ確かにあたしら全員で歩いてくより、あの子に任せる方がよっぽど早いだろうね」
小さく肩を竦めるマリアベルと、その言葉に頷くロベリーとミレア。心はひとつ、『一刻も早くモフモフなパラダイスへ!』
そんな彼女らの元にピノが戻ってきたのは、それから約1分後の事。モリスとカルアからの報告と勘を頼りにセントラルダンジョンの場所を探し当て、【転移】で戻ってきたのだ。
「おまたせー。じゃあ行こ」
……そして彼女らはダンジョンに到着した。
セントラルダンジョンの前で現在地を確認しようと時空間魔法を発動したマリアベルは、その結果に思わずポツリ。
「……この短時間でこんな所まで走って来たって事かい? そんな事可能なのかね」
だがその呟きに返ってきたのは、二人の少女からの身も蓋もない感想だ。
「まあピノ様だし」
「そうね。ピノ様だもん」
だが最年長乙女もまたかつてのピノの所業の生き証人、その感想には同意しかない。
「ああ、そう言えばピノはこんなんだったよ……はぁ」
そしてピノ。そんな周囲の反応とは裏腹に、自分のパフォーマンスに納得していないようだ。
「うーん、受付の仕事やってるうちに体が鈍っちゃってるなぁ。来週からはアイ達の訓練もあるんだし、一度真剣に鍛え直そうかな」
……ピノと『主に愛の戦士』には、近日中にパワーアップイベントが発生する事になるらしい。
「さあ、時間が限られてる事だし早く行きましょ。ししょーが眠くなっちゃう」
そんな弟子からの気遣い――いや、この弟子が素直に気遣いなんてする訳ないじゃないか!
「あん!? あたしゃまだそんな年じゃないよ! 近頃じゃ日の出前にバチっと目が覚めるくらい元気が溢れてるのさ!」
「ししょー、それって……」
ミレアは途中で言葉を飲み込んだ。
確かに最初のはからかい半分の言葉だったが、これには完全に言葉が詰まる。言う必要が無い事というのは、世の中には確かに存在するのだ。
それが理解出来たミレアは、マイペースな彼女なりに、やはり成長しているという事なのだろう。
「さあほら、お喋りは仕舞いだ。とっとと行くよ」
まだ扉が取り付けられていないセントラルダンジョンの入口は、外から見るとまるで洞窟のようだ。
だがしかし、ひとたび中に入るとその様子は明らかに洞窟と別物だと分かる。それなりの広さに包まれたその部屋は、光源を感じさせない不思議な光に包まれ、灯りなどを用意しなくとも隅々まで見渡す事が出来る、まさに不思議空間。
そんな広間の奥の壁に付いたひとつの扉。その扉と入口以外に何も無いというその事実が、この場が『入口の間』であり、あの扉を開いた先こそがダンジョンの始まりなのだと静かに主張する。
その扉を彼女らは迷う事無く開け放つと、モフ――決意を新たにその向こうへと足を踏み入れた。
と、そこに広がっていたのは――
「これが第0階層……本当に外みたい」
先ほどカルアから聞いた通りの光景であった。
青空が広がり陽光が満ちているこの光景は、日暮れとともに夜の帳が下りつつある外の森のものであるはずがない。だがしかし――
草原を走る風は青い草の匂いを運び、耳を澄ませば何処からか微かに届く涼やかなこの音は、軽やかに流れる川のせせらぎによるものだろうか。
所々に色とりどりの花々が散りばめられた草原はまるで大地を彩る絨毯のようで、その向こうに広がる森もまた大自然の遥かなる奥行きを感じさせる。
……ダンジョンなのに。
「これは確かにピクニック向きの場所ね」
「ピクニック……ふふっ、カルア君と一緒にお弁当――」
「はいはい、それはまた今度ねピノ様。今日の目的地はこっちでしょ?」
幸せな空想の世界に片足を突っ込んだピノを押し止めるミレア。彼女が指差したその先に見えるのは、下へと続く階段とその横に立つ看板――これもまたカルアの報告通りの光景である。
「さて、降りようかね」
一同はこのダンジョンの精霊であり管理者であるセントラル渾身の作品である第0階層を軽くスルーし、その階段から第1階層へと降りて行く。彼女達の目指すあの場所へ。
「なんて普通のダンジョン……」
先ほどの第0階層とは打って変わって、この階層はまるでお手本のようなダンジョンといった趣だ。その落差に思わず零れたロベリーの呟きには、他の乙女達もまた同意しかない。
そして乙女達は歩き始める。散発する魔物の襲撃は彼女らの足を止めるどころか遅らせる事も出来ない。だがそれも当然。初心者エリアの魔物など、彼女らにとっては空気なのだから。
カルアから貰ったオリジナル撲撲棒を装備したピノ、そしてロベリーの作ったコピー撲撲棒を装備した3名は、飛び掛かる魔物達を気持ちよく打ち返しながら、あっさりと第4階層までやって来た。
「ししょー、足は大丈夫ですか?」
「っ!? またあんたは人を年寄り扱いして!」
性懲りもなくマリアベルに絡むミレア、そして瞬間的に沸騰するマリアベル。懲りない師弟である。
だがここからが年の功、そのあとニヤリと笑みを浮かべたマリアベルは反撃に出る。
「ああ、でもそういえばちょいと疲れちまったねぇ。ここは可愛い弟子に背負って行ってもらうとしようか。まさかあんた、師匠の頼みを聞けないなんて事はないよねぇ?」
流石のミレアもこれにはヤバいとばかりに顔を引き攣らせ、乾いた笑いを響かせた。
「あははは、いやだなあ師匠。もちろん師匠の頼みを断るなんて訳ないじゃないですかぁ。でもほら私ってか弱いのが取り柄だし、師匠を落っことしちゃう未来しか見えないし……」
と、そんなしどろもどろの言い訳からふと『いい事思い付いた』とばかりに手を打つと、一転良い笑顔で言葉を続ける。
「だからここはピノ様にお願いするのがいいんじゃないかなあって思います! ねっ、ピノ様?」
急に矛先が向いたピノだったが、こちらはいたって平常運転で――
「いいですよ? あ、でも背負ってるのを忘れて魔物に突撃しちゃったらごめんなさい」
簡単な頼まれ事といった感じで普通に返した。
ちなみに魔物への突撃についての発言は皮肉でも断る理由付けでもなく、純粋な注意喚起である。
「ふん、ちょっと生意気な弟子を揶揄っただけで全然疲れちゃいないよ。第一【身体強化】だってまだ使っちゃいないしね。ほら行くよ、このフロアに出てくるのは確かゴブリンだったね」
この話はこれでおしまいと、マリアベルは先頭に立って歩き出す。そしてそのすぐ後ろには懲りない弟子のミレアが付き従う。
「もうししょー、可愛い弟子を置いてかないでくださいよー」
きっとこれがこの二人にとって丁度良い距離感なのだろう。
かくして――
可哀想なゴブリンの物語が幕を開けた。
さて、モリスとカルアによる報告会が終わるや否や、4名の少女――ではなく乙女達は、セントラルダンジョンに向けて出発した。
セントラルダンジョンに行った事のないピノは、直接ダンジョンまで【転移】する事が出来ない。
もしかしたら、そのうちカルアが『あっそうだ』などと言ってそんな機能を付けてしまう未来が来るのかもしれないが、少なくともそれは今ではない。
森の入口まで【転移】したピノは臨時パーティの乙女達に『ちょっとここで待ってて。時短してくるから』と言い残し、小さなつむじ風と共に姿を消した。
「まあ確かにあたしら全員で歩いてくより、あの子に任せる方がよっぽど早いだろうね」
小さく肩を竦めるマリアベルと、その言葉に頷くロベリーとミレア。心はひとつ、『一刻も早くモフモフなパラダイスへ!』
そんな彼女らの元にピノが戻ってきたのは、それから約1分後の事。モリスとカルアからの報告と勘を頼りにセントラルダンジョンの場所を探し当て、【転移】で戻ってきたのだ。
「おまたせー。じゃあ行こ」
……そして彼女らはダンジョンに到着した。
セントラルダンジョンの前で現在地を確認しようと時空間魔法を発動したマリアベルは、その結果に思わずポツリ。
「……この短時間でこんな所まで走って来たって事かい? そんな事可能なのかね」
だがその呟きに返ってきたのは、二人の少女からの身も蓋もない感想だ。
「まあピノ様だし」
「そうね。ピノ様だもん」
だが最年長乙女もまたかつてのピノの所業の生き証人、その感想には同意しかない。
「ああ、そう言えばピノはこんなんだったよ……はぁ」
そしてピノ。そんな周囲の反応とは裏腹に、自分のパフォーマンスに納得していないようだ。
「うーん、受付の仕事やってるうちに体が鈍っちゃってるなぁ。来週からはアイ達の訓練もあるんだし、一度真剣に鍛え直そうかな」
……ピノと『主に愛の戦士』には、近日中にパワーアップイベントが発生する事になるらしい。
「さあ、時間が限られてる事だし早く行きましょ。ししょーが眠くなっちゃう」
そんな弟子からの気遣い――いや、この弟子が素直に気遣いなんてする訳ないじゃないか!
「あん!? あたしゃまだそんな年じゃないよ! 近頃じゃ日の出前にバチっと目が覚めるくらい元気が溢れてるのさ!」
「ししょー、それって……」
ミレアは途中で言葉を飲み込んだ。
確かに最初のはからかい半分の言葉だったが、これには完全に言葉が詰まる。言う必要が無い事というのは、世の中には確かに存在するのだ。
それが理解出来たミレアは、マイペースな彼女なりに、やはり成長しているという事なのだろう。
「さあほら、お喋りは仕舞いだ。とっとと行くよ」
まだ扉が取り付けられていないセントラルダンジョンの入口は、外から見るとまるで洞窟のようだ。
だがしかし、ひとたび中に入るとその様子は明らかに洞窟と別物だと分かる。それなりの広さに包まれたその部屋は、光源を感じさせない不思議な光に包まれ、灯りなどを用意しなくとも隅々まで見渡す事が出来る、まさに不思議空間。
そんな広間の奥の壁に付いたひとつの扉。その扉と入口以外に何も無いというその事実が、この場が『入口の間』であり、あの扉を開いた先こそがダンジョンの始まりなのだと静かに主張する。
その扉を彼女らは迷う事無く開け放つと、モフ――決意を新たにその向こうへと足を踏み入れた。
と、そこに広がっていたのは――
「これが第0階層……本当に外みたい」
先ほどカルアから聞いた通りの光景であった。
青空が広がり陽光が満ちているこの光景は、日暮れとともに夜の帳が下りつつある外の森のものであるはずがない。だがしかし――
草原を走る風は青い草の匂いを運び、耳を澄ませば何処からか微かに届く涼やかなこの音は、軽やかに流れる川のせせらぎによるものだろうか。
所々に色とりどりの花々が散りばめられた草原はまるで大地を彩る絨毯のようで、その向こうに広がる森もまた大自然の遥かなる奥行きを感じさせる。
……ダンジョンなのに。
「これは確かにピクニック向きの場所ね」
「ピクニック……ふふっ、カルア君と一緒にお弁当――」
「はいはい、それはまた今度ねピノ様。今日の目的地はこっちでしょ?」
幸せな空想の世界に片足を突っ込んだピノを押し止めるミレア。彼女が指差したその先に見えるのは、下へと続く階段とその横に立つ看板――これもまたカルアの報告通りの光景である。
「さて、降りようかね」
一同はこのダンジョンの精霊であり管理者であるセントラル渾身の作品である第0階層を軽くスルーし、その階段から第1階層へと降りて行く。彼女達の目指すあの場所へ。
「なんて普通のダンジョン……」
先ほどの第0階層とは打って変わって、この階層はまるでお手本のようなダンジョンといった趣だ。その落差に思わず零れたロベリーの呟きには、他の乙女達もまた同意しかない。
そして乙女達は歩き始める。散発する魔物の襲撃は彼女らの足を止めるどころか遅らせる事も出来ない。だがそれも当然。初心者エリアの魔物など、彼女らにとっては空気なのだから。
カルアから貰ったオリジナル撲撲棒を装備したピノ、そしてロベリーの作ったコピー撲撲棒を装備した3名は、飛び掛かる魔物達を気持ちよく打ち返しながら、あっさりと第4階層までやって来た。
「ししょー、足は大丈夫ですか?」
「っ!? またあんたは人を年寄り扱いして!」
性懲りもなくマリアベルに絡むミレア、そして瞬間的に沸騰するマリアベル。懲りない師弟である。
だがここからが年の功、そのあとニヤリと笑みを浮かべたマリアベルは反撃に出る。
「ああ、でもそういえばちょいと疲れちまったねぇ。ここは可愛い弟子に背負って行ってもらうとしようか。まさかあんた、師匠の頼みを聞けないなんて事はないよねぇ?」
流石のミレアもこれにはヤバいとばかりに顔を引き攣らせ、乾いた笑いを響かせた。
「あははは、いやだなあ師匠。もちろん師匠の頼みを断るなんて訳ないじゃないですかぁ。でもほら私ってか弱いのが取り柄だし、師匠を落っことしちゃう未来しか見えないし……」
と、そんなしどろもどろの言い訳からふと『いい事思い付いた』とばかりに手を打つと、一転良い笑顔で言葉を続ける。
「だからここはピノ様にお願いするのがいいんじゃないかなあって思います! ねっ、ピノ様?」
急に矛先が向いたピノだったが、こちらはいたって平常運転で――
「いいですよ? あ、でも背負ってるのを忘れて魔物に突撃しちゃったらごめんなさい」
簡単な頼まれ事といった感じで普通に返した。
ちなみに魔物への突撃についての発言は皮肉でも断る理由付けでもなく、純粋な注意喚起である。
「ふん、ちょっと生意気な弟子を揶揄っただけで全然疲れちゃいないよ。第一【身体強化】だってまだ使っちゃいないしね。ほら行くよ、このフロアに出てくるのは確かゴブリンだったね」
この話はこれでおしまいと、マリアベルは先頭に立って歩き出す。そしてそのすぐ後ろには懲りない弟子のミレアが付き従う。
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きっとこれがこの二人にとって丁度良い距離感なのだろう。
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