スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第101話 ダンジョンとスラスラと研究者 #2

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「【収納】」
でっかいスライムを収納すると、その向こうに小さな看板が現れた。そしてその脇には下り階段が……あれ? 二つある?

「ふむふむ……左が高級キノコ、右が薬材キノコエリアに通じているようだ」
看板を読んだネッガーがこちらを振り返る。あの看板は行き先案内だったみたいだ。

「薬材キノコ?」
「おそらくこれが毒キノコエリアという事だろう。毒も薬の材料だからな」
「ああ、なるほど……だったら今回はもちろん高級キノコエリア、だね」
「だな。毒物など持ち帰っても事故の元となるだけだ」



左の階段からサーケイブダンジョン最下層へと降り立った僕達。
「うわぁ、ここは森になってるのかぁ」
そこは静かな森だった。
……ダンジョンに森って流行ってるのかな?

あれ? でもセカンケイブは最近森に改装したばかりだし、セントラルは出来立てホヤホヤ。
つまり、こっちが元祖森ダンジョンって事に――あ、もしフォーケイブも森だったら、あちらが先だった可能性もあるか。
……いや、別にどっちが元祖でもいいんだけど。

セカンケイブやセントラルの明るい森と違って、ここは深い森の奥深く、って感じ。
そう感じるのは木々の間から差し込む光が少ないから? ……あ、でもそのお陰なのか足元の茂みは深くない。見渡しやすいし歩きやすいかも。

「む、敵か」
前方からマキノコン、あれは――
「あれはママツタケン、です。頭の大きさは個体差があるです。あと体から放つ匂いに軽い【魅了】の効果があるです」

【魅了】!? それってヤバイやつじゃ!?
ってあれ? この香り、これが……まずい……このままだと【魅了】が……

「カルア、何としても奴を倒すぞ」
「うん! こんないい香り、絶対に美味しいに決まってるよ!!」
「よし、じゃあここは当然俺が――」
「いや、僕が! 『スティール』!」
「待っ――」

魔石と本体を収納したところで、ふと――
「あれ? 群生型じゃないマキノコンはネッガーに任せる約束だったのに……?」
「それはそうだが、何故俺はカルアを止めてまで自分で倒そうと……?」

「……それが【魅了】の効果、です。あまりのいい香りに、出会った人間は我先にとママツタケンを奪い合うです」
「それ、ママツタケンにしたら命の危険が大きくなるだけだよね! 敵に余計なやる気を出させちゃうだけだよね!?」
「……悲しい【魅了】です」

ママツタケンの話はこれくらいにして、折角の高級キノコエリア、ちゃんと採取しなくちゃね。
「じゃあ僕が時空間魔法で周囲を警戒してるから、みんなはキノコ狩りを――」
「いや、キノコ狩りはさっき十分堪能したからさ、ここは役割を逆にしようよ。カルア君、キノコをまとめて収納しちゃおうか」

「……あ」
その手があったか。
ネッガーとラルを見回すと、二人とも同意って感じでうなずいてる。
「分かりました。じゃあ範囲内のキノコを種類指定して……【収納】っと」

これでよし。あとはマキノコンだけど……
「ネッガー、残りのマキノコンはどうする? もしよければ全部【スティール】しちゃうけど?」
「……ああ、そうしてくれ。考えてみたら弱い魔物をどれだけ相手にしたところで、役に立ったなどとは言えないからな。さっきのママツタケの【魅了】で頭が冷えた……というか力が抜けた」

ネッガーもいいって言ってくれたし、残りのマキノコンは全部【スティール】……で、【収納】っと。

「じゃあダンジョンコアに向かって出発! あ、コアはこの先だよ。今マキノコンを【把握】したついでに確認しといたから」
「はぁ……カルアお兄ちゃんと一緒にいると、だんだんダンジョン管理者としての自信が無くなってくですよ」
「うんうん、ラル君もだんだんこっちに染まってきたかな。ようこそ『カルア君のこちら側』へ! ってね」



静かな森の奥深く、そこにサーケイブダンジョンのダンジョンコアはあった。
小さな泉の畔に佇む、まるで小さな石造りの祭壇みたいな場所。そこにダンジョンコアが設置されていて、そして――

「うんうん、ここの魔道具もちゃんと機能してるようだねえ。よし、じゃあ映像停止っと」
そのコアを監視してる魔道具を停止したモリスさん。なるほど、ダンジョンの精霊を他人に見られちゃ困るからね。
あれ? でもフィラストでは停止してなかったような……?

「後で気付いてヤバって思ったけど、ヒトツメはブラック君がマスターで助かったよ。今日の作業では最初に映像を停止するからって、ミツツメギルドに連絡しといたんだ」

……そういう事か。

「じゃあ次はダンジョンコアの結界も解除して――っと。じゃあラル君、お姉さんに呼び掛けてみてくれるかい?」
「分かったですよ。おーい、サーケイブお姉ちゃーーん」

コアに向かって両手を口に当てて呼び掛けるラル。するとそれに応えるようにダンジョンコアが輝き、その光の中から出てきたのは……見た目僕よりもちょっとだけ下、12~13歳くらいの女の子。

「セントラル……なの?……えっと、もしかして……ダンジョン、放り出して……来ちゃった、の?」
目を小さく見開いて、そして途切れ途切れの小さな声でラルにそう話しかけてきた。

「サーケイブお姉ちゃん、お久し振りです。ラルは元気、ラルのダンジョンも超元気ですよー。サーケイブお姉ちゃんは元気です?」
「うん……元気、いっぱい。……あたらしい、スライム、生まれて……超、はっぴー」

「…………」
ラルの表情がちょっと引きつる。
うん、多分僕も今同じ顔をしてると思う。
「ええと……新しい、スライム……です?」

「そう。色々研究して……組み合わせて……とうとう出来た……新種スライム。……まだ……ダンジョン、コアにも……登録されてない……えへん」

「へ、へえーーー……ち、ちなみに、どんな……スライム……です?」
ああ……ラルの声もサーケイブさんみたいに小さくなって途切れ途切れに……

「うん……白っぽくて、ちょっと虹色で……普通のスライムより、大きいけど……とっても、可愛いの」

ああっ、これもう確定……
「すっ、すみませんでしたーーーーーーっ!!」
あなたに受け取って欲しい、僕の渾身の土下座!

「?? えっと、このひと……何してるのかな……それでね、セントラルにも……そのスライム、見て欲しい」

スルーされちゃった……
そしてそんな僕の頭の上で続いてゆくサーケイブさんとラルの会話。

「わっ、分かったです。是非見せてもらうです。あーもうこうなりゃ行き着くところまで行ってやるです!」
「うん、じゃあ……呼ぶね。……さあ、出ておいでーー」

「………………」
「………………」
「………………」

「あれ? 来ない? おーい、こっち……だよーー」

「………………」
「………………」
「………………」

「どうしたの……かな……お散歩、してても……呼べば、すぐ……来るの……に……」

「あっ、あの!!」
僕は顔を上げてサーケイブさんに呼び掛ける。
「またあなた……なに?」
「もっもしかして、そのスライムさんとは、こっこちらの御方でしょうか?」

そして取り出したのはさっき上の階段前で【収納】した氷のオブジェ……でっかいスライムさんの。

「あ…………」
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